兼六園内の紅葉の様子です。一部色づき初めていました。
全体が紅葉するのも間もなくのことと思われます。
《歌について》
『古今和歌集』の秋歌下に載せられた歌。詞書に
貞観御時、綾綺殿のまえに梅の木ありけり。西の方にさせりける枝のもみじはじめたりけるを、 うへにさぶらふをのこどものよみけるついでによめる
注)貞観の御代・・・清和天皇のころの年代(858~877)
綾綺殿・・・内裏の御殿のひとつ。清和天皇の御座所であった。
とあります。作者「藤原かちおむ」という人物については詳細はわかりません。(どなたかご存知の方いらっしゃるでしょうか?)
同じ梅の木でありながら、一部だけ紅葉が始まっている、とちょうど兼六園のもみじのような光景を詠んだものです。
しかも西のほうの枝から紅葉しているという・・・
中国の五行説では東西南北をそれぞれ、東=春、南=夏、西=秋、北=冬というように季節にあてています。西は秋を表す方角であり、西側の枝がまず色づき始めたというのはそちらの方向から秋がやってきたということで、全く理にかなっていると、わずかな紅葉を五行説と結びつけて知的に詠みあげています。
こういう発想は、ややもすると理屈っぽくて嫌味になりがちですが、「西こそ秋のはじめなりけれ」と、さらりと詠みあげてしまうことで理屈っぽさを消して、秋の気配の情緒をよりいっそう感じることが出来る歌のように思います。
(撮影:2004年10月24日)