ニューヨーク(ダウ・ジョーンズ)JPモルガン・チェース(NYSE:JPM)をはじめ多くの米金融会社が相次いで増配
や自社株買いを発表している。米連邦準備制度理事会(FRB)が13日にストレステスト(健全性審査)の結果を公
表したことを受けたもの。
FRBは、ストレステストの対象19社のうち15社が健全な自己資本水準を維持していると結論づけた。一方、シテ
ィグループ(NYSE:C)、アトランタに本拠を置くサントラスト・バンクス(NYSE:STI)、保険大手メットライフ(NYS
E:MET)、自動車ローンや住宅ローンを手掛けるアライ・ファイナンシャルの4社は、ストレステストのシナリオに
基づくと少なくとも1項目で不合格となった。アライは普通株ティア1(基本的項目)比率が合格基準の5%を下回
った。
金融危機から4年が経過し、自己資本比率が改善し不良債権による損失が減り続けていることから、多くの金融
会社は増配や自社株買いの拡大をするとみられている。FRBは、ストレステストで「故意に厳しい」条件を設定し
たが、自己資本を十分高い水準に保つことは「経済環境が悪化しても金融機関が融資と債務返済の能力を確実に
持ち続けるために極めて重要」だと説明した。
シティは声明で「資本を株主に還元する計画にFRBが反対した」と明らかにした。ただ、優先株と普通株の現行
の配当水準については反対されなかったという。シティは年内に新たな資本計画を提出する方針を示した。また
、増配計画がなければストレステストの基準を満たしていたと述べた。
フィフス・サード・バンコープ(Nasdaq:FITB)は、資本計画の一部、つまり増配についてFRBが反対したと述べた
。普通株の買い戻しは認められたが、同社が49%を保有する決済会社バンティブの株式の売却による税引き後利
益を超えない範囲とされた。同社は新規株式公開(IPO)を予定している。
ストレステストの結果によれば、サントラストは配当や普通株買い戻しを増やさない場合に限り自己資本基準を
満たす。このため同社は、現時点では株主への資本還元を増やさないとしている。
今回のストレステスト対象企業で唯一の保険会社メットライフは声明で、FRBの分析には「深く失望した」と述
べた。また「銀行中心のやり方」では、異なるビジネスモデルで事業を運営している生命保険会社の資本力を適
切に評価することはできないと指摘した。
過半数株を政府が保有しているアライは、FRBのシナリオは同社の見方と「食い違って」おり「住宅ローンの偶
発リスクを極めて過大に見積もっている」と指摘した。アライは近いうちに新たな資本計画を提出するとした。
ストレステストで健全な自己資本水準を維持しているとされた銀行のうち、バンク・オブ・アメリカ(NYSE:BAC
)は増配や新たな自社株買い枠の承認を求めなかった。
キャピタル・ワン・ファイナンシャル(NYSE:COF)は、最近2件の買収を発表し、これらに関連した資金調達をす
る計画であることから、増配や自社株買いの承認を求めなかった。広報担当者は、現行の自己資本水準に満足し
ていると述べた。
モルガン・スタンレー(NYSE:MS)は、モルガン・スタンレー・スミス・バーニーの株式14%を現金で追加取得す
る可能性や現行の配当支払いを含め、2012年の資本計画についてFRBから異議なしと伝えられたと明らかにした。
ゴールドマン・サックス・グループ(NYSE:GS)は、自社株買い計画(規模は明示していない)や増配の可能性につ
いて、FRBから反対されなかったと述べた。
USバンコープ(NYSE:USB)は配当を56%引き上げた。PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ(NYSE:PNC)は
ストレステストに合格したと明らかにした。BB&T(NYSE:BBT)は、配当を4セント引き上げることについてFRBから
反対されなかったと述べた。
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