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道南の空を飛ぶ (2) - 奥尻島 <記憶>

2009-09-16 | 北海道
1993年7月12日、22時17分。
北海道南西沖の深さ34Kmを震源とするM7.8の地震が日本海地域を襲った。
震源地に近い奥尻島は地震発生と同時に起きた大津波により壊滅的な被害を受けた。
死者・行方不明者は198名におよび、残された島民からも平穏な暮らしを奪い去った。



1993年7月12日、世界の海にもぐる水中写真家、中村征夫氏は、取材で奥尻島を訪れ、海辺の民宿にいた。
22時17分、震度6の揺れ。民宿の奥さんが叫んだ。
「逃げてえ」
中村は、高台へ裸足で走った。後ろでゴーッと地鳴りのような音。振り向くと、高さ30メートルの真っ黒な魔物のような水の壁が迫っていた。
「のみ込まれる。もうだめだ」。
水はすぐ後ろに落ちた。
高台にはすでに数百人も避難していた。民宿の奥さんもいた。下の集落でガス爆発、火柱が立つ。悲鳴、叫び声。中村は「落ち着け」と自分に言い聞かせた。

大津波の直後、中村は仕事ができなかった。
民宿に遊びに来た女子中学生が、親切な漁師が、200人以上が海に殺された。「海は素晴らしい、と今さら言えるか」

しばらくして、考え直した。
「お前は生きて恐ろしさを伝えろ、と残されたんだ」。

津波から2カ月後、奥尻の海にもぐった。カニやハゼが何もなかったようにいる。「野生はしたたかだなあ」

講演では、かならず奥尻体験に触れる。
「母なる海も時に爆発する。それを忘れちゃいけない」


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