あと１日

　今の職場は、周囲を樹脂で成形されたにウィンドウガラスの余分な樹脂をカミソリ
とハサミで除去して製品にする後加工と、それを検査する女性が１０人いる。日本人
が６人、ペルー人が３人、ブラジル人が１人です。
　今日、最近入ったペルー人のアナという人が歯が痛いので午前中で早退したいとい
う。１０時前に、その職場の面倒見のいいＹさんから聞いた。
「歯が痛いんなら、今すぐ帰ればいいのに」
　と私は、Ｙさんにいった。彼女の話だと、入ったばかりで休むと会社をクビになる
と心配しているらしい。
　私とＹさんは、１年ほど前からいるゴメスに「そんなことは大丈夫だから帰るよう
にアナに伝えて」とお願いした。
　アナは、５歳になる子供をペルーの親に預けて、夫婦で日本に来ているらしい。
　私は、エアコンのないクソ暑い工場で、ガラスの乗った台車をフォークリフトで運
びながら哀しくなってきた。可愛い我が子と離れて、日本で慣れない仕事を、クビに
なることをおそれて歯痛を我慢して会社を休もうとしないアナ。歯の痛いのは辛い。
私は、この２月に経験したばかりだ。私の単身赴任のときは、息子たちは高校生だっ
たが、子供と離れて暮らすのも辛い。
　不本意な仕事をさせられている我が身を嘆いてる場合じゃない。中高年の身で仕事
があるだけでいいではないか。そんな気持ちを、汗でびっしょり濡れた作業服に包ん
で働いた。あと１日で休みが来る。あと１日だ。