必然的なヒストリー

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【功名が辻・感想レビュー】種崎浜の悲劇

2006-11-26 21:16:00 | 大河ドラマレビュー《功名が辻》

前回に引き続き、山内家と一領具足と長宗我部遺臣団の抗争のお話がメインであった今回。

前回のラストで渡辺哲とバーチャル文乃に討たれた千代・・・。
と思ったら、実は討たれていませんでした。
なんなんだ、そのフェイントは!?
渡辺哲を処刑台に送る為の方便でしたか。
それにしても千代様が無傷で何より

今回は、千代を文字通り陰から支えていた「義」の男、六平太が死亡。
決して奇麗事は言わず、黙々と自ら泥を被ってまで山内家の安泰を考えての最期。本当に立派でした。
俺の仕事は終わった・・・(中略)千代、これでお前も安泰だ・・
えっ!せっかく生き残ったのに・・・。
甲賀者は影に生き、影に死ぬ
カッコイイ!カッコ良すぎるぜ、六平太。はっきり言ってクサイ台詞だけど、六平太にはよく似合う。しかも、一回目で出てきた鉄砲玉が伏線になっていたとは!
意外だ!意外だ!意外だ!
やられた、やられた
この一連の場面で琉河の堤防が決壊しました。

これは反則技ですよ。
香川照之さん、いいお仕事でした。お疲れ様でした!
さようなら、六平太。
(でも、「千代が好きだ」は余分だったかも。竹中半兵衛と被った)

もう今回が最終回でいいよ。もうね、何だか主人公が死んでしまったような感覚なんですよ。この喪失感は何でしょう。
本音を言えば、彼には一豊死後も千代を支えて終生彼女の側で生きていて欲しかったです。

それが種崎浜での事件を痛み分けにするための役割として死んでしまうとは・・・。
ハンムラビ法典に則った「目には目を」の精神を貫かなければ、視聴者の反感を買ってしまうとでも製作者は思ったのでしょうか。
六平太が相手に対して損害を与えた分だけ、彼は同じだけのもので償わなければならない。そうしなければ言っても分からぬ者達からの苦情があぁ~、とでも大石さんは考えたのか。
(あくまで例えですので、「身分によっては同害報復は履行されなかった」というような批判はご遠慮下さい)
それならそれでいいのですが、その役割を六平太に負わせるとは、何ともムシのいい話というか、単純と言うか・・・。
史実通りに家臣の提言を採用し、一豊が指揮を取って反乱分子を始末したという展開で良かったと思いますよ。主役(もしくはそれに該当する人物)には「汚れ役」をやらせるわけにはいかない、という不文律はいつ頃から出来てしまったのでしょうか。

良いじゃないですか、一豊には大名としての器量が並かちょっと足りなかったので、他に良い方法が思いつかなかった、だけど責任持って一豊自らが指揮して始末します!という展開で。

彼は織田信長ほど冷徹な人物ではなかった為「逆らう奴は皆殺し」と割り切る事は出来なかったし、豊臣秀吉ほど知略を持っていなかったので「うまいこと武器を取り上げて相手の牙を抜く」ことも出来なかったし、徳川家康ほど人心掌握術を心得ていなかった為「懐柔して山内家への忠誠を確固たるものとする」ことも出来ませんでした。
反乱分子を改心させて忠誠を誓わせる事も、無力にする事も出来なかったので、仕方無しに虐殺しました。だけど、それが徹底していなかった為、大坂の陣では豊臣方に呼応する長宗我部遺臣団が出てきてしまいました。要するに土佐での治世が中途半端に終わってしまった一豊、ちょっと残念な人生でした。でも、中途半端な能力しか持っていなくても一国一城の主になりましたよ!めでたし、めでたし~。
という描き方でも琉河は全然、構わなかったのですよ。この考えは少数派ですかね。別に「一豊や千代は血を見るのが好きな性格なので、好んで虐殺という手段に出た」なんて思わないのに。そこまで自信がないのか、大石さんは。
しかも言い訳じみたセリフ
後々の世まで言い伝えられる・・・云々
どえらい予防線を張りましたね。というか、この一豊と六平太のやり取りは司馬遼太郎っぽいな。司馬大先生なら、このくらいの捏造はやりそうだ。

しかもその後、一領具足の始末を決意した旨を千代に告げるときに、一豊が敦盛を舞うシーンは原作通りですか?まさか、年末の特番スペシャルを意識してのことですか?もう産経新聞を味方に付けたいという魂胆が見え見えです。あっ、口が滑りました。磔だけはご勘弁を!
冗談はともかく、おそらく一豊はこの時、織田信長の長島一向一揆や比叡山焼き討ちを意識していたのでしょうね。

原作ではどういう展開になっているかは知りませんが、六平太だけではなく祖父江新一郎までもが死亡してしまったことが不思議で仕方がありません。というのも彼は実在の人物祖父江一秀がモデルになっていると、ずっと思っていたからです。ちなみに祖父江一秀という人物は生没年は不詳ですが、大坂の陣までは生き残っていたはずです。それを、ここで死なせてしまうか~!?そこまで、お涙頂戴展開を狙っているんですか。その為に、前田吟さんの出番を今まで残していたのですか。エグイ!やり方がエグ過ぎるぞ。

六平太の願いも空しく、
「暇を取らせて頂きます」
と一豊に言い放ってしまった千代。
六平太の死に動転して頭が回らなくなったとしか思えない、この決断。
まるで坂本竜馬が好きで好きで仕方がない司馬遼太郎大先生の理念を代弁しているようなこの台詞。
一豊様をここまで、貶していいものでしょうか。
六平太と一豊は山内家の為に苦渋の末の決断。それを理解できないとは。
これでは、まるで六平太が千代と一豊様の仲を裂くために死んだような展開ではないですか!

次週、どこかで見たことがあるような少年が登場。
彼が千代に伝えた言葉とは!?

そして何故か反徳川の武将として名前が挙がっている黒田如水が再登場
オイシイ役だな黒田。ここまで厚遇されるとは。
斉藤洋介さんも役者冥利に尽きますね。

ところで、井伊直政の役割は何だったとだろう。
今回の事件の関係者なので、その為に以前から登場させていたのかと思っていましたよ。
その為にわざわざ、怪しい篠井英介さん(褒め言葉です)をキャスティングしたのだと思っていました。それが単に一豊に「土佐を何とかしろ」とせっつくだけの役だったとは。
結局、このドラマにおける井伊の役割とは本多正信みたいな役割だったのですね。

残すところ、後2回。
どのようなエピローグを迎えるのか、楽しみです。