Prototype

音楽・小説・その他、思いついたことをだらだらと綴る
アールグレイの気まぐれ日記

生きてる理由なんてもとからないんだ

2005-09-20 | 
●死神の精度● 伊坂幸太郎
文藝春秋  2005.6

一週間調査を行って「死」を実行するのに適しているかどうかを判断し
担当部署に「可」か「見送り」かを報告する死神。
まともに晴れた空を見たことがないという死神・千葉の6つの話。


ちょこちょこ他の話の断片が登場するので連作短編集に近いかな。
対象者を調査するのが死神の仕事だがあっさりと淡々と「可」の報告がなされる。
言ってしまえば、死神が「可」の結論を出して担当する人間が死を迎える
という結論は出ているようなものなのだが
いろいろなスタイルの話があるのでマンネリにならずに読める。
死神は音楽好きという設定もなんだか可愛い。

最後の話で、老女の「これだけで充分、ラッキーだね」という言葉と
このラストになんだか救われた思いがする。
死ぬことがわかっていてもなんとなく読後感が爽やかで
ほっこりあたたかい気分で本を閉じれる。

ミステリーでなくてもいいからこのシリーズの話をもっと見てみたい。
千葉は人間に関心がないタイプの死神だったが、
他の(死ぬ前に幸せを与える)タイプの死神の話でもいいな。
あのラストではこれ以上の作品化はないだろうけどさ。
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