欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

金の鉄琴を奏でてみると

2012-02-06 | une nouvelle
父さんのお店にはいつも不思議な物がいっぱい。
タバコを吸いに外に出た時がチャンスなのだ。
父さんがいつもすわっている、その横の金の鉄琴を持ち出したのは、とある暑い昼さがり。
スキップしながら近くの浜辺へ。長くくねった流木に腰かけ鉄琴についている箸のような二本の棒で音を奏でてみると・・。
とても美しい響き。僕を不思議な世界へといざなってくれる。
ここで待ち合わせのかわいい彼女があらわれたのはそのすぐ後で・・。
わからないながら適当に鉄琴を奏でてみて、思わぬ心地いい音色に彼女も上機嫌。
そんな時、いきなり雲が僕たちの上で輪になって、みたこともない大きな象があらわれたのだ。
"わたしを呼ぶ者はお前たちか?"
僕たちは大きく口をあけたままぽかんとしていて。
彼女がようやく首をふると、
"その神聖な楽器を奏でているのは、となりの坊やだろう?"
思わず僕は二本の棒を手から落としてしまい・・。
"そんなに怖がることはない。ひとつ願いを叶えにきただけなのだから"
僕は彼女の顔を見て、
"なにか頼んでいいよ・・。"
すると、いつもは夢ばかり語っている彼女が、
"わ、わたし、今しあわせよ・・。"
"さぁ、どちらでもいい。願い事を言ってみなさい。"
"ね、わたしはいいから。なにか言ってみてよ・・。"彼女は大きな目をさらにひらいて、僕に丸投げ。
"え、えっと~、"
いろいろ浮かんでいいはずの答えがまったく浮かんでこなくて。なにか言葉にしようとして、
"父さんもいつも仕事の愚痴ばかり。母さんはいそいそかまってくれないし。みんながしあわせになれたらいいのにな・・。"
"ほう、坊や、とても良い心がけだな。だが、この世界は苦しみや悲しみを乗り越えながらみんなしあわせになれるんだよ。
わたしがなにかしなくてもみんなしあわせに向かっているんだ。
そうだ、良いことを教えてあげよう。天からのご褒美をもらえるように今なにができるかをいつも考え動いていくのだよ。
すると毎日の中でいつもご褒美をもらえるようになるからな。
坊やの言うしあわせになれるっていう近道だ。わかったかね、お二人さん。
ふ、彼女がちょっと強そうだけど、いつまでも仲良くな。"
すると、大きな象はお尻をむけて天の方へと消えていった。
波の音しか聞こえなくなった浜辺、しばらくして彼女が一言。
"ねぇ、他にもっと言うことがあったんじゃない!?"

ドラゴンを倒す日

2012-02-06 | une nouvelle


ある強くお日さまの照りつける朝、お城の庭に集まる屈強なおとこたち。
キングは威勢よくこう叫ぶのです。
"皆の者ぉ、あの火山にいるドラゴンを倒す日がやってきたぞ。
日頃からの鍛錬を今日こそ試す時!!"
男たちの野太い雄叫びがあたりに響きます。
"ジャック、用意はいいか。
お前の槍が成果を見せる時がやってきたぞ。"
"王様、どれだけこの日を待ちわびていたことか。この研ぎすまされた槍が竜の血を求めておりますぞ。"
"エースよ、用意がいいか。お前の弓が成果を見せる時がやってきたぞ。"
"王様、ご安心下さい。エースという名に恥じぬ働きぶりをお見せいたします。"
クィーンがキングのそばにやってきて、
"皆様のご無事をお祈り致しております。わたしもお供したいのですが、城に残る者もおります。
わたしたちは責任を持って留守をお守り致します。"
"ううむ、頼もしい言葉。それでこそわが国のクィーンだ"
キングはあたりを見回して、
"やや、ジョーカーの姿が見えぬが・・。"
"王様" ジャックが言います。
"神聖な戦いを前に異なことをおっしゃられる。
ジョーカーは剣を持ったこともなければ、盾もさわらない道化者。
あのような者を戦いに連れて行く意味がわかりかねます・・。"
王様はジャックを見て、大きく首をふり、
"お前はまだわかっていない。あの高くそびえる山へのぼり、見たこともない大きなドラゴンを相手に戦いをいどむのだぞ。
それがどれだけ人の心に影響を与えるものか・・。
だからこそジョーカーのような道化者がいるのだよ。
ユーモアがなにより人の心をやわらかく強くするのだから。"