迷宮映画館

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三文役者

2001年03月01日 | さ行 日本映画
自由に見ることのできる曜日が木曜日なので、実際に見て紹介するのが遅くなってしまって申しわけありません。もう明日だけです。ダッシュで行ってください。

殿山泰司という役者がかつて日本にいた。若い人はほとんど知らないと思うが、映画にテレビにさりげなくいるんだけど、その存在感の大きさたるや、やっぱりさりげない。でも出てるとなんとなく安心感があり、スケベ心があり、独特の風貌とあいまって、なんともいえないバイプレイヤーだった。死んだと聞いたときも「ああ、死んだのね。」ぐらいでとりたてて、記憶に残ったわけでもない。しかし、その生き方たるや、こんなに面白い人だったとは、その生き方で映画が撮れるような人だったとは知らなかった。もうこんな人はあらわれないだろう。

新藤兼人監督の昭和20年代からの映画を実際に流しながら、彼の伴侶であった乙羽信子女史に語らせて、彼の生き様が流れていく。それはタイちゃんこと殿山泰司の人生であり、また監督自身の生き様でもあるようだ。この稀代のバイプレイヤーの話を撮ろうと暖めていたということは、生前の乙羽信子に語らせていたことでもわかる。主役は変われども、変わらなかったのは妻とタイちゃんだったような気がする。若き宇野重吉に佐藤慶、山本圭,長門裕之といろんな役者が登場するのだが、タイちゃんと乙羽信子だけは普遍の存在だった。

話は彼のジャズを愛し、女を愛し、酒を愛した日々が語られていくが、乗り移ったかのような竹中直人の演技。一体この人はどういう人なのでしょうね。不思議な人です。でもバイプレイヤーでは決してない。数年前にNHKの大河ドラマ「秀吉」で1年間彼をお茶の間で見たが、つくづく映画向きの人でTVには濃すぎる人だなぁと感じた覚えがある。映画の大画面で2時間どどーと見るのがいいのであって毎週見る顔ではない。そのあくのきどさがが今回はぴったりだった。

しかし、今回の敢闘賞はなんといっても女性陣。荻野目慶子の体を張った演技と、吉田日出子の独特の円熟した演技に脱帽。半端じゃなくよかった。あくの強さに負けないどころか、すばらしい印象深い役だった。最後の吉田日出子に泣かされてしまいました。

88歳の監督。これに満足しないでもっともっと撮ってもらいたいです。

「三文役者」

監督 新藤兼人 
出演 竹中直人 荻野目慶子 吉田日出子 乙羽信子 2000年 日本作品


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