「手紙」(東野圭吾著 文春文庫)を先週読了した。
辛い小説でした。
弟直貴を大学に行かせたいという思いから、強盗殺人をしてしまって刑務所に入った兄の剛志。
その剛志から月に一度手紙が来る。
剛志の存在が直貴の生活を苦しめる。
いつも、強盗殺人をした兄がいるということで差別を受けた。
それでも通信制大学に入る直貴。
アパートにいられなくなり、バイト先で兄のことがバレるとそこをやめざるをえない。
バンドのヴォーカルをやっていてデビューの話があっても、
強盗殺人の兄がいる直貴がいては、デビューは出来ないといわれバンドを抜ける。
愛する恋人とも別れなければならなかった。
それなりに苦労して直貴は大学を卒業する。
兄のことは内緒にして中堅の家電量販店に、どうにか就職出来た。
パソコン販売課にいたが、兄のことがバレて、倉庫番の仕事に移される。
むかしバイト時代に知り合った女性と結婚する。
社宅で直貴の兄のことが知れ渡るといられなくなる。
自分は差別されてもいいが、妻や子どもが差別されることがつらい。
家電量販店の社長との会話がよかった。
結局直貴は、社宅にいられず、会社もやめるほかなかった。
直貴が剛志に最後の手紙を書く。
これまで私は、東野圭吾の「秘密」という小説しか読んでない。
「秘密」も意表をつかれた物語だったが、「手紙」もなかなか興味深く読みました。
東野圭吾の小説をもっと読みたいと思った。
読んでみたいような読んでみたくないような・・・。
でも,小説としての完成度は高いのでしょうね。
文章のミスも指摘していただいて感謝です。
さっそく修正しました。
この小説に登場する家電量販店の社長がいいです。
これまででしたら、主人公をかげで援助する、
というようなタイプのひとがいたと思いますが、この社長はちがう。
強盗殺人を兄に持つひとを世の中のひとが差別することは普通のことだ、
というようなことをいう。
けっして主人公を安易に応援しない。
機会がありましたら、読んでみて下さい。
この小説、文庫版を購入して以来何度も読み返しておりました。
本人に非は全くないというのに、「強盗殺人犯の親戚」というだけで社会から差別を受けるという、理不尽さ、やるせなさ、怒りというものが小説からにじみ出ており、なおかつ救いがないラストに胸を締め付けられるのと同時に、主人公とその家族に安易な救いといったものを与えない作者の描写が感じられます。
この世は理不尽で、納得のいかないことが多い。
家電量販店の社長の一言が、ズシンと胸に来ます。
東野圭吾さんの小説は何作か読みましたが、被害者遺族としての視点で書かれた「流星の絆」も読みごたえがありました。
丁寧な「手紙」への感想をありがとう。
> この世は理不尽で、納得のいかないことが多い。
> 家電量販店の社長の一言が、ズシンと胸に来ます。
まったく同感です。
これからも九想話をよろしくお願いします。
千菊丸さんも小説を書いているのですね。
がんばりましょう。