迷宮映画館

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六月の蛇

2003年07月09日 | ら行 日本映画
セックスレスの都会の夫婦、夫はエリート・サラリーマン、妻は電話相談のカウンセラーをしている。親身な相談で、おかげで救われたという感謝する人も少なくない。しかし、家に帰れば、夫はソファーで寝、排水口の掃除が生きがいのようにしている。妻を見ようともしない。

ある日、突然送りつけられた自分の写真。家の中、街角、窓辺、自慰行為、短く切ったスカートをはいた自分。送りつけてきたのは、自分が相談を受けて、救われたという男性だった。「一体何なの?これは!」

ネガを返して欲しければ、自分の言う通りにしろという。短く切ったスカートをはいて、外に出ろ。さらに、その要求はどんどんとエスカレートしていく。目的はなんなのか。意外に明かされる、自分の秘密。心の奥底に閉じ込められていた自分の何かがはじけた。

塚本監督の作品は食わず嫌いもあって、見たことがなかった。これが初。普通だったら見ないのだけど、やはり賞を取った話題作。見てみないと。 私はストーカー行為というものに対して、異常な拒否反応を示す。それはやられたから。執拗に、ねちっこく、長きに渡って、卑怯な手段で。始めは中学校のときから。この辺で、もう男に対して、一種の恐怖心を抱いてしまった。あの恐怖というものは、言葉では言い表せない。卑怯な手段で、相手の気持ちなどお構いなし。恐ろしいのは、相手(この場合は自分になるが)もきっと、自分に好意をもっているはずだ、と決めつけられるのだ。いくら、そいつに違うと言ってもそれは通用しない。あとは逃げ回るだけ。ほんとにどうしようもない。

その、ストーカーをやらせたら天下一品らしい塚本晋也。うまい。もう気持ち悪くなってきた。その言い知れない恐怖心が見事に出ていて、本当に気持ち悪くなってきた。マジで出ようと思った。こう思ったのは久しぶりだったが、そこまで思わせたのだから、凄いのだろう。

ストーカーはストーカーだけではなく、彼女を解放し、命を救った、ついでにだんなも解放したのかもしれない。都会の無機質な日々を青で表現し、それがあったかい色に変わっていく。しかし、決して、正義の手段ではない。どこかに女性はそういうのを待ち望んでいるのではないかのような描き方があった。ここには断固、反対する。レイプ容認のような発現で、物議をかもし出したが、感じ方、描き方、決定的な男と女の違いだ。どんなに強くても、女やはり力では負けてしまう。力で、相手を屈させようということは絶対に許さない。愛を蘇らせた天使では決してない。そこまでの道のりは決して許せない。こうまで思わせたんだから、これは成功した映画なのだろう。

でも神足君とキスはしたくないなあ。

「六月の蛇」

監督・出演 塚本 晋也  
出演 黒沢 あすか  神足 祐司 2002年 日本作品


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