昨日の午前中に、私はトンボの湯に行った。
身体を洗い、内風呂に入り、10分ほどで露天風呂に移動する。
露天風呂に入っていた客は、私の他に4人だった。
私は露天風呂の浅いところで横になって空を眺めているのが好きだ。
すると私から3メートルほど離れたところにいる2人の客の声が聞こえてきた。
「この温泉はいいですね。よく来るんですか?」
「1日おきには来ます」
「この近くなんですか?」
「はい。会員になると500円で入れるんです。普通のひとは1000円でしたっけ?」
「いや、私は1200円でした。それだったらいいですね。毎日来てもいい」
「はい……」
「しかし、軽井沢はいいですね。昨日は石の教会に行って来たんですが、あそこは素晴らしいです。
あんなところで結婚式を挙げられたらいいですよね。
私の息子は32歳になるんですが、あそこで結婚式を挙げさせたいと思いました。
まだ相手はいないのに、予約しておこうかななんて考えちゃいました。バカな親です」
「そんなことないですよ。あそこはいい教会です。私の娘はあそこで結婚式をしました。
式も素晴らしいですが、料理も良かったです。ブレストンコートはいいホテルです」
「そうですか。いいでしょうね。ちょっと金がかかってもあそこで挙げさせたいです。
私は、東京の小平に住んでいるんですが、会社を定年になってから週に2日勤めに行っています。
もう4年になりますが、いつやめてもいいと思っています。家のローンも終わりましたから…。
息子が早く結婚してくれればと考えているんですが、なかなかうまくいきません
大学を出る頃ちょうど不景気になりまして就職がなかなか決まらなくてね。
整体師の学校に行き直しまして来年卒業するんです。息子の結婚はいつになることやら」
「大丈夫ですよ……」
私は40歳から44歳まで小平にあった会社に勤めていた。
45歳で山梨に単身赴任しているときに小平の本社がなくなってしまった。
その会社は今はない。
あれからいくつ会社をかわってきたんだろう。
1つ、2つ、3つ…今の仕事で6つ目だ。
退職金なんてものはない。
女房は東京にいて…、持ち家もない。
今年32歳になる双子の息子たちは結婚してマイホームも買った。
それぞれに子どもも生まれた。
私は、目の前のひとの話を聞きながら、自分の半生の棚卸しをした。
「軽井沢は東京から近くていいです。1時間で来ちゃいますもんね。また来ようと思います」
「ぜひ来て下さい」
「こんどは息子の結婚式に来たいです。いつになりますかね…」
この男の子が可愛いかった。お母さんのうしろのほうにいるの見えますか?
私は5ページよんで読むのをやめました。
面白くないからです。理解不能だからです。
昔高校の名物英語教師がこんなことを言っていたのが忘れられません。
「人はよく言葉では表現できない、というが、
それは表現する言葉を持っていない、表現する
力をもっていない、ということだ」と
私はその言葉に強い衝撃を覚えました。
すばらしい先生に教わったのですね。
“表現する言葉”と“表現する力”を手に入れたいです。
私にはむずかしいのでしょうが、わるあがきはします。
今日は休みで、先日図書館で借りてきた
花村萬月の「萬月な日々」というエッセイ集を楽しんでいます。
私は、この小説家が大好きです。
このエッセイは、ものを書く人間には役に立ちそうです。
今日は、軽井沢にも春が来たような天気です。
今からウォーキングにでも行ってきます。