リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

349. 野村和子さんからの投稿「カタロニア北部・ロマネスク教会群への旅」

2024年06月16日 | 旅行

▶今回はリーメンシュナイダー友だちの野村和子さんからの投稿です。


この写真は野村和子さん撮影のサグラダファミリアです。

「サグラダファミリアの写真、皆さんが気に入ってくださるので、お裾分けいたします。
 高窓から入る自然光が虹色のステンドグラスを通して、天国のような空間を演出しているのです。ガウディは、この光を生み出すために、光学を学んだりして、天才ぶりを発揮しました❗️
ガイドブックには、混雑するから午前中に見てくださいと書いてありますが、この光の饗宴は、午後でなければ見られません。」という野村和子さんからのメールに添付で送られてきた写真です。


▶野村和子さんとは?

 和子さんとは2015年2月からのお付き合い。「クレークリンゲンのヘルゴット教会を訪ねたときに泊まれる宿を教えていただけませんか」というメールをいただいたのがきっかけでした。私が日本で初めてのリーメンシュナイダー写真集『祈りの彫刻 リーメンシュナイダーを歩く』を丸善プラネットから2008年に出版したのを読んでくださって連絡されたのだったと思いますが、もしかしたらもっと後の写真集だったかもしれません。とても嬉しくて近くの宿をお教えした記憶があります。

 その後、旅のコースについて相談を受けたり、私が実家に帰るときに通りかかる場所にお住まいの和子さんのお宅を何回か訪ねてはリーメンシュナイダーについてのお喋りを楽しんだり、写真展を開催するとお友だちと見にきてくださったりしたのでした。

 そんな和子さんから今年、素敵な旅をされたとメールが届きました。ロマネスク美術を訪ねて回った和子さんは何人もの天使に助けられたといいます。これは是非皆さんにも紹介したいと思って掲載のお許しをいただきました。以下にご紹介します。旅した場所はスペインのバル・デ・ボイだそうです。参考までにウィキペディアの記事のリンクを以下に載せておきます

バル・デ・ボイ - Wikipedia

バル・デ・ボイ - Wikipedia

 

 

 以下、和子さんからの投稿です。


◆カタロニア北部・ロマネスク教会群への旅(2024年4月15日ー23日)

                        野村和子 (フリーライター)

 ロマネスク様式は、11世紀後半から12世紀にかけて西ヨーロッパで広まった美術建築様式で、厚い石造りの壁と堅牢な構造を特徴としています。窓やドアは小さく、防御的な要素としても機能していました。石柱やアーチには、聖書の物語などを描いた精巧な彫刻が施されました。ゴシック様式の尖ったアーチとは異なる半円アーチを多用し、教会の正面入り口扉の上部にも彫刻が施されました。

 人里離れた修道院や小さな村の聖堂に至るまで、内部壁面には、聖書の物語や教義、動植物や幾何学模様などのフレスコ画が描かれました。一見ほほえましく稚拙にも見えるそれらの彫像や絵画は、各地の文化の豊かさ、深い宗教性を伝えてくれます。

 スペインのロマネスクは、800年続いたイスラム統治の結果、イスラム文化の影響を色濃く受けました。イスラム文化の装飾手法や空白を埋めつくす幾何学的造形などが加わり、他の地域には見られないエキゾチックな光彩を放っています。
(国立西洋美術館ロマネスク美術写真展カタログ、スペインロマネスクアカデミー・勝峰昭氏の論考などから抜粋)

 ***  

   スペイン、カタロニア州北部の山村には、世界遺産とされている9つのロマネスク教会があります。1987年、写真家の田沼武能氏はこれらの教会を撮影し、写真集『カタルニア・ロマネスク』を出版なさいました。当時それを見た私は、いつかこの教会群を見たいものだと、漠然とながら願うようになりました。

 2020年の初めには具体的な旅行計画を立て、フライトとホテル、バスまできっちり予約を済ませたところ、コロナウイルスの世界的パンデミックのため、4月には渡航禁止となってしまったのです。その後も、いつかは必ず行くのだと思いつつ月日が流れていきました。

 2023年の暮れ、私は不覚にも路上で立て続けに3回も転んで、右脇腹の肋骨を1本折ってしまいました。初めての骨折で、さすがに自分の老化を実感した次第です。こんな調子では間もなく海外旅行に行けなくなる、との危機感を持った私は、今年(2024年)こそ、懸案事項だったスペインに行こうと思いました。4月には主人がドイツとスイスに9日間出張することがわかりました。85歳の主人を、一人留守番させて海外に行くのは無理だと思っていた私にとって、千載一遇のチャンス到来です。

 こうして4月15日から23日までの旅行計画を立てました。円安のため、ホテル代は4年前に計画した時と比べて2倍です。ただ、フライトはコロナ蔓延当時と比べて値段が少しは下落しており、最安値のエミレーツ航空にしました。

 バルセロナは治安が悪く、特に地下鉄では、旅行者はひんぱんにスリやひったくりの被害を受けているとの報告があります。一人旅の私は大いに気を付けなければなりません。でも、それにも限界がありますから、神様に守っていただこうと思いました。

 
 聖書(詩篇91篇10節)にはこうあります。

「禍はあなたに臨まず、悩みはあなたの天幕に近づくことはない。これは主(神)があなたのために天使たちに命じて、あなたの歩むすべての道であなたを守らせられるからである。」

 この聖句を旅日記に貼り付けて出発しました。

 ***

 ロマネスク教会が点在しているのは谷間(バル・デ・ボイ)のいくつかの集落で、人口は全部集めても1000人余りです。村の民宿で2泊しました。過疎地帯ですから、小中学生は一日一往復のスクールバスで30分かけて町の学校に通います。このバスには、一般の人も有料で乗せてもらえます。

 2日目は1380メートルの山村に建った教会に、歩いて登ることにしました。スタート地点がすでに1000メートルくらいあるし、1時間余りで着くと書いてありましたから。ところが半分まで登ったものの、どうにも疲れて道端の石に座っていたら、軽自動車に乗った壮年天使がやってくるではありませんか。手を挙げると停まってくれて、何も言わずに教会まで連れて行ってくれました。その村には人の気配がなく、商店もタクシーもないので、帰りは同じ山道を歩いて下り始めました。でもやはり30分ほどで疲れ果てて座り込んでいたら、2人目のワーキングウーマン天使登場‼️麓まで乗せて行ってくれました。
 3つの教会を見た後、宿まで30分の道を歩き出したものの、きつい登り坂でやはり疲れはてました。それで、やってきた小型車に手を挙げたら、小学生の息子さんを連れた30代のお父さん天使が停まってくれました。私の宿の近くに住んでいるとのことで、宿のそばまで連れて行ってくれました❗️
 極めつけは3日目の金曜日。スクールバスに、今日は子供たちが一人も乗らない日だったらしく、私が1分早くバス停に着いて手を上げていれば停まってくれたのに、誰も乗る人がいないと思った運転手さんは、私の10メートル先をさーっと通り過ぎてしまいました。Oh my God!次の集落まで30分歩いて、電話でタクシーを頼むしかないと思いつつも、たしかその村は昨日ひとっ子一人見たことがなかった。果たしてタクシーなんて頼めるのでしょうか? 車が2台通ったのでヒッチハイクを試みたけど停まってくれず、暗澹たる気持ちになりました。

 ところが3台目の車に手を挙げると、停まってくれたのです!今度はサングラスをかけた太めのマダム天使で、英語が上手です。途中の町で息子さんとお店を経営しているとのこと。マダムはその日、バルセロナ行きのバスが停まる町に仕事で行くそうです。私はその町にスクールバスで行く予定でしたから、なんて好都合なのでしょう。神様とそのマダム天使に大感謝しました。もし彼女がいなかったら、旅行計画は大幅に狂ってしまうところでした。

 こうして世界遺産の教会群9か所のうち、公開している6つの教会を見終えることができました。10~11世紀に、このような教会に集っていた村人たちの素朴な信仰を思いました。

 教会の壁画はどれも傷みが激しいので、修復保存のため20世紀の初めにバルセロナのカタルーニャ美術館に移しました。今現地にあるのはすべてレプリカです。村人たちは、当然ながらそのことをとても寂しく思っているそうです。

 ***

 今回の一人旅を振り返ってみるとき、私はバルセロナでスリなどにも会わずにすんだし、聖書が約束したように、確かに、何人もの天使たちが私の足を守ってくれたことを実感した次第です。

 なお、世界遺産に指定されている9つの教会名と場所は下記になります。
Taull(タウイ)地区
     〇 Sant Climent de Taull(サン・クリメント教会)
     〇Santa Maria De Taull(サンタ・マリア教会)
Boi(ボイ)地区
     〇Sant Joan de Boi(サン・ホアン教会)
Erill la vall(エリル ラ バル)地区
    〇Santa Eulaliad’Erill la Vall(サンタ・エウラリア教会)
Barruera(バルエラ)地区
  〇Sant  Feliu de Barruera(サン・フェリウ教会)
Durro(ドゥーロ)地区
     〇 La Nativitat de Durro(ラ ナティビタ デ ドゥーロ)教会
   L'ermita de Sant Quirc de Durro(サント・キルクの庵)
Cardet(カルデト)地区
  Santa Maria de Cardet(サンタマリア教会)
Coll(コル)地区
  Santa Maria de I' Assumpcio de Coll(聖母被昇天聖堂)

〇は現在公開している6つの教会。

  下記、現地のロマネスクセンターのサイトを開くと、日本語でこれらの教会についての情報を得ることができます。 Centreromanic.com
  とにかく交通不便な場所ですから、出かける前に野村にお声をかけてくだされば、バルセロナからのバスの時刻表などもお知らせできます。


▶何と素敵な旅だったことでしょう!

 和子さんは無事に6か所の世界遺産の教会を見て回ることができて何よりでした。

 連れ合いと私はドイツ後期ゴシックの彫刻を訪ねられるところはほぼ訪ね歩き、次はどこへ行こうかと考えているところですが、ロマネスクに強い興味を持ってカタログを眺めている我が連れ合いは、今後はロマネスク彫刻を見て回ると意気盛んです。和子さんが訪ねた場所を私たちもいずれ訪ねるかもしれません。その時は良い宿などお教えいただこうと思っています。でも日程的・体力的に難しければ是非カタルーニャ美術館には行ってみたいものです。

 私たちの旅でも度々「お助け人(びと)たち」(=和子さんの「天使たち」)に恵まれてきました。こうした旅は忘れられませんね。これからもどうぞ良い旅を!

※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015-2024  Midori FUKUDA

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