荒川区の昔ばなしに耳無不動のおはなしがあります。あらかわ史跡・文化財デー
タの資料を紹介しましょう。婚約者のお絹を悪者にさらわれた光三郎は、九州から
江戸へと探しに出ますが見つからず、出家して僧侶となり光慧(こうえ)と名乗りま
す。ある日、吉原の遊女になっているお絹を見つけ、寺の金を持って吉原に通いつ
めて寺を追い出されます。その後、真言宗千光院の住職に招かれますが、長年の悪
事の結果か、腰が抜け、果ては耳まで落ちてしまう悪病に苦しみます。
ある夜、お不動様が夢枕に立ち「村人たちの救済に努めれば救われる」と告げま
す。光慧は門前に自分の袈裟を埋めて「袈裟塚」と称し、五穀豊穣、往来安全を祈
願しました。その上に石の不動を建立しました。
これが今も残る「袈裟塚の耳無不動」です。このお不動様は耳の病にご利益があ
ると伝えられ、穴を開けたお椀を奉納することで有名です。