★★★ 芦坊の書きたい放題 ★★★

   
           毎週金曜日更新

第405回 シニアにやさしいTV番組

2021-01-22 | エッセイ

 「テレビ離れ」がすっかり定着している私が、ここ数年来、大晦日に見ている番組があります。

 「年忘れにっぽんの歌」(テレビ東京系)がそれです。NHK紅白に対抗して、ずいぶん前に始った懐メロ番組だと記憶しています。今回(2020年)が第53回ですから、半世紀以上も続いている長寿番組なんですね。始った頃は、もっぱら本チャンの紅白を見てましたし、その後はテレビ離れが進みましたから、私にはずっと縁のない番組でした。

 な~んもすることがない(毎日がそうなんですけど)大晦日、「(夕方4時から10時までの)6時間に100曲」というテレビ欄のうたい文句がたまたま目に入って、途中からチャンネルを合わせたのがきっかけで、それ以来ハマっています。
 なんでそうなったのかを考えてみると、「団塊シニアを主なターゲットに」かつ「奇をてらわず、昔のまんまの歌番組の文法を守った」番組作りだから、のような気がします。具体的には、こんな具合です。

 時代的にカバーしているのは、昭和40年代から、ぎりぎり平成くらいまで、ジャンルで言えば、もっぱら歌謡曲、演歌です。
 登場する歌手の皆さんの年齢も60代から70代が中心で、私と同世代。そんな皆さんが、ナマのバンドをバックに(昔の歌番組(「ロッテ歌のアルバム」とかベストテン番組など)では当たり前でしたが)、今の声で(ナマですから当然ですが)お歌いになります。

 当時と変わらぬ歌いぶりの方には「ほう、日頃から鍛えておられるのだろうな」などと感心します。中には、声がかすれる、キーを外す、なんて方もいますよ。だけど、そんなのは全く気になりません。むしろ「あ~、お声は歳相応だけど、とにかく皆さん元気にしてらっしゃるんだ」という安心感、連帯感を抱きます。ナマだからこその醍醐味です。

 今回も会場は、例年通り中野サンプラザでしたが、時節柄、無観客となりました。出演者が客席に散って、皆んなで北島三郎が作った(との触れ込みの)歌を歌うという趣向でのオープニングがちょっと寂しかったです。

 皆さん歌手、タレント業を元気に続けておられる中で、最高齢は、新川二朗さん。なんと御年81歳。
 <雨~の~外苑~ 夜霧~の日比谷~ 今も~ この目に~優しく~浮かぶ~>
 「東京の灯よいつまでも」の曲が流れて来た時は、あまりの懐かしさに思わず一緒に歌ってしまって、いつも家人に笑われています。こんなカラオケ気分に浸れるのも「懐メロ」ならでは。

 前回までは、背景の舞台がシンプルなのにも好感を持っていました。目まぐるしい場面転換、ギラギラ、チカチカの過剰なライト使い、そして煩わしいだけのバックダンスなど、今時の「ショーアップ超過剰演出」などはなく、シニアの目にやさしい演出が嬉しかったのです。
 でも、今回は無観客ということもあったからでしょうか、ハデな照明使いが目についたのが、ちょっと残念でしたけど。

 さて、進行ですが、司会は、例年、徳光アナと女性との2名でしたが、今回は、竹下景子さんと中山秀征さんが加わっての3名体制。日頃は、しゃべりが仕事の方々もそれは封印して、簡単な歌と歌手の紹介に徹しています。そして、歌手が登場し、持ち歌(ほぼ代表曲、ヒット曲限定)を歌う・・・そんな当たり前の流れが、淡々と続きます。3~4曲毎くらいに、司会者から出演歌手へ短めのインタビューが入るという構成です。そう、昔の歌番組(そう言えば、テレビでの歌番組もすっかり減って今や、この言葉も「死語」になってる気がします)って、こんな具合でしたね。

 番組上の演出、彩りとして、物故した歌手の皆さんがビデオで登場するコーナーも恒例になっています。美空ひばり、テレサ・テン、西城秀樹、藤圭子・・・懐かしいですし、これはこれで、ひとつの趣向です。

 という次第で、舞台裏をあれこれ「忖度」しながら、この番組を堪能しています。今や新しい工夫、仕掛けを受け付けない(られない)体質、気分になってしまったのかな、との思いがよぎったりもするのですが・・・・
 でもまあ、年に1度くらい、古い自分とつき合う時間があってもいいかな、とも思い返しています。騒々しいだけのバラエティ番組が席巻している今のテレビ業界ですが、シニア向けの「落ち着いた」番組作りにも少し目を向けて欲しいものです。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。