米国株の下落は本当にデフォルトリスクなのか?
NYダウが大幅安となり、国内市場も大きく調整となりました。今週に入ってから、連日米国のデフォルトリスクが取り上げられていますが、もっと本質的な問題を株式市場が織り込み始めている可能性が考えられます。詳しくはレポートをご覧ください。
米国株式市場は、NYダウが4日続落の大幅下落となって、調整局面が続いています。市場心理を表すといわれる「VIX指数」も大きく上昇しており、株式市場が6月に安値を付けた水準に迫っています。
VIX指数とは、シカゴ・オプション取引所が作り出した「ボラティリティ・インデックス」の略称です。対象は「S&P500指数」ですので、比較するのであればこちらとなるのですが、米国の代表的な指数としてNYダウと比較しています。
米国株式市場が調整している要因として、米国のデフォルトリスクが目先の材料として警戒されています。債務上限を引き上げに合意しなければ、米国債がデフォルトになるリスクがあるので、このリスクを回避する動きということです。
「米国が本当にデフォルトになったらどうなるのか?」については、リーマンショック以上のパニックになるという指摘もありますが、実際には「なってみないとわからない」と思います。反対にいえば、「わからないからリスクを取れない」ので、売っているということです。
ただし、米国債の価値が下がるという想定は、多くの投資家が考えることでしょう。したがって、米国のデフォルトリスクを市場が本当に懸念しているのであれば、米国債は売られるはずです。(利回りは上昇する)
そこで、米国債(10年債)のチャートをチェックしてみますと、債券は大きく売られるという展開にはなっていないことがわかります。
米国債がデフォルトになるようなら、債券価値が下がり将来の金利上昇の可能性が高く、米国債を買うリスクも高くなりますから、債券市場で売りが優勢となってもおかしくないと思われます。
債務上限の問題を楽観はできないものの、この動きを見ると市場関係者は米国のデフォルトリスクをそれほど警戒していないのではないかということになります。
株式市場が下がっている材料で米国のデフォルトリスクばかりが目立っていますが、本当は米国景気の減速が警戒されているのだと思われます。昨日の米国株式市場の下げ要因も、耐久財受注が予想に反して前月比で減少したこと、ベージュブックで各地の景気減速が指摘されたこと、の2つの景気要因が引き金となっています。
米国のデフォルトリスクを家計に例えれば、借金してなんとかやりくりしていたところへ、借金の限界が来た状態です。そこで、別の借り入れ先を探さないといけない(債務上限の引き上げ)という状況になったのですが、当然、借金は返さないといけないわけで、借り入れを増やすなら「もっと節約しなくてはいけませんよ」という協議といえます。
したがって、借り入れを増やすことをOKしたとしても、その先にあるのは節約(緊縮財政)ということになります。つまり、デフォルトリスクがなくなっても、次にあるのは景気がさらに悪化するリスクといえます。
株式市場が下がっていて債券市場が反応していないのは、市場の注目点が米国景気の減速へ向かっているからだと考えられます。ギリシャ債務問題、米国の債務上限と不安材料が続いていますが、その裏側でずっと米国の景気減速懸念が続いているのだと思います。
米国の債務上限の最終期限は来週の8月2日ですから、時間とともに消化されると思いますが、消化したから株式市場が順調に上昇するためには、景気が回復するというコンセンサスが出来上がることだといえます。
したがって、債務上限引き上げの材料はすでに株式市場は織り込んでいて、次に向かって動いているとなれば、「米国のデフォルトは起こらない=今買って、反発したときに売る」という株式市場の上昇シナリオを考えることができますが、デフォルトではなく米国の景気減速で下がっているのであれば、このシナリオは危ないとなります。押し目で買ったら反発してもしなくても一旦は売ってキャッシュ化することを優先した方がよいといえます。
レポート担当 : ケンミレ株式情報 市原 義明