これまで世界の「アブない言葉」をシリーズでお送りしてきました。「決して」好きで集めてるわけではないのですが、どうもその手の情報が集まってきてしまいます(残念ながら・・・・)。
で今回は、植物編をお届けできることになりました。出典は、「人類が知っていることすべての短い歴史(上・下)」(ビル・ブライソン 楡井浩一訳 新潮文庫)。
広く科学の世界で、人間がこれまで知り得たことを、平易に解説した本で、生物の分類・命名法の歴史のエピソードが、とりわけ私の俗な興味を引きました。
この分野で、歴史上に名前を残す人物といえば、言うまでもなく、「リンネ」です。確か、中学校で習った記憶があります。二名法(生物の種(しゅ)を示すのに、ラテン語の名詞で属名を、次に形容詞形で種名を表記する方法)を考案し、今日の体系的な分類法の基礎を確立した人物としてあまりにも有名です。こんな方だったんですね。
で、この本によると、リンネには、驚くべき資質があって、それは、熱狂的ともいえる「性」への関心であった、というのです。例えば、特定の二枚貝と女性の外陰部の類似性に衝撃を受け、ある種の貝の各部位に、陰門、陰唇、恥毛、肛門、処女膜という名前を与えています(う~む。そこまでやりますか)。また、植物の特性、習性について、しばしば極端に擬人化した官能的特質を割り振り、「乱交」、「不妊の愛人」、「初夜の床」などと表現しています。
さらに、ある植物種をクリトリア(陰核)と名付けたりもしたので、当時、多くの人から、変わり者と見なされたというのも、むべなるかな。
とはいえ、彼の考案した分類・命名法が、今でも立派に通用しているのだから、大したものです。
リンネ以前には、そんな体系的な命名法はなかったので、アブなくて、低俗な名前がいっぱいありました(うれしいことに!)。
タンポポは、その利尿作用が注目されて、長い間、「寝小便草」という名前で通っていました。そのほかにも、「雌馬の屁」、「裸の貴婦人」、「引きつる睾丸」、「猟犬の小便」、「売春婦」、「尻軽女のナプキン」などという名前が、日常的に使われていました。ちなみに、日本にも正式名「イヌノフグリ」なんて植物があります。誰しも考える事は同じ、ということなのかも。
残念ながら、図版はなく、それらが、どういう植物に当るのかは分かりませんが、さすがにこれらの野卑な名前のほとんどは、今日、使われることはないようです。
ただ、わずかながら生き延びている言葉があって、苔(こけ)の一種で、「処女の毛」と英語で呼ばれるものがあるといいますから、ちょっと嬉しいです(「毛」は、もちろんアタマの毛ではありません)。
科学の世界も一歩踏み込むと、結構アブない、というのがよく分かった次第。
いかがでしたか?ちょっとアカデミック過ぎましたかね?それでは次回をお楽しみに。