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胃ろうと、寝たきり老人大国日本の異常

2015-03-23 | 今注目の話題

【最新「死に方」事典】日本はなぜ「寝たきり老人大国」になったか 長寿と健康寿命を考える2015.03.22


(平均寿命は2014年 健康寿命は2010年厚労省資料より)【拡大】

 国は政策を転換し、「死に場所」を「病院」から「在宅」にすることを促進している。医療の発達で平均寿命が延び、長生きする人が増え、病院が高齢者で満杯状態になったからである。

 「国が老人を見捨てるようになった」と批判する向きもあるが、批判してもなにも変わらない。なぜなら、いくら長生きできても、「不健康」ならはたして生きている意味があるのかという、大きな問題に私たちが直面しているからだ。

 「健康寿命」という考え方がある。健康で日常生活を不自由なく送れる期間を、本当の寿命とする考え方だ。日本人の平均寿命は着実に伸びてきたが、健康寿命の伸び率は平均寿命の伸び率を下回る。人生の終わりの「不健康な期間」はどんどん長くなっている。

 あまり知られていないが、日本は「寝たきり老人天国」である。健康である日突然死を迎えるという「ピンピンコロリ」は本当に少ない。世界の国から見れば過剰とも言える延命治療が行われているからだ。その結果、「寝たきり」高齢者が激増した。

 実は、欧米から来た医者が日本の医療現場を見て驚くのが、「なんでこんなに寝たきりの老人が多いのか」ということだ。欧州の国々では、病院や老人ホームなどの施設に「寝たきり老人」はほとんどいない。アメリカも同じだ。アメリカのリタイアメント施設に行くと、ほとんどの入居者が元気で、スポーツやバーベキューをして老後を楽しんでいる。

 だが、日本の老人ホームは、車椅子の老人や、寝たきりの老人、認知症の老人が多い。病院も数多くの病床が、寝たきり老人で占領されている。日本の病院は、欧米の医者から見ると、患者を必要以上に長く入院させているようだ。向こうでは盲腸では1日入院、出産でも2日入院が一般的だ。骨折で手術後はすぐにリハビリに入る。ところが、日本ではどんな病気でも入院期間が長い。とくに高齢者になると、3カ月や半年というケースもある。その結果、患者はベッドで寝たきりになり、筋力が衰え、頭までボケてくる。

 こうした中で、胃瘻(いろう)をつける患者も多い。しかし、欧米の病院では胃瘻患者はほとんどいない。その理由は、「胃瘻は人間の尊厳を損なう」からだという。がんなどで終末期を迎えたら、口から食べられなくなるのは当たり前で、胃瘻や栄養点滴で人工的に延命を図るのは、逆に老人虐待だというのだ。こんな考え方を知ると、例えば養護施設で胃瘻を外さないように両手を縛られている高齢の認知症患者を見て、はたしてこれでいいのかと思う。

 日本が「寝たきり老人大国」になった原因はいろいろある。医療から言うと、前記のように延命治療をやり過ぎたこと。リハビリ医療、リハビリ施設が整っていないこと。実際、リハビリ施設や理学療法士などは不足している。また、患者側からすると、なんでも病院、医師に任せきりにすること。文化的に、欧米とは考え方が違うことがある。欧米は椅子の生活が基本だから、それができなくなると“人間ではない”と考えることもある。畳生活中心だった日本人とは違うようだ。

 現在、厚生労働省では、団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに、重度の要介護状態となっても、病院や施設では受け入れないような方向で「地域包括ケアシステム」の構築を進めている。しかし、その前に、私たちは、健康寿命という観点から、これまでの考え方を変える必要があるだろう。
 ■富家孝(ふけたかし)

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