欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

尖塔の十字架

2008-04-14 | poem
雪の降る日。私は灰色の空の下、悲しみにうちひしがれていました。
愛する人を奪われた日。
空のむこうにある尖塔を私はただ見つめていました。
空からは冷たい雪が。家々から立ちのぼる煙。
狭い路地に膝をついて、私は動くこともできずに、ただ空を見上げていました。

愛する人を奪われたのです。それとともに喜びも私の未来も、みんな奪われてしまったのです。
これからは・・。
もう先のことなど考えることができませんでした。
雪の降り続く寒い日。
私は遠くの尖塔をじっと眺めているだけで、なにもできませんでした。

路地を行く人々。服が汚れていることも。
冷たい水たまりで凍えていることも。
私にはもうなにも感じることができなくなっていました。

乾いた感傷だけが私を覆っていたのです。
この世にいない愛する人の面影だけを、私は遠い空に見つめていたのです。
愛する人は私のもとを去っていったのです。いいえ、奪われてしまったのです。
二人の間に永遠の隔たりが存在してました。
私はそのことを心で拒み続けていた。
しかし、いくら拒んでも拒みきれないなにかが私の前に大きく横たわっていたのです。

雪は降り続いていました。北風が家の煙をくゆらせていました。
人々の声が耳をかすめていきます。
しかし、私は灰色の空をずっと見上げていました。
空のむこうにある尖塔をじっと見つめていました。

そこになにがあるというわけではないというのに。
ただ、その先端は輝いていたのです。
暗い世界の中で唯一輝いているヒカリ。
私は、私の心は、そのヒカリを希望に変えようとしていたのかもしれません。