多くの投資家は「株式市場は上がるのか、下るのか、どちらか決めてほしい」と思っているのではないかと思います。そう思うと「イライラする」と思います。そして、そう思うことが株式投資の判断を誤らせる第一の原因でもあります。では、どう思えばよいのか?
株式市場は自分がどう思っても、自分がどう思ったかを考えてくれるわけではありません。株式市場は「なんらかの根拠」に基づいて上がったり下がったりしています。つまり、当てもので考えるのではなく、今の株式市場をとりまく環境をチェックして、上がる確率が高いのか、下る確率が高いのかを導き出すことが、上がるか下がるか迷うイライラを解消する方法であり、安定的な資産運用の結果を出す秘訣でもあります。
■株式市場を上昇させた要因
世界の株式市場が上昇した要因は「欧州危機」にあります。欧州危機によって昨年半ばから一旦は世界的な株式市場の暴落が起こりましたが、この欧州危機に対する防衛策が次々と出たことを材料に、世界の株式市場は2011年10月から上昇に転換してきました。
この上昇要因はギリシャ救済やイタリア救済などで、政府が口先コメントを出したことが最初で、その後に本格的な金融緩和政策に転換したことによって、昨年末からは一段高となりました。
一昨年の米国のQE2から始まり、昨年の欧州危機のカウントダウンによって世界経済が落ち込み、この景気悪化を防ぐために世界各国が金融緩和を行ったことで始まった金余り相場は、インドの利下げ、米国の緩和表明、日本の緩和表明、中国の利下げ、ECBの約50兆円の資金供給という流れの中で一段高となりました。
つまり、今回の株式市場の上昇は「金融緩和による過剰流動性相場」であったわけです。ところが、直近になって様相が変わってきました。
オーストラリアの金融緩和終結宣言に続き、世界の金融政策の要と言われているイスラエルも金融緩和から据え置き政策へ転換と言ってきたことで、世界的金融緩和が終焉、これからはECBと中国が金融緩和を続けると思われますが、米国と日本を初め、世界の国々は据え置き政策に次々と転換してくると思います。
米国経済は景気後退に落ち込むと言われていましたが、バーナンキFRB議長がグリーンスパン元議長と同じように「強烈な金融緩和政策」をとったことで、専門家の予想とは逆に、景気が底を打っておだやかな上昇を開始してきました。
本来、ECBの50兆円の資金供給で株式市場は調整局面に入る予定でしたが、調整局面に入っていないのは「米国の景気指標が市場の予想を超えて好転している」ことです。
もう一つのプラス要因は中国問題です。これまで不動産バブルを鎮静化させるために中国は金融引き締め政策をとってきました。それが、欧州危機によって中国経済も鈍化しだしたことで、中国は2月に利下げを行い、これからも中国景気を内需によって回復させるために金融政策と景気対策を行っていくと思われます。つまり、再び中国が世界景気の受け皿になるかもしれないという期待感も世界の株式市場の調整を止めている要因になっていると思います。
日本についても、第三次補正予算で10兆円以上の景気対策を盛り込んでいますが、これが4月以降には実施されることになります。つまり、日本経済にも景気対策によるお金が入ってきますので、自動的に日本の景気を底上げすることになります。これは日本独自の材料ですが、日本の株式市場がしっかりしている要因の裏側には景気対策があると言えます。
■結論
1つ動かしがたい事実があります。それは、世界の株式市場が既に20%以上も上昇しているということです。株式市場は上がれば下がりますし、大きく上がれば大きく下がります。一番上昇率が小さいのは日本市場で21%くらい、他の市場は25%から30%も上昇しています。
したがって、目先調整、調整終了後には再び上昇というのが一番客観的な分析結果ではないかと思います。
この常識的な分析を覆す要因としては、
第一に金融緩和が終わったというコンセンサスが世界の市場に出ること
第二に欧州危機が銀行危機からデフォルト危機へ移り、デフォルト危機から財政再建による経済危機に発展した場合
第三に4月中旬に予定されているイラン制裁によってイランがホルムズ海峡封鎖という暴挙に出た場合
と思います。
上記の3つの懸念材料をチェックし、それらが起こらなければ株式市場は調整後に再び上昇するというシナリオを前提に対処すれば良いと思います。つまり、目先は売りから入るか、下るのを待って買うかのどちらかになると思います。問題は下るのを待ったときの「買いのタイミング」をどうやって探すかになってくると思います。
為替の話については「森田のつぶやき」で書きます。
レポート担当:ケンミレ株式情報 森田 謙一