前川前文科次官の“隠し玉”は新国立建て替え問題の闇か 2017年06月27日 NEWSポストセブン
安倍政権は「2つの武器」を手に霞が関官僚全体の“生殺与奪の権”を握ろうとしている。官邸(内閣官房)に「内閣人事局」を設置して各省幹部の人事権を掌握したことと、特定秘密保護法の制定だ。若手キャリア官僚が語る。
「前川(喜平・前文科次官)さんは現役の事務次官当時に官邸に身辺調査をされて出会い系バー通いの事実を掴まれていた。そんなことが可能になったのは2014年12月の特定秘密保護法の施行で特定秘密を扱う各省幹部が『適性評価』の対象とされたからです。安倍政権はいわば身内であるわれわれ官僚が何もしなくても当局に動向を見張らせ、いざ逆らったときは情報を脅しに使っている」
それだけに文科官僚の一部が加計学園問題で決死の反撃に出たことへの共感が霞が関全体に広がりつつある。
官邸が怖れているのは第2、第3の“官僚砲”だ。これまでは次々と“文書”が飛び出してきたが、加計問題では「録音音声」の公開という最終爆弾が飛び出すとの見方がある。
「文科省がいくら文書を出しても、官邸側は“そんな発言はしていない”と水掛け論で逃げている。しかし、最近は役所でも政治家や秘書に働きかけを受けた場合は、身を守るためにICレコーダーで録音を取って証拠を残しておくケースが多く、文科省の局長らが萩生田官房副長官と面会した時のやりとりなどを録音していれば、総理のご意向と官邸の関与の決定的証拠になる」(内閣府官僚)
疑惑が東京五輪利権に飛び火する可能性もある。文科省の反乱官僚の“後見人”でもある前川前次官は2015年に官邸が東京五輪メイン会場である新国立競技場の建設計画を全面的に変更した際、『整備計画経緯検証委員会』の事務局長を務め、設計と入札やり直しの舞台裏の全てを知る立場にあったからだ。
「新国立の建て替え問題の闇は前川氏にとっていわば“隠し玉”だろう。官邸の報復人事で省内の前川派官僚が処分されるようなことになれば、新たな告発が飛び出すのではないか」(同前)
文科省だけではない。財務省は「廃棄」した森友学園への国有地格安売却の交渉記録を“偶然”発見するだけで官邸に大痛打を与えることができる。厚労省は年金運用、農水省は農協改革、経産省はロシア支援や対米交渉などで火種を抱え、官邸への不満がくすぶっている。
第1次安倍政権は官僚の天下り規制を進め、結果、反発した霞が関から「閣議で大臣が総理に挨拶しない」といった官邸崩壊の実情がリークされ、求心力を失っていった。
そのトラウマから官僚支配を強めた安倍官邸だが、政権が弱体化したとみれば、森友問題では官邸を守る“汚れ役”に徹した財務省を含め霞が関全体が支配権を取り戻そうとスクラムを組むはずだ。文科省と官邸の戦いはその流れを決める“大勝負”なのである。