つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ジーザスッ!

2007-01-24 23:54:26 | マンガ(少年漫画)
さて、このところずっと遅くてすいません、な第785回は、

タイトル:ジーザス(全13巻)
原作:七月鏡一  漫画:藤原芳秀
出版社:小学館 少年サンデーコミックス(初版:H5)

であります。

今だと『闇のイージス』で知られる名コンビの放つ、ハードボイルド・アクション。
元傭兵の暗殺者ジーザスが、なぜか高校教師になってしまうという奇抜な設定で人気を博しました。
七月鏡一の特徴である芝居がかった台詞回しと、『拳児』で知られる藤原芳秀のアクション描写の相性は絶品で、非常にノリのいい娯楽作品に仕上がっています。



闇の世界には、伝説めいた話がいくつも転がっている。
その中の一つに、奇妙な通り名を持つ暗殺者の物語があった。
血と炎にまみれた死神……奴の名は、ジーザス!

狙った獲物は必ず仕留め、襲い来る敵はすべて血の海に沈める……ジーザスはまさに無敵だった。
だが、ある巨大な犯罪組織から1トンものヘロインを強奪したことが、彼の寿命を縮める。
逃亡の末、追い詰められたジーザスは、数十発の銃弾に貫かれて東京湾に浮かんだ。

翌日、市立新星高等学校に一人の教師が赴任してきた。
黒板にまともな字が書けず、生徒に間違いを指摘されて赤面する、絵に描いたような素人教師。
藤沢真吾……彼こそ、身代わりを使って生まれ変わったジーザスだった――!



本作の内容は一言で言えます――

「ジーザスッ!」
(畜生、くそったれ、何てこった等の意)


これがすべてです。(笑)

作品中でしつこいぐらい使われるこの台詞、単に主役の名前ってだけではありません。
これ実は、ジーザスと対決して破れた者が最後に叫ぶ定番台詞なのです。
この後に、「それが俺の名だ――地獄に堕ちても忘れるな」とつなげるのが基本パターン。
悔しそうに、「ジーザス!」と叫ぶ敵→それを嘲笑いつつ決め台詞を吐くジーザス……最終回まで続くこの連続技は作品に不動の個性を与え、他所でパロディネタにされるぐらい有名になりました。

ストーリーは東京を舞台にしたガンアクションなのですが、そこかしこにハードボイルドをおちょくるようなネタが転がっており、少年漫画らしさを出しているのも特徴。
そもそも、凄腕の暗殺者であるジーザスが高校教師をやるというシチュエーションからしてギャグ調なのに、シャーペンのキャップを抜く音を手榴弾のピンを外す音と勘違いしたり、背後に立った同僚に手刀を入れそうになったり、隠し持っていた愛銃を発見されて至近距離でぶっ放されたり(初弾は抜いてあった)と、学校は危険が一杯です。(笑)
その癖、闇の住人が関わってきて、平和な学校が本当に危険なバトルフィールドと化すと、ジーザスは途端に元気になります。ここらへんは、変身ヒーローのノリに近いかも。

ジーザスが光と闇の境界線にいるためか、異なる属性のサブキャラが登場し、その誰もが何らかの形で自分の属さない世界に足を踏み入れることになるのも面白い要素でした。
天ボケ体質ながら異常な度胸を誇る新任教師・水谷小百合は弟絡みでヤクザと関わることになり、一匹狼の不良生徒・戸川誠治はジーザス打倒に固執するあまり何度も命を落としかけます。
ジーザスのみならず、こういったサブキャラの変化も丁寧に描くことで、ちゃんと群像劇を成立させているのは見事。

中でも最も変化が顕著だったのが、ジーザスの裏キャラとも言える凄腕のスナイパー・御堂真奈美。
ジーザスの正体を掴み、確実に抹殺するために新星高校の養護教諭となった彼女は、生徒と関わることで次第に光の世界に傾倒していき、眠っていた自我に目覚めます。
スーツが似合う長身、遠距離からの一発で戦況を覆す腕前、凄惨な過去、ジーザスとの奇妙な友情……彼女の魅力を挙げていったらキリがありません。
当然、私の一押しキャラです。(笑)

とまぁ、いいとこばかり挙げてきましたが、引っかかる点も多少あります。

一つは、重要な敵キャラだった三崎かおるの没落っぷり。
御堂の上司であるこの方、最初こそ意味深な台詞を吐きまくる素敵な悪役だったのですが、一度ジーザスに破れてからは組織に寄生する小物と化し、株が急落。
ジーザスを仲間に誘ってもまったく相手にされず、俗物根性が目立ちだしたため御堂にも見切りを付けられ、ほとんどいいとこなしのザコと化して破滅しました。合掌。

あと、後半になって絵が崩れ始め、どのキャラも平面顔になってしまったのもマイナス。
同時に人気も下降したのか、最終エピソードはほとんど駆け足状態で終わってます。
それでも、最終回は結構好きだったりするけど。(爆)

劇画調ですが、紛れもない少年漫画です。オススメ。
ジーザスは『闇のイージス』にもゲスト出演しているので、よろしければそちらもどうぞ。


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2 コメント

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御堂ファンのエピソード (デザートラビッツ)
2008-09-06 22:54:07
初めまして。私もジーザス好きです。主人公ジーザスは、モチロンですが脇役がイイ味だしてるんですよね。元傭兵でヤクザの牧口など。御堂真奈美って、女性読者から圧倒的な支持、人気が有ったというのは、本当なんでしょうか? ジーザスは、男性読者が。御堂は、女性読者が・・・って。少年マンガでは珍しいですね。(笑)
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デザートラビッツさん、いらっしゃいませ! (SEN)
2008-09-07 21:46:37
初めまして~♪
おっしゃる通り、脇役が非常に目立ってる漫画だと思います。牧口も、普通なら単なる使い捨てキャラなんだろうけど、最後まで自己主張の激しい方でした。
御堂真奈美が女性読者から圧倒的な支持を受けたという話は、私も聞いたことがあります。普通だと、ジーザス→女性人気、御堂→男性人気なんでしょうけど――女性から見て、格好良いオンナだった、といったところでしょうか。(笑)

コメント、ありがとうございました!
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