2016年・ドイツ14回目の旅 No.13
ブラウボイレンの修道院 近くには鶏が自由に歩き回っていました
▼シュトゥットガルト 10月21日~23日(2泊)
◆10月21日(金) はまったトランク 15249歩
携帯の目覚ましがまったく鳴らず(?)、三津夫が先に起きてつけた電気で目が覚めたのが6時40分。
昨夜持ち帰って啓子さんと分けたパンとソーセージで朝食を摂り、ヨーグルトを食べたら、もう柿を食べる余地がなくてお昼に持って行くことにしました。去年ヨーラとヘルヴィックが日本に来たときに柿を食べたことが無いと言っていたのですが、今回の旅先では結構大きな柿をあちらこちらで見かけたのです。留学したときには無かったので、柿を見かけると買いました。三津夫は小さい頃から木になっている柿を食べてきた人なので、「柿は買うものじゃない」と言いながらも啓子さんの前では黙っています。このあとの二人旅では一度も買いませんでした。三津夫が帰国した後は買いましたけれど。
いよいよ新しい真紅のトランクとの旅が始まります。
朝降っていた雨も小降りになり、駅までの道は軽々歩くことができました。列車は空席も多いのですが予約がほとんど入っていたので三津夫とは別々に座りました。今日はシュトゥットガルトまで行くのですが、1時間ちょっとのウルム中央駅で途中下車。三津夫の楽しみにしていたブラウボイレンの祭壇を見に行くのです。トランクをコインロッカーに入れたのですが、けい子さんの少し小さめのトランクと私のトランクを一つのロッカーに入れられると思った三津夫、いろいろ試しましたが無理でした。結局5ユーロずつコインを入れて一人一つずつ入れました。これが後の大騒動になるとも知らず、身軽になってブラウボイレン行きの列車へ。
ブラウボイレンでは空も晴れ、寒いけれども気持の良い小さな町並みを楽しみながら歩きました。修道院では残念ながら撮影禁止。ミッヒェル・エアハルト作の主祭壇は優しげなマリアが美しく、マリアに抱かれたキリストのほっぺも赤く染まって可愛らしい。厳かというよりは親しみを感じるような彫刻でした。撮影禁止でも写真を写している人がいて残念でした。でもできれば私もせっかく持って来た一眼レフで写したかった…。
ウルムに戻る列車までまだ時間があるので、隣にある小さなバート博物館にも入ってみました。1階はお風呂の博物館だったと思うのですが、3階まで上がると大きなソリやベッドがありました。でも窓も階段も狭くて、到底この大きさのものが外からでは入りません。「一体どうやってここまでこれを運び上げたのだろう」と3人とも興味津々。ところが時計を見たら大急ぎで戻らないと列車に遅れることがわかり、残念ながら謎を解明するには至りませんでした。
ブラウボイレンからウルムまでの乗車時間はたったの18分。その間に昼食をと思い、どこかで買っていこうかと思ったのですが、あまりお店がありません。啓子さんが「ここへ来る途中にパン屋さんがありましたよ」と教えてくれたので大急ぎでお昼を買いました。列車にはギリギリセーフ! さすがは「食べ物には目がない」と自称する啓子さんです。よくチェックしてくれていました。それでも列車の中だけでは食べきれず、ウルム駅のベンチで冷たい風に吹かれながら残りを食べました。
ウルムではまず大聖堂(写真・上)に向かいました。ここではハンス・ムルチャーの作品が有名です。中の座席にもミッヒェル・エアハルトが彫った半身像があり、写真を撮ろうと試みましたが、あまりにも暗くてうまく写せませんでした。ここには三脚が必携です。この大聖堂は世界一高い塔を持つ教会だそうですが、教会の周りが人間の立ちション(他になんという言葉を使ったら良いのやら)で傷んできているという新聞記事を読みました。悲しいことです。観光客も少なく、寂しい感じがしました。
次に大聖堂からすぐのところにあるウルム美術館に入りました。ここにも三津夫のお目当て、ミッヒェル・エアハルト作の聖マリア・マグダレーナ像があるのです。あまりゆっくりできないため、「この像を見たいのですがどこにありますか」と受付で尋ねたところ、なんと日曜日でないと見られないと言われてしまいました。展示が日曜日から始まるので、そこにあるのに入れない。これは辛いことです。啓子さんは明日東京に帰らなければならず、出直すこともできないので、なんとか見せてもらえないかと少し粘りました。すると、最初は無理だという感触でしたが、受付嬢が少し気持ちを和らげて係の人に話してくれました。背の高い女性が来て、やはり見せられないと言います。もう一度彼女に啓子さんが明日東京に帰るのでなんとか見せてくださいとお願いしてみました。すると「たたけよ、さらば開かれん」の通り、彼女の心のドアも開いてくれたのです。では入場券を買ってから来てくださいと言ってくれました。見られるのならと急いで切符を買い、ロッカーに荷物を入れ、大急ぎで受付嬢の教えてくれた方に向かいました。中は真っ暗で入り口には鍵がかかっていましたが、その女性が鍵を開けて、電気を付けてくれました。ようやく見られたのが聖マリア・マグダレーナの胸像です。髪の毛を覆う布、洋服の襞や模様も大変素晴らしく、皆大満足でした。
他の作品も見て回っているうちに段々列車の時間が迫ってきました。ところが何故か気の良いイタリア系のおじ様につかまってあれこれ日本に関する質問攻めにあい、なかなか放してくれません。最後は列車の時間だからと急いで逃げ出し、ウルム中央駅へ。
ここからがまた大変でした。そう、ロッカーに入れたトランクです。啓子さんのトランクがすっぽりはまり込んでしまって三津夫の力ではどうしても引っ張り出せないのです。シュトゥットガルト駅ではシルヴィアやクラウスが待ってくれているはずなので遅れるわけにはいきません。「お母さん、誰か探してきて!」と三津夫が叫び、急いで職員を探しに行くと、ちょうどホームで立ち話をしている若くて背の高い赤い帽子のお兄さんがいました。「すみません、力を貸してください!」と頼んでロッカーへ。怪訝そうについてきてくれた彼は、事情を察するとしゃがみ込んで力一杯トランクをまず床から引っ剥がして縦に向きを変え、引っ張り出してくれたのです。3人で大喜びして何度もお礼を言いました。そして無事、車中の人となった次第。
教訓:あまりぴったりの場所に重たい物を無理に入れないこと。
すぐ横に停まっている1本前の特急列車に飛び乗ることができましたが、既に満席でした。乗車時間は53分なので、荷物を納めてから食堂車に行ってみました。ちょうど一つだけテーブルが空いたので、そこに帽子やマフラーを置いて席を取り、二人を呼びにいってしばし休憩。なんと慌ただしい日だったことでしょう。それでも目的の作品は首尾よく見られて本当に良かったと話しながら二人はビールを、私は珈琲を飲んで過ごしました。早めに着くかと思いきや、シュトゥットガルト中央駅の近くでしばらくストップ。結局ほとんど予定していた時間にホームに入りました。下車するとヴィリーとクラウスがホームの端で待っていてくれました。3人のトランクを載せるには車1台では無理だと思ってのことでしょう。シルヴィアは中学校の先生をしているので、勤務先から自分の車でレストランに来るということでした。ヴィリーは啓子さんを、クラウスは三津夫と私を乗せてフェルバッハにあるレストランに向かいました。このレストランには何度も連れてきてもらっていますが、シュヴァーベン地方の食事を出してくれる美味しい店です。シルヴィアも合流して6人で楽しくおしゃべりしながらいただきました。
レストランを出ると、シルヴィアの車とクラウスの車に分乗し、ヴィリーとはお別れ。明日また会う予定でお休みなさいと挨拶を交わしました。
シルヴィアとクラウスの家には私も初めて入りました。手紙で写真を見せてもらってはいたけれど、庭付きで個室が3つあり、さらに居間とダイニングキッチンと
バスルーム。なかなか広いのですが、キッチンだけは細長くて出入りがきつかったのがちょっと残念でした。シルヴィアがおばあちゃんのレシピで焼いたチーズケーキを振る舞ってくれました。啓子さんにとっては初めてのドイツ人家庭での宿泊。明日、彼女は帰国します。
おばあちゃんのレシピで焼いてくれたチーズケーキ、美味しかった。 シルヴィア、忙しい中、ありがとう!
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