友人の小説

2018年01月18日 | 健康・病気

今日、富山の友人の小説を読んだ。
同人誌「辰草」18号に掲載された「家族・・・」という作品で、
読んでいて、なかなかいいな、と思った。
8ページの小説です。

春雄は定年退職した送別会で泥酔して家に帰って、玄関で寝てしまった。
翌日、息子の真一、娘の涼子がやって来て、妻の美代子と定年退職を祝ってくれた。
大学を卒業して38年間、粉骨砕身、会社のために生きてきた。
仕事一筋の春雄は子育ては美代子にまかせてきた。
今では息子も娘も家庭を持ち、それなりに暮らしている。
そんな家族に囲まれて春雄は幸せだった。

(パターン1)
楽しく和やかに祝いの席は進んでいた。
10年前の事故の話になる。
10年前の日曜日、ようやく就職が内定した真一の祝いをしようと、
家族は仕事で疲れていた春雄を家に残して隣町のスーパーまで買い出しに行った。
途中、対向車線を走って来た大型トラックが突然センターラインを越えて、
真一が運転していた乗用車にぶつかってきた。
居眠り運転の大型トラックと正面衝突したのに、3人とも軽傷ですんだ。
定年退職の祝いの食事も終わり、真一と涼子が帰る。
美代子は2人を送って行った。
満ち足りた気持ちで春雄は目が覚める。
彼は夢を見ていた。
あの事故で3人は死んでいた。

(パターン2)
楽しそうに話している涼子と真一と美代子。
その声がだんだん聞こえなくなってくる春雄。
10年前に交通事故を起こした春雄は、植物状態で生きてきたが、延命器具が外された。

(パターン3)
半年前に会社恒例の社員感謝企画イベントで謎めいた景品を引き当てた。
多忙な毎日の仕事に追われてそれを春雄はすっかり忘れていたが・・・。
定時の5時になり、春雄は会社の同僚たちに祝福され花束を抱かえて会社を出た。
春雄が家に帰ると、突然目の前でパンパンとクラッカーが鳴り響き、
「お父さん、定年おめでとう」と暖かい声が飛んだ。
真一と涼子が家に来て、美代子と定年退職を祝ってくれた。
楽しい時間が過ぎて子どもたちが帰って行く。
妻の美代子は駅まで送ってくると一緒に家を出た。
「楽しそうで良かったです。大成功でしたね」
真一を演じていた青年が女性たちに話しかけた。
「定年って、人生の一大イベントだもんね」
涼子を演じていた女性が頷いた。
「二人ともすっかり、息子と娘になり切っていて、とても良かったわよ」
年配の女性が2人を褒めている。先ほどまでの美代子である。
会社の抽選会で当てたのは「独りのあなたもレンタル家族で憩いのひと時」という景品だった。
10年前、子どもたちと妻の3人は、不慮の交通事故で亡くなっていた。

ひとつの家族の物語があって、同じ家族4人のちがうストーリーを3つという構成は面白い。
家族というものは、ある出来事で生活が変わる。
それをうまく描いていると思った。

コメント
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