とても助けてほしかったのに、差し伸べた手を突き放され、深い崖に突き落とされた。
相手の表裏だらけの言葉に踊らされ、魂をすり減らした。結局言葉は伝わらなかった。
気持ちの伝わらない相手のために、これ以上魂をすり減らすのもばかばかしくなって、気持ちを転換させようと、そのための一つのきっかけになるかと思い、思い立って大乗寺の参禅会に参加した。
問い合わせの電話を入れてみると
「どうぞ、お待ちしております。」
とのお返事。
境内に入ると清涼な空気に包み込まれる。そこにいるだけで心が洗われる感じだ。
受付を済ませ、待合の部屋でしばらく待機。
時間になって、座禅堂に行く。初めてだったので、やり方をご指導くださったのが、外国人のお坊様。外国人の方も何人か座禅に来ていた。
半跏趺坐の形で座り、印を結んで座禅が始まる。聞こえるのは蝉の声と鳥の声。頭の中を空っぽにするということが果たしてできるのか、と思っていたが、姿勢を正してじっと座っていると不思議と雑念がおきてこない。自然の音に耳を傾けていると、自分が自然と深くつながっているという感覚が体中に満ちてくる。
瑣末なことにこだわっていたことが、なんだか馬鹿らしくもなってくる。
只座る、ひたすらに。
頭の中も、心も少し軽くなった感じだ。
とはいえ、完璧に元の自分に戻った自信はまだ、ない。
座禅終了後、1時間ほど法話を聞く。
『従容録』という曹洞宗で重んじている禅の指南書の「第4則」のお話。
最初は難しくてよくわからなかったが、易しく読み解いてくださったので、理解することができた。
大乗寺は政重さんの眠るお寺でもある。
帰りしな、政重さんのお墓に行き、手を合わせる。
思いは深く眠らせた。二度と再び目覚めないように。
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