迷宮映画館

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約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯

2013年06月19日 | や行 映画
1961年、昭和36年、三重県名張市の葛尾村で起こった事件。村の懇親会に参加した人のうち、ぶどう酒を飲んだ15人の女性の中で5人が亡くなってしまった。犯人として逮捕されたのが、犠牲者の一人だった夫の奥西勝、35歳。一緒に懇親会に参加をしていた。動機は、浮気相手の女性とのもつれから、三角関係を清算しようとしたものとされた。

奥西は犯行を自供。しかし、一審で証言を覆して自白は強要されたものと主張した。一審の判決は無罪。ほっとしたのもつかの間、二審は完全逆転、有罪で死刑判決を受ける。最高裁でも死刑が確定。あとはずーーっと、死刑の執行がいつ来るのか・・・を待つ人生を続けている。

昭和36年、、、そこからずっと繋がれた状態だ。私の人生の年月とまるっと同じ。その長さたるや、・・・ざっと半世紀。奥西氏が犯人なのか、どうなのか、その辺はなんとも難しい。そこに口を出す権利もない。ただ思うに、真犯人が何十年もやってない!と言い続けられるものか。

とにかく奥西は再審請求をし続け、それを却下され続け、何年も何年もそれを繰り返し続けてきた。一縷の望み!というのは、こういうことを言う。ずっと拘置所にいて、一人で訴え続けてきた彼に、一人の男が救いの手を差し伸べた。人権運動をしてきたという市井の人、川村富左吉。家族しか面会できない死刑囚に対して、何度も何度も面会できるように要求し、特別面会人として許された。奥西の孤独な戦いは終わった。

小さな小さな運動は、徐々に大きくなっていく。敏腕弁護士もついた。綿密に調べなおしていくうちに、当時奥西を有罪とする決め手となった証拠に、次々と妙な点が見つかっていく。奥西を犯人にしてしまって、小さな村の騒動を終わらせたいというような、あるいは検察が有罪としたものを覆すわけにはいかないというメンツ?

メンツで無実の人が有罪になって、挙句の果てには死刑に・・などいうことだったら、たまったもんじゃないが、どうやらそっちの公算の方が強いような気がしないでもない。司法の独立は守られている。では裁判所は完全に独立した存在なのか?否、そうではない。きっちりとした序列があり、裁判官の出世の道には、独立もへったくれもない。

再審を認めた数少ない裁判官は裁判官をやめていく。やめざるを得なくなったのか、裁判官に嫌気をさして辞めたのかは不明。両方かもしれない。圧倒的多数の再審を認めなかった裁判官たち、新たな証拠を提出されてもそれを認めなかった裁判官たちは、次々と出世していく。司法は独立しているかもしれないが、裁判所の中では確固たる序列があり、その中で異議を唱えることがいかに難しいかということらしい。

現在奥西は、医療刑務所で療養中とのこと。86歳。痩せ細ったからだで、その手には手錠をはめられ、ベッドに寝せられているそうな。犯人かそうでないかはもちろん重要すぎるが、人としてどうよ?50年、毎朝死刑が執行させるんではないかとの恐怖を強いられた日々を思えば、もういいのではと素人は思う。いまだに彼を縛っているのは、面子以外の何ものでもない。

仲代達矢と樹木希林の凄みのある演技がとんでもなく見ごたえがあった。

◎◎◎○

「約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」

監督 齊藤潤一
出演 仲代達矢 樹木希林 天野鎮雄 山本太郎


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