さいかち亭雑記

短歌を中心に文芸、その他

連休中雑記

2023年05月04日 | 本 美術
この数ヶ月、ジェフ・ベックのアルバムを聴くことが多かった。いまはベスト・アルバムのなかの「The Pump」が聞こえている。
 
昨晩は職場を五時に出て、通勤の中継駅の改札を出る時に、連休の谷間らしい独特のふわっとした雰囲気のあまり緊張感のない、いつもよりもゆっくりと歩く群衆の流れに包まれた。

19時40分から映画『トリとロキタ』を見た。観客は十人ほどだったが、衝撃的な幕切れに、エンド・ロールを前に誰もがじっとしたまま、一人を除いて立ち上がらずに、凝然としていた。折しも入管法が国会では審議の終盤を迎えていた。雑誌『世界』の五月号に監督へのインタヴューが掲載されていて、そこでは友愛(アミティエ)の物語だと彼らは語っていた。

今日は、昼頃一度職場に出かけた。明るい陽光のもと、グラウンドいっぱいにコートが作られて、若い人たちが競技の勝敗をかけて走り回っていた。それは神々しいほどの明るさだった。ガラス窓越しに年老いた警備員がそれを見守っていた。

夕方に気になっていた梅の徒長枝を切った。これで隣家の窓から家の前側が見えやすくなった。そのあと、「現代短歌」の茂吉歌集『つきかげ』特集を読んだら、なかなかおもしろかった。没後七十年で著作権が切れるということも「後記」の文章で知った。やはり著名な歌には、それだけの牽引力があるのだということも、あらためて思わせられた。

 目のまへの賣犬の小さきものどもよ生長ののちは賢くなれよ  斎藤茂吉
      ばいけん      せいちやう  かしこ
 
 暁の薄明に死をおもふことあり除外例なき死といへるもの
あかつき はくめい 

連休前に電車のなかで読んでいたのは、小杉放菴の『池大雅』だ。昭和十七年十二月刊で(三千五百部)と奥付にある。池大雅の伝だけでなく、「線」、「硯と墨の話」というような文章も付録として収められていて、有益である。絹も紙も裏を打てば三割ほど墨色が出て来る、とある。

これは古書の「えびな書店」で買った本だが、同店からは今泉篤男の著作集なども買うことができた。今泉篤男の美術評論は、今後も再読・味読に値するのではないかと私は思う。あとは、最近青空文庫で小熊秀雄の美術評論を見つけたが、これもなかなか詩人らしい鋭いもので、モディリアニについての一文などは感嘆のほかない。

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