■今回のまとめ
1)欧州の銀行救済が報道されて、日経平均が9000円台を回復。
2)来週発表される日銀短観は、横ばいが予想されている。
3)日経平均と短観を比較した傾向からは、上昇したら売っておいた方がよいことがわかる
◆日経平均が9000円台を回復
株式市場が昼休みの間に、EU首脳が1200億ユーロ規模の成長策で合意するとともに、欧州安定メカニズム(ESM)が銀行に直接資本注入する可能性を示したことから、日経平均は9000円台を回復する動きとなりました。
日経平均が急騰した背景は、ESMが銀行救済資金を拠出するという点です。
6月中旬にスペイン支援が報じられましたが、このときにはスペイン政府へ直接融資するという内容だったため、スペイン財政の重荷は変わらないと評価されました。このために、株式市場や為替市場の反応は薄く、スペイン国債の利回りも上昇しました。
今回は、ESMからの資金拠出によって財政負担を増やさずに銀行に資本注入するという内容のため、EU加盟国の追加負担がなく、各国の財政が悪化しないという点が評価されたといえます。
ただし、株式市場の上昇した要因として、期末に向けた「ドレッシング買い」という見方もあります。本日は四半期末、半年末、月末ということから、投資信託やファンドなどが評価を上げたいために買いが入っているという可能性が指摘されています。
また、騰落レシオが120%を超えていたり、テクニカル指標が短期的な過熱感を示しており、持ち株があれば利益確定売りを検討するタイミングになったと思われます。
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◆7月短観発表が注目される
一方で、来週月曜日(7月2日)には、6月調査の日銀短観が発表されます。株式市場にとって材料視される「大企業製造業の業況判断」は、3月と同じ「-4」になることが予想されています。
仮に来週発表される7月が「-4」となった場合、2011年12月から3四半期連続で「-4」となり、短観結果の横ばいが続きます。
そこで、2000年以降の日経平均と日銀短観(DI)の傾向を比較しました。
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短観で注目される「業況判断DI」とは、各アンケートの項目について3個の選択肢(良い、さほど良くない、悪いの3つ)で解答してもらった結果を指数化したものです。
計算方法は案外簡単で、アンケートをとった全体の中で「良い」と答えた割合から「悪い」と答えた割合を引いて計算します。たとえば100社にアンケートをとって、「良い」40社(40%)、「さほど良くない」30社(30%)、「悪い」30社(30%)となった場合、「良い」(40%)から「悪い」(30%)を引いた10%がDIとなります。悪いが良いより多ければマイナスになりますので、業況判断DIは最大100からマイナス100までの範囲になります。
つまり、DIがプラス圏であれば、景気がよいと考えている企業が多く、マイナス圏であれば景気が悪いと考えている企業が多いということです。
日経平均とDIがプラス圏なのか、マイナス圏なのかに注目して比較するとよくわかります。2004年から2007年頃まで、DIはプラス圏を維持しています。景気が良い状態が続いていたといえますので、株価も右肩上がりの上昇になっていたといえます。
その後、リーマンショックに向かってDIが急低下し、日経平均も暴落しました。そして、2010年にかけてDIが回復し、プラス圏になるまで日経平均の上昇が続いています。
しかしながら、2010年にプラスを回復してから現在までのDIは、マイナス圏でしばらくもみ合っている状態です。日経平均もDIに連動するようにはっきりしない展開となっており、2010年からはゆるやかな下落トレンドになっています。
日銀短観と日経平均の比較から考えられるのは、プラス圏で推移しないと日経平均が大きく上昇して、右肩上がりの上昇を始める可能性は低いということです。景気の状況から考えましても、株式市場が上昇したときには売っておいた方がよいと思われます。
また、日銀短観は日本の景気をチェックするときに、外国人投資家も注目している指標です。欧州問題や世界的な景気もとても重要な要素ですが、国内株式市場にとっていちばん肝心なことが国内景気の状況ですので、株式市場全体の方向性を再確認するために注目しておいた方がよいといえます。
レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明