リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

168. 15回目のドイツ旅行(16)ミュンヘン往復とマティアス・ヴェニガーさん

2019年02月08日 | 旅行

▶︎15回目のドイツ旅行(16)ミュンヘン往復とマティアス・ヴェニガーさん


バイエルン国立博物館

 

ミュンヘンへ

 9月22日(土曜日)はニュルンベルク宿泊の最終日です。ミュンヘンのホテルは今まであれこれ泊まりましたが、どこもそれなりに料金が高く、駅からは結構歩くところばかりで、ここという宿が見付けられませんでした。そのため、駅近くのホテルにそこそこの料金で泊まることができるニュルンベルクから往復することにしたのでした。

 ニュルンベルク中央駅に着くと民族衣装の若い人たちがずいぶん集まっていました。薄ら寒いのに薄着です。考えてみたらこの日はオクトーバーフェストでミュンヘンまで誘い合って行くところでした。いつもは比較的静かな印象の若者たちも、この日ばかりは列車の中でも大きな声でお喋りをし、うるさいぐらいでした。

  ミュンヘン中央駅からは三津夫の持っていた地図に従って一気にバイエルン国立博物館まで歩きました。博物館の中央入口より手前でファイト・シュトースの彫刻「二枚の紋章を持った婦人像のアントラー式シャンデリア」が載っているポスターを見付けました(写真・下)。三津夫が気に入って『新・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』の裏表紙に掲載する写真として選んだのがこの作品でした。


この角度だと彼女は貴婦人のたたずまいですね。



でも、この角度だとちょっとお茶目な表情に感じませんか?

ちなみにこれは私の『新・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』の裏表紙です。


 博物館にはほとんど観客がいなくて、入館時は私たちだけでした。ゆっくりとリーメンシュナイダーの部屋に向かうと何ということでしょう! 2016年には空っぽだったリーメンシュナイダーの部屋に多くの作品がゆったりと立っているのです。1999年、初めてマグダラのマリアを見たとき、小さな暗い部屋に彼女は佇んでいました。その部屋の中でこそ、リーメンシュナイダーのメッセージは強烈に浮かび上がり、私の心臓を貫いたのでした。でもその後、大きな部屋にリーメンシュナイダー作品が集められてからは、明るすぎてガラスケース内には光が反射し、なかなか写真を写すのが難しかったのです。マリア・マグダレーナも少々疲れた表情に見えたのでしたが、今回はマグダレーナの雰囲気にぴたりと合った適度な照明の中で以前の敬虔な姿を取り戻していました。

 そして嬉しいショックも。展示室を回っているうちに何とペーター・デル作の「美しいマリア」があったのです!! 思わず小さな叫び声をあげてしまいました。9月12日にマイセンまで出かけていって見られなかった作品です。ここにあるとは…。三津夫はとっくに見ていて、私がどんな反応をするのか楽しんでいるようでした。解説カードを読んでみると、ジーメンス文化財団により貸し出された展示品となっていました。しかも以前はマイセンのアルブレヒト城に展示されていたとあります。それなら前回訪問したときにはすでにマイセン市立博物館ではなく、アルブレヒト城にあったのではないかと残念でたまりませんでした。でもそのときもお城に着いたのは夕方5時前でしたから、やはり見られなかったのかもしれませんね。ここで見られてラッキーでした。写真も撮ることができましたし。

 この展示に拘わっているのはマティアス・ヴェニガー博士です。中世の彫刻を担当している方ですが、この日、博物館ではお目にかかれませんでした。というのは、数日前からエストニアに出張があって、この日に帰宅するという日程だったのです。車を飛ばしてせっかく初めてのエストニアに行ったので帰りがけに見たい場所もあり、何とか夜までには戻ってくるということで、私たちのホテルに寄ってくださる約束になっていたのでした。

 

マティアス・ヴェニガーさん、ホテルに見える。

 ヴェニガーさんとメールのやり取りを始めたのは2007年だったと思います。マグダラのマリアなどの情報を教えていただいたのでしたが、できあがった『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』を贈呈してもお返事がいただけずにいました。2010年に再度ミュンヘンに行くことになり、三脚を使って撮影させていただきたいとお願いのメールを送ったところ、撮影は良いけれども出版などには使って欲しくないと釘を刺され、その後はやり取りが途絶えていたのです。でも、『新・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』を出版するに当たってどうしてもバイエルン国立博物館の作品を掲載したいと願い、2017年に重たい気持ちにむち打ってお手紙を書いたのでした。それからはとても親切にお返事をくださるようになり、ミュンヘンに私たちが行くときには是非会いたいと、このようなきつい状況の中でホテルに寄ってくれたのでした。

 電話のベルが鳴ったのはもうすぐ10時という頃。三津夫は買ってあったビールを待ちきれずに開けたところでした。急いでロビーに下りると痩せた背の高い男性が立っていました。「ホテルに遅くなると連絡をしたけど伝わりましたか?」と疲れた様子でした。残念ながらメッセージは伝わっていませんでしたが、それは最初から覚悟していたことで大丈夫ですよと答えて本を手渡しました。一冊はバイエルン国立博物館の図書館へ、もう一冊はヴェニガーさんご自身へ。本を手にとって内容を見始めるとどんどん表情が和らぎ、笑顔になったのでホッとしました(今考えればコーヒーぐらいご馳走するべきだったのに、頭が回りませんでした)。そしてしきりに「あなたの写真はアングルが良い」と言うのです。そうなのかなぁと思いましたが、誉められれば嬉しいものです。でもあとから気がつきました。ヴェニガーさんは背が高く、私は153センチ。見る角度は確かに違うし、撮影する角度ももちろん違うわけで、きっとそれが新鮮に見えたのではないでしょうか。

 旅の最後に訪問する予定のリービークハウス(フランクフルト)にいるシュテファン・ローラーさんとは連絡がついているのかと尋ねられ、手紙とメールで問い合わせたけれどお返事がいただけていないと答えると、「私から連絡を取るように伝えておきます」と言って、写してくださったのが下の写真です。三津夫はビールを少し飲んだので赤い顔をしていますが、二人揃ってこんなに笑顔で写っている写真は滅多に無いのでとても嬉しく思いました。

 再会を期して握手でお別れしました。ヴェニガーさんはあと2時間も車を飛ばすそうなので、夜中過ぎにお宅に着くのでしょう。本当にお疲れさまでした。

 

 ホテルのロビーでヴェニガーさんが写してくださった私たちの写真。


※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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