つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

すいません、好きなんです(笑)

2012-05-19 16:47:55 | マンガ(少年漫画)
 さて、少年漫画か少女漫画か、悩んでしまったけどレーベルから少年漫画にしましたの第1015回は、

タイトル:くちびるためいきさくらいろ(全2巻)
著者:森永みるく
出版社:双葉社 アクションコミックスハイ(初版:'12)

であります。

注意:当作品は百合です。同性愛作品に免疫がない方、嫌悪感を抱く方は読まずに引き返すことをオススメします。

注意書きも書いたことだしっと……。
本作は、前にも1回出ています。同じ題名で一迅社から'06に短編集として出たものの再版……と言うことだと思ったいたのですが、全2巻?
再版にしては2巻に分けるような分量なんてあったっけなぁ? と思いつつも悲しいかな、好きなんです、森永さんの作品(笑)

やわらかい絵柄が好きで、18禁描いてたころからずっと買っていたし、そのときから百合をちょくちょく描いていたのは知っていたのですが、百合だろうが何だろうが抵抗がないので、迷わず購入。
2巻に分けた理由はなんなのかと思いつつも読んでみました。

さて、ストーリーは、

『奈々は目覚めの悪い夢を見てしまった。
中学時代の夢――幼馴染みで、いちばん仲のよかった友達の瞳。子供のころからずっと一緒で、高校も同じところへ通うことを信じて疑わなかったのに、瞳は内緒で他校を受験し、奈々とは同じ高校には行けない……そんな事実を知らされたときの夢。

高校生活も二ヶ月が経ち、中高大と一貫校の桜海女子に慣れてきたころ。――それでも一緒に通えないと知ったあのときから瞳とはメールも電話すらもしない日々。
そんなある日のこと、コンビニへ買い物へ出かけた奈々は、その帰りに偶然部活帰りだと言う瞳に出会う。
髪も短くなって、友達とも仲良く高校生活を過ごしているように見える瞳。
そんな姿に複雑な思いを抱く奈々の心を知ってか知らずか、瞳は奈々との約束があると言い出して強引に奈々の家に行くことになってしまう。

奈々の家では中学時代と変わらずに接してくる瞳。制服がかわいいからと言う理由で桜海女子を奈々に薦め、制服姿を一番最初に見せてと約束した中学時代のことを持ち出して、仕方なく奈々は制服姿を瞳に見せることになるのだが、「似合っている」――そんな瞳の一言で裏切られた瞳への思いが溢れ出す奈々。
けれど、瞳には瞳の理由があった。それは奈々への思い――友達ではなくなった感情のために、奈々から距離を置くことにしたのだった。

それでも、奈々は瞳が離れていってしまうことがイヤだった。
そんな思いを吐露する奈々に口づけをする瞳――このままでは友達ではいられない。そう告げる瞳に、中学時代の出来事やいま思う瞳への思いが奈々の脳裏をよぎり――
奈々は、瞳と「友達」でなくなることを決意する。』

短編集ですが、全2巻の中心を成す奈々と瞳の物語の第1話のあらすじだけ、書いてみました。
と言うか、一迅社から出た短編集のときは、このふたりの物語は2話で終わっていたのですが、続いていたのですね。
これ以外は一迅社時代の短編集の内容の再録となっています。

まず、奈々と瞳のストーリーですが、晴れて恋人同士となったふたりが思いを深めていく中、突然瞳に外国への転校の話が持ち上がって、それに抗議するために瞳は奈々とともに家出をして――と言う内容。
最終的には大団円なのですが、各話がどうもやっつけ仕事に見えてしまうのが残念なところ。
大団円のラストも拍子抜けしてしまうオチなので、一迅社のときの2話で余韻を残したまま、終わってくれていたほうがマシだったような印象を受けます。

で、他の短編ですが、個人的にはこちらの短編のほうが雰囲気も余韻もあって好みです。
舞台は基本的に桜海女子高校です。

『天国に一番近い夏』――桜海女子に彷徨う幽霊の加藤なつかと、桜海女子OGで養護教諭として働いていて、なつかとは学生時代保健室で仲良くなった小松先生との触れ合いを描いた作品。オチもくすっと笑えて、百合成分は薄めなほうですが、いい余韻を持つ小品。

『キスと恋と王子様』――奈々の友達で演劇部所属の安倍と、演劇部の顔だけど内実は天然系ボケキャラの橘のふたりの物語。役としてキスをしたと誤解して悩む安倍の心情が細やかに描かれている小品。

『いつかのこのこい。』――入学当初に水城から手ひどい言い方をされてしまった鈴木と、それでも何故か水城に心惹かれてしまう恋愛感情を疑似恋愛だと思い込む鈴木の恋の苦しさを描いた小品。

『くちびるにチェリー』――吹奏楽部の演奏を聴いて絵里に恋をしたちはるが、自分の恋心を抑えて絵里の親友として過ごす中での心情を細やかに描いた小品。この作品も心地よい余韻のある好みの短編。

『ホントのキモチ。』――文芸部で古風な恋愛小説を書いている野坂と、それを読んで野坂の人となりに恋してしまった後輩の遠藤のラブコメディ。この短編集の中ではコメディ要素の強い作品で、森永さんらしいコメディ作品。

最後の『ホントのキモチ。』以外は上記に書いたように、雰囲気、余韻ともにあって恋愛ものとしてはいい作品に仕上がっています。
でも、百合ですが……。

個人的には好きなマンガ家さんですし、オススメしたいところなのですが、いかんせんジャンルがジャンルだけにオススメしきれません。
メインとなる奈々と瞳のストーリーがいまいち残念なところがあるのも、百合に抵抗がない人にもオススメしにくいところです。
短編のほうはいい作品が多いので、前の一迅社時代の短編集で終わってくれたほうがオススメしやすかったですね。
もっとも、一迅社時代のはもう古本でしか手に入らないので、新刊ならこちらを買うしか手はないのですが……。(マイナーな百合姫コミックスなので、古本屋でも手に入るかどうかは疑問ですが)

と言うわけで総評ですが、まずジャンルから拒否反応を示す方がいらっしゃるであろうこと、メインとなる奈々、瞳のストーリーがいまいちなことから当然ながら良品とは言えないでしょう。
さりとて短編にはいい作品があるので落第にするのも忍びない。
なので、中間を取って及第というところに落ち着くでしょう。
まぁ、マイナーなジャンルなので、いくら良品並みの評価ができても、読み手限定になってしまうので、良品の評価はできないのではありますが……。


――【つれづれナビ!】――
 ◇ 『森永みるく』のまとめページへ
 ◆ 『コミックス一覧表(白組)』へ
 ◇ 『つれづれ総合案内所』へ


最新の画像もっと見る