青龍神界鏡

次はまた首相してみんかお前。
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速記掲示板 その七百八十七

2022年11月18日 18時46分37秒 | 投稿

異星人、瞬間移動事実を知る軍医がデンバー地下で、湖面の揺れに接する。
緊急会議から三カ月強が過ぎた頃だった。
被験者を、高さ一米程度の機器へ搭載する手続きを既に自己が済ませし実験室へ、一人再び足を向けている。
軍医は、自己が担当する実験が、緊急会議後、初の臨床例である事を自覚していた。
陰鬱な表情を、無言の両脚が実験室へ運んでいく。
ただ、“どうしようもない”、を。
何も、考えられなかった。
散々なる熟慮の結果、まだ首に繋がる自己の頭部はもはや。
“もう・・・知らん・・・何も知らん・・・私は・・・・・・ああ・・・ああ・・・”。
自己にとって、五度目の臨床例に向かう軍医の職能意識に残るのは、“かつて自己が許されざるべき、と穿ち切った、惰性が支配する手続き”だった。
長い迷路を抜け、実験室の前に到着する。
扉を開くと、自己がここに準備した確信が襲う。
“被験者の視野には、私の姿は絶対に映らない筈”。
確信は次に、職能意識へ迫る。
“じゃあ、次も、確信を生み続ける立派な仕事をしろよ”と。
“もう・・・知らん・・・何も知らん・・・私は・・・・・・ああ・・・ああ・・・”。
「助けて下さい、ここから出して下さい、体を自由にして下さい。
どうしてここまで酷く体を拘束するんですか。
もう全身が痛いです。
ここに二時間半以上居ます。
懲罰への即応意識を錬磨する階梯としては、突然あまりに、急激な上昇だと感じます。
どうしてですか。
今までの私の受け答えは、依然と何ら変化をせず続けだったと思います。
何かおかしいと思います。」
いつもと同じく、軍医は無視する。
沈鬱な顔で、傍の什器じゅうき、に掛けられているファイルに乗る臨床評価記入票に淡々と所見を記入していく。
“身体の健全ぶりは、現在も変わらず、実験へは問題無し”。
軍医は前後、一瞬として被験者を診察せずだった。
“内臓所見記入欄、問題無し”
“内臓所見記入欄、問題無し”
“内臓所見記入欄、問題無し”
“内臓所見記入欄、問題無し”
利き手、右手の小指側側面へ、全体重をかけ、鈍い白色のツマミを、七糎、下との、限界まで押す。
十七才のカナダ人少女は状況への管理者の足音からつい、学校の寮への無報告状態に関する弁明を思い出してしまう。
「どうしてですか。
助けて下さい。
あたしに何をするつもりなんですか。
ここの支配人は何を考えて、あたしが通う学校にどんな通達をしたんですか。
その内担当者が教えてくれるって嘘なんでしょ。
もう一カ月半が過ぎてるんですよ。
どうしてあたしで、突然協力観念への即応変質因子としての特性を調べる事にしたんですか。」
・・・今回、軍医は傍で立ち尽くし、少女の視野の外で、言葉に耳を傾ける事にした・・・。
“勉強の遅れが気になる・・・進路眺望が暗くなる・・・人生を明るくしていこうとする術、貧相状態の先を考えずままの、努力の日々を選んでいた・・・のか・・・。
離婚した妻との間に、今は三十になる息子が居る。
ミネソタ州の西側で暮らしている筈だ。
医療機器の研究部署務めの、かつての父親は・・・・・・(言葉を自然と失う)”


男は首を下へもたげ、立ち尽くし続ける。
予想通り、人非ざる絶叫の時が始まる。
足元から、五・五糎程度の高さを移動し続け、覆い被さろうとする黒く細長い菱型、二双には、銀色に鋭く光る八種なる刃や槍状が約五十ずつ密集していた。
「ヌヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアNoaaaooooooooooooooooooooaaooooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!」
長さは三十五から四十五糎であるそれらの刃は、この少女の絶命へ二十秒かけ、鼻の下から両足首にかけてを突き刺す軌道にあった。
男は、以下を無視する。
「Help!!!!!!!Help!!!!!!!Help!!!!!!!Please Help!!!!!!!Why can you do this to me!!!!!!!!!!!!」
以降の絶叫も無視する。
「No!!!!!!!!!!!!!!!!!
何の権利があって、こんな事を・・・・・・あんな・・・(思考負荷を強いるのが目的だったのね、あんな長ったらしい名前の対話由来緊張調査実験の数々は)何故なの、あなた達・・・(アメリカの・・・精神医学研究財団・・・軍事訓練・・・市民帯同型・・・地下印象施設・・・・・・これも同じ・・・いや・・・思考負荷ではなく、責任の霧散法を模索する為の・・・誘拐まで訴えての・・・)Noooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!」
異形な刃群を歯茎に生やす黒く細長い菱型、幅十九糎、二双は骨盤の上を差し掛かっている。
軍医は、無言だった。
理由は、無かった。
無思考の、結果らしかった。
軍医は、少女の視野の外、在らぬ方向で、首の力みを全て消してのうなだれにある。
思い出がかつて沸いてしまった、という思い出が沸いてしまい、少年期、無邪気に野球に興じていた記憶が軍医を包む。
“十一才の頃の、あの仲間達は今、どこで何をしているだろうか。
私のこの佇みを知ったら、卒倒するに違いない。
私は、ネズミの駆除すら、生命観念を汚す恐怖から、嫌がる性質たち、だったと知っていたからだ。
どうして・・・こんな事になってしまったのだろうか・・・。
・・・被験者が声帯を焼く絶叫を始め出した。
二十五秒は持つまい。”
二双に生える刃群は、何の感情も無く、淡々と少女の鼻の下をゆっくりと突き刺していく。
顔面五カ所への刃群、同時突き刺しによる創傷に伴う激痛死を彼女は激痛の開始から十八秒後、迎える。
ただ、“早く死んでしまいたい”と強く願いつつ。
軍医が傍で過ごしていった時間は極めて意外な事に、狂乱と恐怖に満ちていった。
うなだれた首から、死角領域に何と人の気配を感じた後に。
腕を組む、を両拳が担っているらしい姿勢が、口元を厳しく閉じ、目の輪郭を問責的雰囲気で広げ、やや内股での膝の突っ張りで立っている。
“ドッドッドッドッドッドッドッドッ”


カーキ色の半ズボン、白い靴下、運動靴状、前腕まで酷く膨らんだブラウス、赤茶色のベスト、皮印象の紐による複数の交差模様が胸を縦に占めている。
顔は地球人には見えず、年齢不明なる、髪は薄い黄土色、性別男性、身長百四十八糎。
軍医は瞬時に、瞬間移動せしらしき異星人が語られた緊急会議の記憶を思い出す。
“・・・何という事だ・・・。
疑ってはいなかったが、まさか、再びとは・・・。”
軍医は唖然の表情を灯し続ける。
ネバダの異空間座標に駐留していた、月圏の異空間文明人は、デンバー地下で無言を選ぶ。
七十四名もの異星人が、ベテルホース駆動実験現場、ではなく実験意識上の、無意味な球拾い意識を経由した、無意識よりの直接語り掛け行為への手続きを完了していた。
軍医は、睨みを感じる。
言葉は、何も思い付かない。
少女は、絶叫している。
「ドゥオアアアアアアアアアアアアアオオウドゥオオオオアアアアアアオオオオオオオオオオオオオオウ」
月人は組んでいる腕を解いていきつつ、やや内股立ちの両脚と、継続する睨みで、両腕に室内緊張が灯るに任せる。
すると現在の軍医の意識、全私的意識へ、今回意外な事に、少女の絶叫が、流入していく。
狼狽で開く口と、驚愕の両目は、流入孔の縁、風圧由来振動を明かすかのように、三点同時痙攣にある。
両腕はこの痙攣を、懸命取材中らしく、軍医にとって、在らぬ異空間、無意識領域で無意味な小舟漕ぎ仕草にある。
何も考えられない。
頭部は、無言、無音だった。
「ヌアアヌハグアアアアアヌアアアン、ヌウウアアアアアアグハア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン゛、ブア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛イ゛ヒイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ン゛」
(酷い、酷い、痛い、痛い、こんな事を、子供に実行するなんて、酷い、酷い、酷い、いやああああああああ)
月人の増加憎悪は月人の首を、呆れの発生を通じ、やや揺らす。
軍医の頭で、概括が自動成立してしまう。
“お前は、何を考え、このような残虐実験を担当しているのか”。
月人と目が合っている軍医は、意識内で、全てを真剣告白してしまう。
“私は、大勢の審議員により厳格に審査された実験諸元に対し、幾度も再考を、公的、私的努力に訴え、審議員に迫りました。
実験を、全く望んではおりませんでした。
実験諸元の規定を審議員に迫ってきたのは異星人動態と、濃密に連関し合いし、螺旋構造に生る、高度調査成功神経、調査渇望、組織の未来展望、異星人の要望への正解回答確信、これらの現在の在り様でした。
私は知っておりました。
絶対に、一瞬として、過去への退行を選んではならぬ、が陸軍上層部に満ちる、無言の掟である事を。
倫理視神経を構成していくべく選択されしは非倫理視野の限り。
これが、現在の上層部を行き交う、報告書類の、文法時制、絶対なる不可逆性を、上層部が深く認識した所以です。
陸軍の視神経周辺血肉、結集への合言葉、再唱和にて陳腐化せずべし、絶対に、です。
模擬街で判明しゆく、機密任務緊張を模したるオセロ盤上の紙人形兵士同士の対話結果はしかし、陸軍の視神経より上位、頭頂部と、銃火器の引き金の同期を告白しておりました。
そして次に、頼る術は、現況の視神経による、非常事態への直視でした。
頭頂部を、機密任務、絶対遂行認識で、厳しく固定する。
私が知っているのは以上でございます。
かつて選択されし非倫理視野への、再度注視、再評価、言わば質への疑問、これらは在ってはならずべし。
軍医会議が、深く、徹底的に、信仰していたのは、非倫理視野、絶対教義事実であった、と私の職権は確信し切っておりました。”
月人は、始終無言であり、そして軍医の告白を知覚はせずだった。
月人は、言語を発さず、口パク仕草を灯す事を主体としたる頭部と全身の揺れを漏らす。
暗示表示学曰くの、“許さんぞ”を軍医はただ、怒りと即座解釈し、恐怖する。
軍医は背後へ体をよろけさせ、視線は左右へと激しく狼狽する。
告白が勝手に沸く。
“私、一人のせいじゃ、ありません。
私、一人の、抵抗では、どうしようもなかったのです。
これは、軍医会議の欲望や堕落が発注者ではなく、・・・異星人へのへつらいを記録が目的ではなく・・・陸軍の組織認識の要たる・・・銃火器と、その部品に関する精密認識の精度を向上させる過程に発生した・・・判明・・・命令への反逆因子の根源は、地下潜航せし無察知との、気付き能力、皆無事実への、無知人だと・・・知っておりました。
これを、組織として、是正しゆくには、人種間の気質差異を・・・ああ・・・不可能でした、不可能でした。
しかし、判明は、機密命令への反逆因子は・・・判明の度に・・・大、克己、儀式を求めるのです。
いいや、我らは、確かに、かく、を自認すべくの。
私一人のせいではない。
私一人のせいではない。
私一人のせいではない。
違うのです。
誰かや、どこかの部署の欲望の結果ではありません。
お怒りなのは分かりました。
ぬふあああ、本当に瞬間移動してくるとは。”
月人は口パク仕草を放つ。
“お前側で組まれし真剣論理など、耳にするには堪えない”。
「ヌ゛ア゛ア゛ガア゛ア゛ア゛ン゛、ヌ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン゛、ヌ゛グチュブズゥブブブブゥ゛ゥゥ・・・ズブフゥッ・・・・・・」
少女は絶叫を止めていく。
(ううう、いいえ、・・・この少女を今どうにか・・・・・・)
思考と共に無言の軍医は、沈鬱な表情と虚ろな視線を床へ放り投げる。
月人を見やると、そこには居ない。
軍医、無言の時から月人は次第に消滅していき、既に異空間へ帰投済みだった。
(どうすべきなのだ、これからどうすべきなのだ、どうすべきだと言うのか、ああああ、どうすべきなのだろうか、ああああ)
二日後、緊急会議が招集されるに至ったが、極めて稀な事に、陸軍大将、中将、少将、大佐、中佐といった制服組高官が参加する事となった。
議題は異星人による瞬間移動事実には触れず、“陸軍を取り巻く現況を、如何に高速に、かつ丁寧に、複数人による相互確認手続きを踏まえつつ、把握していくべきか”となった。
“何故、こうも定期的に、逼迫指標が発生するのか”との問いの際、会議は静寂に包まれる。
答えは、無い事を、大勢は熟知していた。
こうして、ベテルホース登用実験は激減していった。
実行回数、十四回を残しいく、一年をかけ。
“ドッドッドッドッドッドッドッドッ”


異星人の瞬間移動により、緊急送達経路版実験は完全に停止したが、異星人の動きがなかりせば、年に三十一回を以降八年か九年、次は年に十回を四年、五年が放物線軌道上座標の数値だった。
異空間文明人側は、実験回数、激減化への会議や人的営為へ評価を与えると共に、以降の実験現場への瞬間移動に関する意欲へ挫滅措置を与える。
瞬間移動事態は、十四回に発生せずだった。

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