リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

253. ドイツのニュース FRANKFURTER ALLGEMEINE ZEITUNGより

2021年05月22日 | 彫刻

▶2月に届いていた記事が今、光を放ちます。


フランクフルトのトーマスが送ってきてくれた新聞記事


▶FRANKFURTER ALLGEMEINE ZEITUNG 2021年2月17日の記事です。

 去年の10月までは、ヴュルツブルクのペーターがいつも最新のニュースを送ってくれていましたが、彼が亡くなってからヴュルツブルクの動きがあまり見えなくなっていました。ところが、フランクフルトの郊外に住むトーマスが、2月にこんな記事を送ってくれていたのです。私は途中まで読んで自己流で翻訳していたのですが他の用事で忙しくなってしまっていつか忘れていました。

 ところが、5冊目の本を書くに当たってみんなに紹介したい美術館や教会を写真入りでまとめるという私の分担のために、たまたまバイエルン国立博物館のホームページを検索していたところ、何やらYouTubeのアドレスが紹介してあるので一つ開けてみたのでした。すると、ティルマン・リーメンシュナイダー作の彫刻、使徒ヨハネが写っているではありませんか。しかも、あのヴェニガーさんが説明しているのです! あわてて聞いてみるとドイツ語の早さについていけなくて十分はわかりませんでしたが、現在バイエルン国立博物館ではリーメンシュナイダーとシュトースについての展覧会を開催しているらしい。しかもあのシュトースが絵を描いている?? そしてその絵が何とミュンナーシュタットの聖マグダレーナ祭壇にあるというのです。「え~~~!」と叫びたくなりました。

 私はミュンナーシュタットという小さな町にある聖マグダレーナ教会を3回訪ねたことがあります。

  一度目:2000年 8月23日 奈々子と三津夫と3人  時間が無くなってタクシーで。
  
二度目:2010年 6月 3日 奈々子と2人      電車を乗り継いで。
  三度目:2016年10月13日 箭本さんと三津夫と3人 電車を乗り継いで。

 でもファイト・シュトースの祭壇画については全く認識していませんでした。多分教会のパンフレットもなかったのだろうと今ファイルを調べたところ、なんとなんとちゃんとパンフレットも買ってきていましたし、表紙にも一部、中を開いたら4枚全部、シュトースの祭壇画が出ているではありませんか! しかも教会内のどこにあるかまでピンクのマーカーで印を付けてある…。

 こんな大事な情報がありながら、頭の中からきれいさっぱり落っこちていたのですね。あぁ、恥ずかしい! 本当に勿体ないことをしました。せっかくの撮影チャンスをみすみす逃してしまったなんて。私は一度も彼の祭壇画を見た記憶がなく、写真も撮っていませんでした。リーメンシュナイダーの祭壇はもちろん写しましたが、2010年に三脚は使用禁止、画像も自分の研究だけにと厳しい顔で言われたので祭壇全体の詳細が写せていません。おぼろげながらの全体像は写真展でパネルにしたのですが。

 そんなわけで聖マグダレーナ教会の画像はインターネット上に無断で載せるわけにいきません。でも教会パンフレットの表紙はコピーして載せても大丈夫と判断して載せます。4枚の写真の右下が他には見つからないというファイト・シュトースの唯一の祭壇画です。

 


聖マリア・マグダレーナ教会のパンフレット

 

▶それでは新聞記事の内容とは?

 この何日間か、あのトーマスが送ってくれた記事がこの展覧会のことだったのだと気が付いて、再び新聞記事にかじりついていました。何といってもバイエルン国立博物館のYouTubeで刺激を受け、シュトースが描いたキリアン伝説とは何か、その内容をとても知りたかったからです。シュトースが描いた4枚の絵が意味するところもきちんと掴みたかったのですが、やはり私のドイツ語力では詳細まで訳すことができません。今日発見した教会パンフレットと合わせて近々大まかな内容説明を載せるつもりです。もうしばらくお待ちくださいね。

※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015-2021  Midori FUKUDA

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205. 今日は棚田康司さんの彫刻をご紹介します。

2020年01月18日 | 彫刻

ちょっと日本の話に戻ります。



子の子 樟材にオイル、樹脂 2019


◆棚田康司さんの作品展「鎮守の森の入口で」

 昨年の写真展でギャラリートークのゲストとしてお迎えした棚田康司さんの作品展が、茨城県笠間市にある常陸国出雲大社境内桜林館で2019年10月20日から2020年1月13日まで開かれていました。一度しっかり棚田さんの作品を間近に見てみたいと思っていたのですが、写真展後の片づけや年末・年始の慌ただしさに紛れて気がついたら翌日は最終日。慌てて列車の乗り継ぎを調べ、1月13日の朝8時半に家を出ました。常陸出雲大社に着いたのは乗り換え時間もかかったので、もうすぐお昼という頃。暖かい日差しの中を歩くと汗ばむぐらいでした。

 棚田さんの作品は『たちのぼる。』(青幻舎 2012年発行)で写真を拝見していたのと、昨年の9月に平櫛田中彫刻美術館で2体拝見していたのですが、今回は13体の実物をじっくり拝見することができました。トップ写真の「子の子」(何と読んでも良いそうです。私は「ねのね」と読みました。)は、棚田さんの作品としては珍しく笑顔の少年のように見え、髭のラインを見ていると何となく楽しい気持になりました。

 下の写真の「箱から出ていく彼女の像」は、前から見たものと後ろ姿が全然違うイメージで不思議です。前からの写真では神様の手で頭を撫でられているようにも見えます。後ろから見ると、まるで流れるような彼女の毛に見えます。この箱から出て、彼女は一体どこへ行こうとしているのだろう…と不安を感じます。



箱から出ていく彼女の像
 像:樟の一木造り オイル、銀箔
 箱:樟材、銀箔、コーチスクリュー
 2019

 

 これらの作品の中には樹齢1500年ほどの檜のご神木から彫られたものがあると伺いました。普段使っている素材とは、やはり彫る感覚が相当違うものなのでしょうか。素晴らしい機会に恵まれたのだなぁと思いました。

 


12のトルソ - No.1  不安少年のトルソ
  マンゴー材に彩色、銀箔 2016

 


つづら折りの少女 樟材に彩色 2019

 


白の斜像 檜材の一木造りに彩色 2018

 


12の現れた少女たち No.1 檜材に彩色、銀箔 2016

 


鏡の少女 檜の一木造りに彩色、銀箔、鏡 2017

 


マントの少年 - 日本の場合 -   檜の一木造りに彩色 2015

 


12の現れた少女たち No.4 檜材に彩色、銀箔

 

 『たちのぼる。』の作品は少年、少女の不安で繊細な表情が多く見られましたが、このギャラリー桜林ではもう少し意志の強さを思わせる作品が増えたような気がします。一作目を見て思わず写真を撮りたくなってしまいました。会場の方に尋ねたら「どうぞ」ということでしたので、じっくり撮らせていただきました。撮っている間に段々楽しくなってきて、彫刻たちの表情から不思議で繊細な感覚と、大きなエネルギーをもらいました。皆さんはどのように感じますか?

 棚田さんにご了解をいただいたので、ここで紹介させていただきました。ありがとうございます。 
 ただ、何点か作品名を写し忘れてきたようで、載せられなかったのが残念です。

 次回からまた16回目のドイツ旅行に戻ります。

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120. 「追いかけ人(びと)」18年間を振り返る No.9

2017年10月21日 | 彫刻

美しい彫刻たち その4


        


 この作品は、やはりボーデ博物館にある美しい彫刻の一つです。「悲しむ聖母」というタイトルで、ボヘミアの作家(名前はわかりません)による1380~1390年の作品だそうです。モデルがいたのかどうかわかりませんが、私のフランス人の友だちとよく似ています。この聖母は、まだどこかあどけなく、ふっくらしたあごの辺りに若さと可愛らしさを感じさせます。そして、どこか悲しみを超越した深さを感じます。リーメンシュナイダーの聖母が持つ雰囲気に少し似ています。けれどももっと柔らかく、暖かい雰囲気を持っています。石彫ですが、頭にかぶっているヴェールと衣服の襞はとても丁寧に彫られていて、このボヘミアの作家の力量も大変なものです。彼女の様々な角度から見た写真を載せておきます。


          


        

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119. 「追いかけ人(びと)」18年間を振り返る No.8

2017年10月14日 | 彫刻

美しい彫刻たち その3


         


 このモニュメントは「平和の天使のモニュメント」と言うそうです。ミュンヘンのバイエルン国立博物館からシュトゥック美術館に向かう途中、プリンツレゲンテン通りにある公園で見かけたものです。このモニュメントの下に8体の女性像が四方を見ながら中のモザイク画を守るように立っています。モザイク画とこの女神像と思われる彫刻の対比が美しく、とても印象に残ったので急いで写しました。表示を写すゆとりもなかったのでこの8体の像やモザイク画のタイトルも作者もわからないのですが、この像の太い足にたくましさを感じます。今度ここを通る機会があったら、解説も読み解きたいと思います。以下にこの台座の四方向からの写真を載せておきます。


    


    

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118. 「追いかけ人(びと)」18年間を振り返る No.7

2017年10月07日 | 彫刻

美しい彫刻たち その2

 

      

 

 この彫刻は、ウィーンの美術史美術館に展示されている「婦人の胸像」です。絵葉書によると15世紀の後半四半世紀に作られたようです。作者はFrancesco Laurana (1430年-1502年3月12日より前に死亡)、リーメンシュナイダーより少し若い作家で、クロアチア出身と書かれています。主にナポリ、フランスで作品を残した作家のようです。この日はなぜか解説カードを写し忘れてしまったので、女性の名前など、詳細がわかりません。

 この女性は、高貴な地位にある人のようです。こうした気品を作品で表現するのはとてもむずかしいだろうと思うので、何度もこの彫刻の回りを巡ってしまいました。特にちょっと下を向いているまなざしは、周りの人を寄せ付けない雰囲気を持っています。背中にも意志の強さを感じます。


   

 


    

  正面の写真は、もう少し上から写すともっと素敵に撮れたと思います。 

       

   

 彼女と対峙すると、自ずと背筋をしゃんと伸ばしたくなる作品です。

 この女性は誰なのか気になったので画像検索してみたところ、ルーブル美術館やイタリア、パレルモのシチリア州立美術館にも似た表情の胸像があり、この像の女性はレオノール・デ・アラゴンだとわかりました。Wikipediaでは以下のように書かれていました。

 

********************

レオノール・デ・アラゴンは、ポルトガル王ドゥアルテ1世の王妃。 アラゴン王フェルナンド1世と妃レオノール・デ・アルブルケルケの娘として生まれた。 1428年9月、ドゥアルテと結婚した。9子をもうけたが、成人したのは5人である。

生年月日:1402年5月2日
生まれ:スペイン メディナ・デル・カンポ
死亡:1445年2月19日、スペイン トレド
配偶者:ドゥアルテ1世(1428年から)
子供:・アフォンソ(1432年 ー1481年)
    ・フェルナンド(1433年ー1470年) ヴィゼウ公。マヌエル1世の父
    ・レオノール(1434年ー1467年) 神聖ローマ皇帝フリードリヒ3世皇后
    ・カタリーナ(1436年ー1463年) 尼僧
    ・ジョアナ(1439年ー1475年) カスティーリャ王エンリケ4世の2度目の妃

 1438年にドゥアルテが黒死病で急逝する。生前に夫から摂政就任を依頼されていたレオノールは、幼王アフォンソ5世の摂政就任を宣言する。しかし、彼女が外国人であるためポルトガル国内で人気がなく、王弟コインブラ公ペドロが人望を集めていた。バルセロス伯とリスボン大司教の干渉、長女フィリッパが9歳で夭折、遺児ジョアナの出産など、出来事が相次ぎ、数ヶ月たっても摂政が決まらなかった。

 コルテスが招集され、すぐにコインブラ公単独の摂政就任が決定された。これに不服なレオノールはなおもコインブラ公追い落としを画策するが、1440年年にカスティーリャへの亡命を強いられた。彼女はでトレドで亡くなり、バターリャ修道院に葬られた。

***********************

 

 記録に残るような家に生まれた人たちは、ずいぶん大変な歴史を担って生きていたのですね。ルーブル美術館の解説では、

 Bust of a princess, usually identified as a posthumous portrait of Infant Leonor of Aragon, on the basis of the funerary portrait now housed by the Galleria Nazionale della Sicilia at Palermo. Marble, ca. 1471.

となっていました。  ※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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117. 「追いかけ人(びと)」18年間を振り返る No.6

2017年09月30日 | 彫刻

美しい彫刻たち その1

 

                 

        フアナ1世(ナバラ女王) (石灰岩) 1305年頃、パリ (作者名は書かれていません。) 


 ◆しばらくの間リーメンシュナイダー関係から離れて、美術館、博物館などを訪ねたときに撮影してあった彫刻の中でも忘れ得ぬ美しさを持った作品たちを紹介していきたいと思います。


 今日ご紹介する彫刻は、2年ほど前にボーデ博物館のユリエン・シャピエさんから『Auf den Spuren einer vergessenen Königen (忘れられた女王の足跡?)』(Robert Suckale、MICHAEL IMHOF VERALAG)という本をいただき、今度ボーデ博物館に行ったら是非見てみたいと思っていた作品です。この写真は、2016年11月にベルリンのボーデ博物館を訪ねたときに撮影したものです。

 このフアナ1世を実際に見たときに、とても美しいと思いました。そしてリーメンシュナイダーより200年前ぐらいに、既にこのような気品のある女性像が彫られていたということに感銘を受けました。服の襞も流れるように折り重なり、プロポーションも姿勢も自然です。きっと腕の立つ彫刻家が彫ったに違いありません。


          

 

 でもフアナ1世というのはどういう人なのか、またどういう意味合いで教会のようなものを手に載せているのかわからず調べて見たところ、日本語のWikipediaでは、以下のように書かれていました。

*******************************

 フアナ1世(スペイン語:Juana I、1271年4月17日-1305年4月4日)は、ナバラ女王およびシャンパーニュ女伯(在位:1274年-1305年)。シャンパーニュ伯としてはジャンヌ(フランス語:Jeanne)。エンリケ1世とその妃ブランカ(ブランシュ・ダルトワ、ルイ9世の弟・アルトワ伯ロベール1世の娘)の一人娘。後にフランス王フィリップ4世の王妃となった。

 1274年、父王エンリケ1世(シャンパーニュ伯アンリ3世)の死去により王位と伯位を継承した。幼少だったので母親が摂政として政務を執ったが、幼い女王に女性の摂政、さらに相続人の少なさといった点がナバラ内外の対立勢力に付け込まれることとなった。そこで母子はフランス王フィリップ3世に庇護を求めた。1284年8月16日にフアナは王太子フィリップ(後のフィリップ4世、ナバラ王としてはフェリペ1世)と結婚して共同統治を行ない、以後およそ半世紀にわたってナバラとフランスは同君連合となった。フィリップとの間に、ルイ(スペイン語名ルイス、後のルイ10世)、フィリップ(フェリペ、後のフィリップ5世)、シャルル(カルロス、後のシャルル4世)、イザベル(イサベル、イングランド王エドワード2世妃)らをもうけた。

  1305年にフアナは死去、セーヌ左岸のコルドリエ修道院(フランス語版)に埋葬された。フアナの死因はその状況が不可解なものだったため、フィリップ4世によって暗殺されたのだと主張する歴史家もいる。

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   となると、この手のひらの教会のようなものは、コルドリエ修道院を意味するのかもしれないと思ってしまいますが、まったくわかりません。3歳で即位させられ、10歳で結婚させられ、4人の子供をもうけて謎の死を遂げたのは34歳という若さ。この彫刻が1305年頃の作というのは彼女が亡くなってすぐですから、よほど慕われていたのか、悲劇の女王として歴史に残る女性だったのでしょうか。歴史に疎い私は、彫刻を見てからどんな人なのかと調べたくなり、初めて彼女のことをほんの少しだけ知った次第です。それにしても700年ほど前の人で、生まれた日も、結婚した日も、亡くなった日もわかっているというのに驚きました。

 きっとこれから先、こんなポーズの彫刻や絵画を見たら、フアナ1世かどうか、いつ頃の作品なのかを確かめてみたくなると思います。もし、もっとフアナ1世について詳しくご存じの方がいらしたら教えていただけると嬉しいです。   

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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