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第486回 これって古本?の世界

2022-08-19 | エッセイ
 ごく普通の本好きで、新刊書店、ネット書店、それに新古書店も利用して、興味のおもむくままに読書を楽しんでいます。
 でも、世の中には、読書を楽しみつつも、古書店、古本市などを舞台にユニークな本、マニアックな本の発掘、収集にも励んでいる人たちがいます。「本」という共通項で、それらの人たちの苦労話、自慢話を読むのが好きで、当ブログでもいくつか記事にしてきました。
 最近も、「奇天烈!古本漂流記」(北原尚彦 ちくま文庫 2005年)に出会って、「大正・昭和初期の「事件帖」」、「大正期の楽しい火星本」、「金日成がヴェルヌを翻案?」などの怪しげな(?)古本の話題を大いに楽しみました。中から2点を選んでご紹介します、マニアックそうな絵柄の表紙です。


★結婚式のカタログ本★ 
 まずは、こんなものまで(というと、著者に叱られそうですが)古書として流通するのだ、という驚きの一品です。昭和6(1931)年といいますから、執筆時で70年前に三越百貨店から「発行」されました。
 「御婚禮の栞(しおり)」というカタログ(非売品)で、婚礼用品はもちろんのこと、結婚に関する一切合財を扱っています。古書即売会で見つけたとのこと。
 これだけ古ければ、それなりの社会史的、文化史的価値がありそうです。でも、わざわざ入手するなんて物好きですねぇ。

 表紙を飾るのは、日本画の巨匠・鏑木清方による和装・角隠しの花嫁姿という豪華なもの。また、花嫁、花婿の晴れ着写真のモデルには、松竹映画の男優、女優を起用するという凝りようです。
 そして、嫁入り道具です。三越としても一番の勝負所ですから、着物、夜具、家具、食器に至るまで、しっかり、たっぷりとページが割かれています。男性用装飾品なども紹介されていますが、たった1ページだけ、というのに時代を感じて、笑ってしまいました。

 モノだけではありません。結髪、化粧、着付けは「美容部へ」、記念写真は「写真部へ」と周辺のサービスのPRにも抜け目はありません。
 更には、漫画、読み物、「花嫁心得帖」などの実用記事まで載せ、読ませる工夫にも力を入れています。
 小さい頃、家族で買い物といえば、なんでも揃っているデパート1本でした。結婚をビジネスにしていた時代があったのだ、とちょっと懐かしくなりました。

★ベッド博士★
 さて、もう1点は、著者が川崎駅前の古書店で見つけた「ベッド博士」(アドセンター 1983年)なる本。本書にも写真が載っていますが、ネットで見つけたカラー画像です。


 背中を向けてベッドに横たわる女性のヌードが配された大胆な表紙です。アドセンターの所在地末尾が「フランスベッドビル」とあったので、同社のPR本だと判明しました。
 セクシーな表紙とは裏腹に、充実した内容の一端を著者が紹介しています。
「眠りの科学へのイントロ」「どうして眠るのか」「人体の構造と寝姿勢」「性とベッドの構造」など堅い話題から柔らかい話題までカバーしていて、興味引かれます。
 映画評論家・荻昌弘の「映画にあらわれたベッドルーム」では、「市民ケーン」「007危機一発」「オセロ」などさまざまな映画に登場したベッドルームが取り上げられます。う~ん、これだけでも読みたいですねぇ。

 インタビュー「選手生活と睡眠」に登場するのは、なんと当時現役バリバリの王貞治選手!!
 質問に答えて、真っ暗で音が入らないようにしないと眠れないとか、寝相が悪いので特大のベッドでないとダメだなどと語っているといいます。野球とは直接関係のない分野のインタビューに答えた貴重な記録と言えそうです。
 まだまだあります。三遊亭円楽(先代)と作家戸川昌子との対談、1コマ漫画、SEXカウンセラー奈良林祥のエッセイ、立木義浩撮影によるヌード写真、体操指導者竹越美代子の「あなたもできるベッド体操」、そして、図版入り年表「ベッドの歴史」などなど、目を見張る充実ぶり。「ベッド」に関わるあらゆることを読んで楽しんでもらおうという制作者の遊び心が伝わってきます。読めるものなら読みたいですが、入手は極めて困難なようです。う~む、ちょっと残念。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。
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