つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

絵と内容は多少異なります(笑)

2007-01-23 23:55:34 | ファンタジー(異世界)
さて、本当は分けて紹介するつもりだったんだけど……な第784回は、

タイトル:機械仕掛けの神々(上)(下)
著者:五代ゆう
出版社:富士見書房 富士見ファンタジア文庫(初版:H6)

であります。

五代ゆうの長編ファンタジー。
以前紹介した『はじまりの骨の物語』に続く、第二作です。
作者の心の中では、本作は『はじまり~』の姉妹編にあたるらしいのですが……確かに似てるかも。



金緑色の瞳、鋭い牙、黒灰色の毛に覆われた長い耳――人とは異なる姿で生まれた少年・スノウは、家族と別れ、錬金術師ルルスの徒弟として平和に暮らしていた。
しかし、『組織』の使者が持ってきた知らせにより、彼の平穏な生活は脆くも崩れ去る。
師のルルスが、旅先で行方不明になったというのだ……。

二月前、師の元に届いた組織の召喚状は偽物だった。
ルルスは世界でも指折りの錬金術師の一人、恐らく、皇帝と法王の権力闘争に巻き込まれたのだろうと使者は言う。
スノウは使者に連れられて、都の組織本部に向かうことになった。

七歳の時にルルスの元に来てからずっと、スノウは外の世界に出たことがない。
かつて人に滅ぼされた種族・エリンの血を引くが故に、迫害の対象となるからだ。
だが、大恩ある師を救うため、スノウは危険な旅に出る……人間そっくりの姿を持つ機人マシーナ・ライムンドゥスとともに――!



うん、確かに姉妹編だよね。

本作と『はじまりの骨の物語』に直接的なつながりはありません。
キャラクター、固有名詞、世界観、すべて異なっており、どちらも独立した作品として成立しています。無論、時間的つながりもなし。
しかし……作者本人が後書きで触れているように、本作は紛れもなく『はじまり~』の姉妹編なのです。

理由の一つに、本作の主人公スノウの旅が、前作の主人公ゲルダのそれのバリエーションであることが挙げられます。
二人は全く異なるキャラですが、境遇だけは非常に良く似ており、どちらも自分の居場所を求めて最果ての地を目指します。
周囲から恐れられる存在として生まれ、自分を育ててくれた存在を失い、辿り着いた地で己の秘密を知る……協力者、敵対者の配置に相違点はあるものの、二つの物語は根本的に同質のものです。

まぁ、それが悪いとは言いませんが――

オチまで一緒ってのは勘弁して下さい。

焼き直し、という言葉が脳裏に浮かんで、一気にテンション下がりました。

スノウ以外のキャラクターの扱いが低いのも難点。
最重要キャラである、声を失った代わりに心で話をすることができる少女ヴィーからして、スノウの心を支えるだけのアイテムです。
機人ライムンドゥスは単なる序盤の案内役で終わってるし、イザンバールは『はじまり~』や『〈骨牌使い〉の鏡』にもいた『脈絡もなく味方になってくれる無頼者』でしかないし、もう一体の機人オリンピアに至っては何のために出したのかさっぱり解らないし……と、どのキャラもまともにドラマを描いてもらってません。ひどっ。

しかし、私が一番引っかかったのは、十二世紀と十五世紀をごっちゃにした本作の世界観です。
スノウの旅は、位置的に言うとイギリスにあたるアルビオンに始まり、モンゴル帝国にあたるザナドゥで終わるのですが、道中に出てくる固有名詞、歴史、イベント(フリードリッヒ二世と法王の対立とか)など、すべて現実世界のものをそのまま使っています。
ちょっと世界史をかじった方ならすぐ解る単語が山のように出てくる上、歴史上の人物を多少いじくった『もどきキャラクター』が何人も登場するため、とても異世界の話とは思えませんでした。
これが、現実世界の中に機人や妖精といった架空の存在を放り込んだ歴史ファンタジー、というなら私もここまで五月蠅いことは言わないんですけどね。

正直、読むのが苦痛でした。廃棄確定。
ごちゃごちゃ言わず、素直にスノウの成長物語として読めばいい? すいません、私には無理です。(爆)


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