さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

「すばる」の12月号

2016年11月12日 | 現代小説
 「すばる」の12月号を読んでいる。すばる文学賞受賞第一作という、上村亮平と武村美佳の小説。上村亮平の小説は、読んでいる時は女性作家だと思って読んでいた。いま見ると、男性なのか。いい感じなのだけれども、描写の省いていいところは省いてもらいたいと思った。少しかったるい。武村美佳も、同様に感じた。
 あとは、二人とも掲載の分量が足りないので、まだ才質を見極めがたい。上村亮平の詩に溺れるみたいな感じは悪くないし、なんかこの人は児童文学が書けそうな人だ。武村美佳の小説は、結末がやや予定調和ではないか。それに主人公も周囲の人たちも、頭がいいのだか、わるいのだか、ぜんぜんわからない。カリカチュアになりきっていない気がする。

 喜多ふありの「リーダーの仕事」は、そのまま高校の「現代社会」の授業で使えそうな内容だ。というのは、ほとんどわるい冗談だけれども…。ほんとうに、いまの若い人の労働環境は悪いのだと思った。でも、この作者も、もう少し世界を拡げてほしい気がする。

 先日亡くなった車谷長吉の『赤目四十八瀧心中未遂』などには、読んでいてカタルシスがあった。カタルシスのあるものが最善だという事は、決してそんなことはないが、でも、やっぱりそれはものを書く人は、目指してほしいと、私は思う。

後記 12日にアップして、いくらなんでもすぐに辛口のコメントでは書き手や本屋さんの迷惑になると思って、一度消して、23日に書き直して再度アップしました。


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