悪夢の「入試」も遠い昔のことになりました。もう死ぬまで無縁。
そんなわけで、「世界一「考えさせられる」入試問題」(ジョン・ファーンドン 河出文庫)を気軽に手にとりました。
オックスフォードとケンブリッジというイギリスを代表する大学の面接試験で、実際に出された難問、奇問、珍問を集めて、模範解答というか、解説をつけたものです。
「あなたは自分を利口だと思いますか?」(ケンブリッジ(法学))
「もし、全能の神がいるとしたら、彼は、自身が持ち上げられない石を造ることができるでしょ
うか?」(オックスフォード(古典学))
「あなたにとって、悪い本とは何ですか?」(ケンブリッジ(英語英文学))
「あなたは脳のどこが一番好きですか?」(ケンブリッジ(医学))
「あなたならリンゴをどう説明しますか?」(ケンブリッジ(社会学、政治学))
とてもとても、私なんかの手に負えませんが、苦悩しているであろう「受験生」の姿を想像して、少し同情しながら、ちょっと楽しませてもらいました。
その中に、「クロイドンの人口は?」(ケンブリッジ(地理学))と言う問題があって、解けませんでしたけど、解説の中味が、私なりに理解できましたので、ご紹介します。
クロイドンというのは、ロンドンの約30(正確には32)ある行政区のひとつです。ロンドンの人口を、1000万人(実際にももう少し少ないそうですが)として、単純な割り算で、33万3000人という数字が出ます。2007年の統計によると、同区の人口は、33万6600人とのことなので、数字のことだけいえば、「当てる」のはそう難しくはなさそうです。もちろん、面接では、数字そのものよりも、根拠、考え方、答え方、機智などが問われるのでしょうが・・・・
著者もタネ明かしをしてますが、これは、「フェルミ推計」の典型的な問題だと言うのです。
核物理学者のフェルミにちなむもので、既知の数字を使って、大胆かつ筋道立てて、通常は知り得ない数字を推計する手法です。
彼が学生に与えた課題は、「シカゴには、何人のピアノ調律師がいるか?」というもので、こんな推計が、一例として、よく引用されます。
シカゴの人口を300万人とします。1世帯の人数を3として、世帯数は、100万です。ピアノの世帯普及率を1割として、10万台のピアノがあり、年に1回調律するとします。
さて、調律師は、1日に3台の調律ができるとし、週休2日で、年間250日働くとします。ひとりが1年間で調律できるのは、750台ですから、10万台なら、130人と言う数字が出ます。
大胆な前提、仮定を、いくつも置いた推計です。1日3台の調律依頼が、コンスタントにある、というのが、やや無理があるようにも思いますが、手法は、理解いただけると思います。
で、この手法なんですけど、かのグーグル社が、「入社試験」でよく出題した、というので話題になりました。
「スクールバスにゴルフボールは何個入るか?」
「◯○にあるマンホールの蓋の数は?」のように。
アメリカのやり方をマネるのがすきな日本の企業でも、ひところ流行ったようですけど、本家も含めて、今は、流行らないそうです。
就活生のほうの、「傾向と対策」が進んだこともあるのでしょうが、結局、この手の手法では、本当の「アタマの良さ」は計れない、というのが、グーグルも含めた企業の結論だったようです。
確かに、ある程度、基礎的な数字を覚えて、コツさえ掴めば、なんとかなりそうではありますから・・・・
「都内で、きのう終電車を逃した酔っぱらいの数」
「全国で、アカザの杖作りに励んでいる人の数(1名は、把握してますけど)」
自分で出題して、自分で推計して・・・・入試も就活もない気楽さと、ボケ防止を兼ねて、時々、楽しんでます。
いかがでしたか?次回をお楽しみに。