梅様のその日暮らし日記

その日その日感じた事や世間で話題の事について自分なりの感想や考えを書いていきます。

「武漢・三峡ダム5日間」⑤

2016-05-07 14:44:53 | 日記


  昼食を終え、少しまたバスで移動して、赤壁へと向かいます。当地に向かう途中、バスの中では一行の誰もが期待に胸を膨らませていたに違いありません。赤壁が魏と呉の激突であり、曹操がてひどい敗戦をこうむって、撤退を余儀なくされた古戦場だということは、このツアーに参加した人なら誰でも予習して来ているはずの事柄だからです。中には、横山光輝の漫画で手っ取り早く予習して来たという人もちらほらと見受けられました。

   しかし、「三國赤壁古戦場」という大きな看板を掲げた赤壁公園に到着した途端、私たちが抱いて来た期待が、もしや大きな錯覚に過ぎないではないのか、という恐れが頭をもたげて来ました。古い木製調の古戦場の門の前には、更にけばけばしい、ど派手な門が据え付けられています。手を触れるなとの注意書きを怪しんだ私は、そっと手を伸ばしてみました。するとそれは、針金の枠の周りにビニールを貼っただけの、巨大な張りぼてでした。「三國古戦場」という看板のすぐ横には、大きく目立つように、「ATM」の文字が。こんな時は中国人のセンスの無さが恨めしくさえなります。

   カンカン照りの中、気温は既に30度にならんかという夏日になっています。ガイドの話では、坂道や階段を上りながら、2時間半ほどかけてこの施設を巡るのだと言います。
ここでも、ガイドの日本語が中途半端で、私の耳を悩ませます。三国志演義の中で武骨な悪役として登場する呂布という武将、日本人はこれを「りょふ」と呼び、中国人は「りゅうぶう」と発音します。ガイドは間を取って、「りょうぶ」と言うので、聞きづらい事はなはだしいものがあります。

   途中に、「赤壁大戦陳列博物館」という建物があり、日程表によればそこで60分の見学時間を取るとあります。多分中身は質の悪いレプリカが陳列してあるに違いないと思われるのですが、それでも一応見学はしてみたいと思うのが人情というものです。しかしここでは内部の見学をすることなく、習近平が来館した時に休憩したという部屋でソファーに座り、少しばかり休んだだけで、すぐに表に出て、暑い中を歩き続けさせられました。全体の見学に60分、赤壁大戦陳列館見学に60分というのが日程表に記された時間配分です。しかしガイドによれば歩き回るだけで2時間半の行程となっています。看板に偽りありです。

   歩きながら目にすることが出来るのは、呉の名将周瑜の像等、最近この公園を開設するに当たって製作された、ためにするものばかり。皆さん失望感を隠せません。その失望感にとどめを刺したのが、夢にまで見た?赤壁の古戦場でした。そこを流れる長江はどこまでもゆったりと流れ、周囲は至って平坦で、家すらも見えない、ど田舎の風景が広がっているばかりです。そしてお待ちかね「赤壁」。よもやかの有名な「赤壁」が、これほどまでに幅も高さも無い、何の変哲もないちっぽけな崖であろうとは、一体誰が想像したでしょうか。それは絶壁というにはあまりにもスケールが小さく、ただの大きめの岩としか形容のしようがないものなのでした。武漢・成田間直行便が出来たことにより、これからも多くの人が赤壁を訪れ、そして私たちのように失望感と共に帰国していくことでしょう。