リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

324. 18回目のドイツ旅行(4) 家族6人旅 フランクフルト空港からミュンヘンへ

2023年12月12日 | 旅行

▶フランクフルト空港で息子一家と合流してミュンヘンへ

 


アルトエッティング、聖フィリップ・ヤコブ  カトリック教会 
 アルトエッティングの
扉のマイスター 1518年~20年頃

▶真夜中にたどりついたミュンヘン中央駅

 8月11日。アイゼナハからやってきたフランクフルト空港。12日前にフランクフルト空港から入国したばかりなので、今度は迷わずに行けるだろうと考えて、遠距離列車ホームの上で連れ合いにトランクを預け、私1人で第1ターミナルまで迎えに行きました。ところが一歩外に出たらすでに来たときとは景色が変わっていて面食らいました。確かに大きな工事中ではあったのですが、この前下車した場所でバスに乗ろうと思っても、その乗り場が見つけられず心細いことったら…。無事に戻って来られるようにスマホで撮影しながらやっとバスに乗り込み、なんとか第一ターミナルに着きました。息子一家が乗った飛行機は到着時にトラブルがあって一度やり直したとかで、予定より大分遅れていました。息子と連絡を取り合いながら待っていると、ようやく孫の顔が見えてホッとしました。皆疲れた様子です。取りあえず空港の長距離列車ホームに戻るのですが、またまた前回乗ったエレベーターが見当たりません。我ながら記憶力と位置情報の弱さには参りました。
 何とか遠距離列車ホームにたどり着き、三津夫と合流。息子一家はライゼツェントルムにドイツ鉄道パスのバリデートをしてもらいに行きました。でもなかなか戻ってきません。せっかくミュンヘンまでの列車で6人分の座席指定をしてあるのにその列車に間に合うかどうかギリギリです。息子が呼びに来たので私も駆けつけ、若い車掌にバリデートしてくださいと伝えても「バリデートって何ですか?」ときょとんとしているのです。「今日からこの鉄道パスを使うので、彼らのパスポートを見て確かめたらここに判を押してください」と説明しても、どうしたものかとおろおろ。離れた席の先輩のところにいってお客さんの対応が途切れるまで待ってやっと作業の確認ができたようで戻ってきました。私のイライラは爆発寸前。「2~3分もあれば終わる作業が何でわからないのか?」と。最近はデジタルの鉄道パスがほとんどで、担当の若者は紙のパスを見たことがなかったのかもしれません。やっとバリデートを済ませ、三津夫と一緒にトランクを持ってホームに下りたら結局予定の列車は既に出発した後。ガッカリしました。こんなときは「いつものように遅れてきてくれたら良かったのに」と思ってしまいました。
 仕方がないので遅めの夕食を買い出しにいき、次にミュンヘンまで直行で行ける列車を待つことにしました。フランクフルト空港からミュンヘンまでは3時間35分かかります。到着はほぼ真夜中になりそう。幸い次の列車で隣同士の空席があって座ることができました。何とか買って来たパンで食事をしたあと、孫たちは丸まって眠りこけていました。やれやれ…。

 ミュンヘン中央駅では、すぐそばにあるはずのホテルなのに暗くてなかなか入口を見つけられず、スマホでここしかないはずだと工事中らしき囲みの中に踏み込んでみたら、なんとそこがホテルの入口だったのでした。翌日は息子一家は日本語ツアーを予約しているので、彼らの朝食だけはホテルに申し込み、私たちはゆっくり別行動することにしました。お疲れさま!


▶アルトエッティングの大天使ミカエル像

 8月12日。7時45分にツアーに無事合流できたと息子から連絡があり、ホッとして私たちはパンを買いに行きました。その時に気が付いたのですが、ホテルのドアには薄い文字で名前が書かれていました。だから昨夜は見えなかったのですね。
 アルトエッティングには「アルトエッティングの扉のマイスター」と呼ばれる彫刻家が彫った教会の入口扉(トップ写真)があり、いつか見に行きたいと思っていました。
 アルトエッティングの駅前は静かでしたが、教会まで行くと結構観光客もいて賑わっていました。特に教区教会にある黒いマリア像が有名らしいのですが、堂内ではミサをしていたので中には入れませんでした。その後で訪ねた聖フィリップ・ヤコブカトリック教会でようやく長いこと見たいと願っていた扉彫刻を拝観することができました。

 この教会は大きく、見応えがありました。その中で見た大天使ミカエルの写真を載せておきます。


アルトエッティング、聖フィリップ・ヤコブカトリック教会 大天使ミカエル像


 それにしても今回の旅ではいつも以上に聖ゲオルク像に出会ってきたような気がします。聖ゲオルクの闘う様子にも様々あり、竜の風貌も大きさもずいぶんと違うものです。一方でこの教会のように大天使ミカエルがやはり竜退治をしている像もあり、聖ゲオルクの場面と大天使ミカエルの場面では竜退治の意味がどう違うのかといつも迷っていました。そこで、この項を書く前に検索をかけてみたところ、
ある文献が出てきました。それは何と植田重雄先生の書かれた「早稲田商学第333号(平成元年2月)ドイツ・スイスにおける年間民俗行事研究」でした。平成元年といえば1989年、今から35年も前のことです。植田先生が早稲田大学を定年・退任されて後の研究論文のようです。
 全部で90頁という長い論文ですが、その中の11頁に第二章として「竜退治の聖ゲオルクの展開」が、19頁には第三章として「守護天使ミカエル」がまとめられていました。

 第二章「竜退治の聖ゲオルクの展開」では、元々人類の原初の時代から爬虫類との闘いがあり、世界中のあちらこちらでそれぞれの王や聖者、英雄たちと龍(場合によっては蛇、鰐、鯨など)との闘いの伝説が語り継がれているそうです。
 さらに、第三章は「地上のもろもろの悪にたいし、闘う守護聖者ゲオルクがこの世界に存在しているように、天上には天上の悪と闘う守護天使ミカエル(Michael ミヒャエル)がいる。」と始まります。そして24頁では、
「龍として象徴される荒々しく混沌として無秩序なもの、あるいは闇と闘い、これを制圧する光と正義、秩序を実現しようとする存在が、守護天使聖ミカエルであり、守護聖者聖ゲオルクである。ミカエルが天の叛逆者を制圧しているのに対して、ゲオルクはこの現世の悪逆にたいして正義を守る存在である。両者が相応じていることによって、ヨーロッパのキリスト教文化は保持されていると考えられる。」とまとめておられました。様々な例を挙げ、聖ゲオルクや、彼と同じように殉教した聖セバスチアンが、民衆を疫病や災いから守ることのできる守護神になっていく様子なども詳しく書かれています。何回か読み直すともっと理解が進むかと思いますが、今回は聖ゲオルクと大天使ミカエルの竜退治の場面に絞ってここに抜き書きさせていただきました。
 ※植田先生はタイトルの「竜」と違う「龍」の文字を文中では使われていましたのでそのまま書き写しました。

 今まで両者の関係がよく掴めずにいた私は、先生のこの論文のおかげで、同じような竜退治の場面が描かれていても、天上の守護天使ミカエルと地上の聖ゲオルクの違いが納得できるようになりました。

 ここまで書いたところで三津夫に論文のことを報告すると、本棚から『守護聖者──人になれなかった神々』(植田重雄著 中公新書)を取り出して「この本を見れば簡単にわかるのに」と言われてしまいました。植田先生は論文をちゃんとこうして2年後に出版していらしたのですね。どうも私が三津夫に頼まれてアマゾンで買った本らしいのですが、読んでいなかったので完全にすっぽ抜けていました。失礼しました。まずは我が家の図書管理者に聞けば良かったと反省しています。


▶夜は皆でミュンヘンのビアホールへ。

 この日の夜はノイシュバンシュタイン城ツアーから戻ってきた息子一家と合流してミュンヘンでビアホールに行くことにしていました。ただ、ドイツの人々は外ではタバコを吸うことが大変多く、私は安心して食事ができませんし、孫たちにもよくありませんので、早めに室内の席を予約したいと思っていました。そこで午後は三津夫と下見にあちこち回りましたが、評判の良さそうなビアホールは既に満席。最後にマリエン広場の市庁舎地下にあるラーツケラーに入ってみたところ、「予約は必要ありませんよ。いつでもどうぞ」と言われ、半分安心しつつも半分不安でした。

 まだ時間があったので、ライプツィヒと同じようにミュンヘン中央駅でもライゼツェントルムに行き、6人分の座席指定をした列車にバリデートの時間がかかったため乗れなかったと訴えました。でも今回は冷たい顔をした男性で「返金はできません」とにべもありません。そこで「フランクフルト空港駅で鉄道パスのバリデートの仕方がわからない担当者がいること自体がおかしい。きちんと教育するよう是非伝えてください」と切り上げました。ついでにライプツィヒでもらっていた Gutschein 20 ユーロ分を元に明日の地下鉄やバスを乗るのに使えるバイエルンチケットを買いました。

 夕方、無事にツアーから「楽しかった」「きれいだった」と帰ってきた息子一家と再びマリエン広場に行きました。パンダのぬいぐるみと一緒に写真を撮ったり、ちょうど回り始めたからくり時計を見上げたりしてからラーツケラーに下りました。入口付近は満席でしたが、どんどん奥へと案内され、ちゃんと6人で丸いテーブルを囲むことができました。息子一家もおおいに飲んで食べて、皆満足したようでした。


▶今日も別行動でラーマースドルフに向かいました。

 8月13日。この日は息子一家はギュンツブルクにあるレゴランドまで列車で出かけました。1日遊び倒すのだそうです。とても私たちはつき合いきれないので、こちらは地下鉄に乗ってミュンヘン近郊のラーマースドルフへ。
 ラーマースドルフのマリア被昇天カトリック巡礼教会ではグラッサー工房作の磔刑祭壇を拝観。厚手の塗りのせいもあるかもしれませんが、あの躍動感あふれるモーリス・ダンスの踊り手たちに較べ、ぐっと感情を抑えた静かな磔刑群像でした。


ラーマースドルフ、マリア被昇天カトリック巡礼教会 
 エラスムス・グラッサーとその工房 磔刑祭壇 1482年頃                                   



 その後、市内に戻ってからバスに乗ってバイエルン国立博物館へ。日曜日は入館料が1ユーロです。ヴェニガーさんはお忙しいので後日会うことになっていましたから、私たちだけでゆっくりと館内を巡ると、今までは見ていないと思われるハンス・ムルチャーの作品が数点まとめられていました。

 明日は家族旅行第二の宿泊地、ローテンブルクに向かいます。

※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015-2023  Midori FUKUDA

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