十箇ばかりの石が雑然と積み重ねてあるところは、六代将軍徳川家宣の胞衣を埋
めたところと伝えられています。胞衣(えな)とは、胎児(母体の中の子)を包んだ膜
と胎盤をいいます。
われわれの祖先が胞衣を大切に扱ったことは、各地の民族伝承にあります。関東
では、家の床下や入り口の敷居の下に埋めたといわれています。
一方、上流の階層では、胞衣塚を築くことが早くから行われたといいます。この
根津神社境内は、五代将軍綱吉の兄綱重の山手屋敷(別邸)で、綱重の長子家宣は
寛文2年(1662)4月5日ここで生まれました。その胞衣は誕生したこの敷地内
に納められたわけです。将軍の胞衣塚ながら、庶民の民族の理解の上で貴重なもの
とされています。(文京区教育委員会)