ｅスポーツなんて

「君、相当頭悪くなったでしょ！」

私がこちらに引っ越してから１２年になる。彼とは最初から電車が一緒なので、一体何年前からこうしているのかわからない。
彼はほとんど直角に首を曲げ、うつむきながらホームを歩いて来る。多分、家を出てからずっとこのままの姿勢のはずだ。
始めて会った時にはまだ（オタクの）若者感に溢れていたが、もう体が緩んで、三十路を驀進中。
彼はこの１２年間、ずっとスマホでゲームをやり続けている。ホームで電車を待っている間も、電車に乗ってからも。
美少女の画面を見ていることもあるが、大抵は何ももたらすことの無い、武闘ものだ。だんだん眠くなって、途中で意識が遠ざかる。ふと我に返ると、どこかをクリックしてゲームを一歩先に進め、また居眠りを開始、また目が覚めるとクリックして・・・・。

スマホなどでゲームをしている間、脳みそは働いているようで機能していない。特に人間と他の動物を区別する「前頭葉」の部分がゲーム中はほぼ機能停止してしまう。

ゲームにふけって来たこの１２年、その時間を英語でも勉強していたら・・・。いや、何も言うまい、これが彼の人生なのだ。しかし、ｅスポーツなどと称して格闘ゲームがオリンピック種目になりそうな勢いだ。
私は絶対反対だ。なぜ？毎朝彼を見ているからだ。

お隣さんの進学事情

　　　韓国の高校生の生活を見ると、日本の高校生が如何に恵まれているかわかる。朝は７：２０から朝自習。放課後は更に補習。それが終わると正門に予備校の車が待ち受けていて、予備校へ直行。夜中まで予備校で授業を受け、予備校の車で帰宅する。それからまた自宅で学習。私たちの感覚ではとてもじゃないがやってられるか！という気がする。

　　　しかし、こうしなければいい大学には入れないから、いや、みんなが同じことをやっているから、結局金持ちは有利、持って生まれた能力の高い者が有利と、出て来る結果は日本と同じになってしまうのだが、それにしても韓国の進学熱は気違いじみている。正門前には沢山の母親が詰めかけて神仏に祈っているし、遅刻しそうな受験生がパトカーや白バイの後部座席に乗って登校というのは韓国名物ですらある。

　　　ただし、卒業してもその時点でまたふるい落とされてしまうから、沢山の若者がチキンの店を開く。多分、本部から冷凍のまま運んで来て、店では仕上げをするだけでよいいタイプなのだろう。これをみんなで一斉に開店するものだから、結局はほとんどが倒産してしまう。

　　　そもそも大企業が少ないので、数える程しかない超一流大学に入れなければ、その時点で半ば人生の負け犬になってしまう。Ｋｐｏｐアイドルがなぜあれほどまでに完成度が高いのかと言えば、いわば受験戦争の敗者復活戦を勝ち抜いた子たちだからだ。予備校へ行く代わりに、芸能事務所の研究生として、深夜までレッスンを受け、勝ち残った結果が日本でもドームを満員にするようなグループになる。
　
　　　中国人にそんな話をしたら、中国は韓国よりもっとすごいですよ、と言われた。写真は中国南部の、昆明という都市で数分歩いただけで見つかった予備校の写真。ちなみに今、日本の大学に留学しようという学生の多くは、中国本土での激戦を避け、金に物を言わせて迂回作戦をとっている子たちだという。