つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

見よ、彼女達はかくも美しい……

2007-03-20 23:55:11 | マンガ(少年漫画)
さて、奇しくもちょうど一年ぶりの紹介な第840回は、

タイトル:妖女伝説(全二巻)
著者:星野之宣
出版社:集英社 集英社文庫(文庫版初版:H8)

であります。

『ヤマタイカ』『2001夜物語』等、SF漫画の第一人者として知られる星野之宣のオムニバス短編集。
タイトルにある通り、どの短編も女性がキーキャラクターとなっているのが特徴。
漫画では珍しいパターンですが、気に入った作品をかいつまんで紹介します。

『砂漠の女王』……キーパーソンはエジプトの女王クレオパトラ。と言っても、物語はエジプトがローマに敗北するアクティウムの海戦から始まっており、その後、バア転生の秘法により復活する彼女の姿を追っていく。最初は自分を売ったヘロデ王の孫サロメとして、その次は、パルミラの女王ゼノビアとして転生したクレオパトラの行き着く先は……? サロメ対イエスの問答、ゼノビアと哲学者ロンギノスの奇妙な友情など、見所多数。ゼノビアのエピソードはサロメの話の八年後に描かれた続編だが、驚く程上手くつながっている。

『蜃気楼―ファタ・モルガーナ―』……キーパーソンは謎の美女モルガン。1928年の飛行船イタリア号遭難事件にアーサー王伝説の妖女モルガン・ル・フェを絡ませた意欲作で、北極の海を舞台に、見えども掴めない幻を追い続ける男達の姿を描いている。現れては消える謎の島と、どこにも存在しない理想の女性、二つが重なっていく展開は見事。ゲストとして、南極点に初めて到達したことで知られる探検家アムンゼンが登場するのも面白い。

『歴史は夜つくられる』……キーパーソンは秘密(笑)。1912年をキーワードに、ある豪華客船(これまた秘密)に歴史の有名人を集めてみました~、という作品。普通なら空中分解しそうなものだが、世界中が注目する秘密文書(これも秘密……)を核にすることで、かなり面白い話に仕上げてくれている。謎の登場人物達の正体が、物語の最後で一気に明かされるラストは圧巻。

『ボルジア家の毒薬』……キーパーソンはルクレツィア・ボルジア。イタリア全土征服の野望を抱くチェーザレ・ボルジアの軌跡を追いつつ、彼の妹ルクレツィアの奥に潜むドス黒い感情、それを知ったレオナルド・ダ・ヴィンチの苦悩を描く豪華な一品。本当に醜いのはルクレツィアか、それともこの世のすべてか? 謎の毒薬カンタレラの真実が明かされるシーンの迫力は凄まじい。

非常に豪華な短編集です。三重丸のオススメ。
歴史物に秀作が多いのですが、作者の真骨頂であるSF話もあったりします。


最新の画像もっと見る