リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

143. 3冊目の写真集 ▶色校正

2018年06月29日 | 日記

▶色校正

梔、再び


 いよいよ色校正が始まりました。

 先週6月22日(金曜日)に富士美術印刷まで行ってきました。5年前に一度来ているにもかかわらず、道順もまったく覚えていなくて心細かったのですが、白石さんが西日暮里駅で待っていてくださいました。そのお顔を見てホッとしました。このあと午後まで一緒に色原稿を見てくださるそうです。

 富士美術印刷についてじきに何人もの方と名刺交換をしたので、どなたがどなたなのか目が白黒してしまいましたが、何度かお目にかかっている加藤さんは営業の方だったと、この日に初めて知りました。前回のブログで、加藤さんが画像を担当してくださっていると紹介してしまいましたが、富士美術印刷と丸善プラネットや他の会社との橋渡しをして活躍している方だったのですね。大変失礼しました。

 実際に色調整の難しい部分を担当してくださるのは大塚欣一さんでした。初めてお目にかかりましたが、私のいわんとすることをサッとのみ込んでメモをし、嫌な顔一つせずに注文を聞いてくださいました。白石さんも加藤さんも、あとで悔いが残らないように、何でも気がついたことは書き込んでおいてくださいと言ってくださったのです。ありがたいことです。雰囲気で面倒だと思っていたり、そこまで要求されてもと思われているのはわかるものです。でも、この富士美術印刷の方々はまったくそんな感じがなく、安心して大船に乗った気持ちがしました。

 用意してくださった色校正原稿は、私以外の人が見たら、多分十分美しく、彫刻の表情もよく出ていると思えるものだったでしょう。ただ、私としてはこの部屋の壁の色合いが同じように出て欲しいとか、金色が輝きすぎるからもう少し抑えたいとか、肌のきれいなピンク色が出て欲しいとか、大変欲張りなのです。でも、パソコンを見たらまた少し違っている可能性も高いので、大塚さんとの打ち合わせを終え、「原稿は送っても良いですよ」と言ってくださったけれど、自分で持ち帰ることにしました。

 お昼をいっしょにいただいたときに、白石さんが、「印刷するときも見てみますか?」とおっしゃるので、「え、そんなことできるんですか?」と驚いて聞き返してしまいました。「大丈夫だと思いますよ」とのこと。「それなら見てみたい!」という気持ちが入道雲のようにむくむく湧いてきました。ご用があって先に帰られた白石さんのことばを加藤さんに伝えてみたら、「う~~ん」と、ちょっと困った様子。多分大事な集中しなければならない作業の邪魔になるのではないのかなと思ったのですが、「今、見てみます?」と言ってくださったので喜んでついていきました。

 会議室とは別の大きな建物に入るとツーンとインキ(加藤さんはインキとおっしゃっていましたので私もそう書くことにします)の匂いがします。ドアを開けると大きな機械音。私は突発性難聴をわずらって後、左耳が良く聞こえないので、右耳だけが頼りなのですが、機械音で加藤さんの説明もやっと聞き取れるぐらい。それでも大体の工程は理解できました。インキには青のシアン、赤のマゼンダ、黄色のイエロー、そしてブラックの4種があることは家のプリンターで知ってはいたものの、機械の横にたくさんのインキの缶が積んであるのを見て驚きました。その反対側には音響調整をするような調整機があって、ここで色合いを調整するそうです。大きな紙が次から次へと機械の中に巻き込まれ、色がついていく様子が少し見えました。ここで働く方々は私を見ても邪魔者扱いせず、にこやかでした。普段からいい人間関係が紡がれているのだろうなぁと感じました。思いがけず印刷工場見学までできてしまったので、とても有意義な色校正でした。


 ただ、家に戻ってパソコンの色と比べたら、「頭の中の方が実際よりも緑色のイメージが強かったんだなぁ」とか、「この作品の後ろの壁は違う色だったじゃない!」と、冷や汗をかきました。やはり手元に基準の色見本がない状況での色のつき合わせは難しいものだと痛感しています。私の頭は、イメージが勝手に動き出す癖が強いのかもしれません。

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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142. 3冊目の写真集 ▶色校正が始まります

2018年06月20日 | 日記

▶色校正が始まります。


 梔(くちなし)

 

 いよいよ色校正が始まります。実際のプリントを見るのは22日です。

 色というものは持ち運びができません。私が使っているパソコン上の色合いを見て検討するのが一番良いのですが、私のパソコンは机の上にデンと構えた重たいデスクトップパソコンなので持ち運びは難しいのです。すでに3月時点でこのパソコン画面で調整したものを、これまた自分の思うようにコントロールできない家庭用プリンターでプリントアウトした見本に言葉を添えて送ってあることは以前にも書きました。

 その見本と、富士美術印刷のパソコンで取り込んだ画像データとをつき合わせて本番用の印刷をするという大変なお仕事をしてくださるのが加藤陽子さんです。私と白石さんが富士美術印刷に直接出向き、加藤さんの出してくださった印刷紙を拝見します。以前もイメージとしてしか伝え合えない色合いについて一生懸命応じてくれた加藤さんですから、今回も信頼してお願いしています。ただ、私が会社に出向いて見たとしても、家に持ち帰って自分のパソコンを開いて見比べた場合、必ずどこかに「もう少しこうして欲しい」という箇所が出てくるのは必至。ある程度の判断はできても、家でのチェックをしてからでなくては心から「これで結構です。お願いします」と断言できないのが苦しいところではあります。22日の段階でどこまで検討できるのか、少々心細いのですが、行ってみないとわかりません。


 そのために準備として一番良いのは同じような色合いの写真が見られる媒体で直接見比べられることだと思うので、色々トライして見ました。 

 まず、SDカードに、今回使用する画像をコピーしてカメラで見せてはどうかと試してみました。しかし、当然のことながら、RAW(生)データから起こした画像はカメラでは再現できませんでした。次に、色の気になっている画像を自分のスマホに送り、その色合いを見てみました。やはり同じような色合いになりません。その微妙な違いをことばや配色カードにつき合わせてメモしておきました。もちろん、既に加藤さんが参考にしてくださっている見本も一緒に見比べますけれど、もし、私の頭の中に「この色は何色系の何番だ」という科学的な数値に置き換えたデータがあれば一番良いのですけれど。専門家にはできるのでしょうか。色の判定のようなお仕事ってあるのかしらと、今さらながら思うようになりました。


 ここでそういう資格があるのか調べてみたら、色彩検定というものがあることがわかりました。娘も確かこんな内容のことを大学で学んでいたような気がします。基礎知識の足りない私が色について茫洋としたことばで説明しても難しいと感じたのも無理のないことですね。もっと早く気がついて勉強していれば、もう少し色彩について正確なことばで伝えられたと思います。

 私のスマホの画像では、マリアの顔色やキリストのからだが白くなりすぎる傾向がありますが、これをもう少しピンクが差したような色合いに…と言っても、その「もう少し」ってどのくらいかということになってしまいます。もしかしたらパソコンと同じ会社のタブレットだったら画像の色も同じように見えるのかしら…と思い始めましたが、何はともあれ遅すぎたということに今、気がつきました。

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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141. 3冊目の写真集 ▶本当に原稿すべてが揃いました

2018年06月11日 | 日記

▶本当に原稿すべてが揃いました


名前を知らない花


 以前、136で「準備万端整いました」と書いたのが恥ずかしいです。

 本文となるまえがき、目次、写真頁と資料編、あとがきについては早い段階でできあがっていたのですが、シャピュイさんの挨拶文、奥付のプロフィール原稿、本を開いて最初の扉裏にくるクレジットの文章、カバーの裏側、前の頁(業界では「そで」と言うそうです)に載せる短いメッセージ、そしてカバーの裏側、後ろの頁(業界では表4というそうで、どこのことを言っているのか白石さんに確かめるまでわかりませんでした)に載せる著者の写真とそのキャプションなどは翻訳に間違いがないかどうか確認したり、数少ない私の写真を一生懸命探したりして時間がかかり、6月8日の夜、本当にすべての原稿が揃ったのでした。

 今回のこうした細々とした原稿の中で何が一番苦労したかというと、私の写真探しでした。丸善プラネットのチームリーダー、白石さんからは、①私の顔が見えて、②撮影者だということが分かり、③リーメンシュナイダーの作品と一緒に写っている写真が一番いいのですが…と言われていました。ところがそういった場面はどんなに探しても無いのです。リーメンシュナイダーの作品を撮影している写真は何枚かあるのですが、いずれも横顔、後ろ姿、あるいはカメラで顔が隠れてほとんど見えないものばかりでした。何故かと考えたら、普段から私は自分が写る写真はあまり好きではないため、あえてリーメンシュナイダー作品の前でニッコリ記念撮影をするということがないからです。ツアーの旅行では景色の良いところでコンダクターさんが大サービスで写してくださった写真はありますが、取材の旅ではまったく感覚が違いますから。夫は私が美術館や教会の方々とお話ししている場面は記録に残しておこうと一生懸命写してくれますが、それ以外の場面では記念撮影をいやがる私を知っているのであまり写しません。

 というわけで、カメラを抱えている写真といえば、たまにそれでも夫があえて記念撮影してくれた数枚でした。しかし笑顔も少ないし、リーメンシュナイダー作品も写っていないし、なかなかピンとくるものがありません。最後の最後に出てきたのが、娘が2016年12月にクレークリンゲンのヘルゴット教会を一緒に訪ねた際、写したものがあると送ってくれた写真でした。トーマス・ブルク牧師さんが私の本を館内に展示してくれていて、その横で私が珍しくにこやかにほほえんでいるものでした。あいにく雨が降ってとても寒い日で、館内が暗かったため、スマホで写した画像は粗くなってしまっていましたが、白石さんも、「これでいきましょうか」と言ってくださってホッとしたのでした。 

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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140. 3冊目の写真集 ▶これでなんとか7合目

2018年06月05日 | 日記

▶これでなんとか7合目

 

 クレマチス


 5月29日、再校原稿が届きました。初校はたくさんの書き込みをしたので本当に読みにくくなってしまいました。公文さんにも石井さんにも、さぞ読みにくいだろうと同情したくなるほどごちゃごちゃさせてしまって申し訳ない思いでしたが、今回の再校原稿は相当すっきりして直しも大分はかどりました。そして、今日、6月5日、何とか全体をもう一度通して見直し、写真のカラーについての注文も入れて送り返しました。前回よりははかどったと思っていましたが、やはり正味1週間はかかるものなのですね。


 カラーについては、驚きの発見がありました。

 何と、昼間見るのと夜見るのとでは色が違うのですね。同じ白も、昼間はしっかり白く見えるのに、夜はややアイボリーに見えてくるのです。前回も色調整に配色カードを使って大体この色合いでと書いたのでしたが、そのカードを基準にと思っているのにW(白)が夜は白に見えないのですから。3月末に見本を作って送ったときに、「今回は大分思っていた色合いに近づけて印刷できたなぁ」と思っていたにもかかわらず、今回色のすり合わせのために送り返してもらった色見本を見直したら、「あれ? 何でこれでOKと思ったのかしら?」と不思議に思うことが何度もありました。「この色で良いです、これを見本に印刷も出してください」という写真には自分で☆印をつけておいたのでしたが、一致しないのです。でも夜になると良い感じに見えるので、これは日光の下で見るか、照明の下で見るかによる違いなのだなと初めて認識しました。多分、昼間見てもお天気によっても見え方が違うのだろうと推察できます。このところわりと好天が続いているので、写真も明るくきれいに見えていたかもしれません。あまりこだわっていたらきりがないものだということもわかりました。

 ただ、文字情報とデザインを確かめるための初稿、再校原稿ではありましたが、やはり全体的に赤みがかった写真が多かったので(これはまだ印刷会社の印刷ではないから本当の検討には使わないで欲しいと言われているものでしたが)、この赤みが取れていたらずいぶんイメージに近いんだけどなぁ…と思うことしきりでした。次回は試し刷りが出てきます。文章や情報の頁は大分整ってきたのでもう8合目まで来た感じがありますが、写真は今度色見本が出てきたら5合目ぐらいになるのかなと思っています。でも神経をずいぶん使って再校を終えたので、全体をまとめると7合目というところでしょうか。一歩一歩進んでいるという感じです。

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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