こういう小さな芝居が僕たちの心をとても豊かにしてくれる。大きい小さいというサイズは、おもしろい、つまらない、とはまるで関係ないことだけど、本来、武器にはならないはずの作品の小ささを、作品の持つ力にするという試み(そんなうまく都合のいいことは起きないはずなのだが)は見事に成功している。
それは彼らが身体の持つ力を信じるからである。そこにある自分たちの体が無限の可能性を示す。舞台作品の力はそこに . . . 本文を読む
『イップマン 葉問』というタイトルは嘘だ。本来なら『イップマン2』とすべきなのに、日本公開が『イップマン』より先になったため、こちらが『イップマン』となり本来の『イップマン』は日本では『イップマン序章』ということとなったようなのだ。なんともややこしい話だ。
ウイルソン・イップ監督、ドニー・イェン主演のヒット映画の第2作である。前作の佛山から舞台を香港に移して、1950年、戦後、香港移住して、苦 . . . 本文を読む
こういう珍品が思い出したように今頃になって公開されることがあるから、紛らわしいのだ。2007年の香港映画で、07年には東京国際映画祭、08年福岡アジアフォーカスでも上映されたジョニー・トーの映画である。これが今頃になり、ようやくひっそり劇場公開された。2011年劇場公開作品としてTSUTAYAでこれをみつけたジョニー・トーのファンであるうちの嫁さんが大喜びでレンタルしてきたのだが、見始めてすぐ、 . . . 本文を読む
こういう児童書に近い作品を読むことで、得るものは大きい。理論社のラインナップは自分にとって、ちょっとしたカンフル剤になる。忘れそうになっていた気持ちに気付かせてくれ、大事なものを、教えてくれる。このかなり乱雑そうに見えて実はかわいいイラスト(北村ケンジ)もいい。それは、2人の主人公の顔と姿(鴨を頭にのせたのと、ギターを持ったのと、②パターンある)である。表紙には、彼らとともに旅するとんでもないオ . . . 本文を読む
これが4回目の公演となるらしい。神原さんの初期作品で5年ぶりの再演である。彼女は機会があるたびにこの作品を繰り返し上演する。彼女にとってとても大事なものだからだ。あんなにも多作で次から次へと新作を書き続ける彼女なのだから、再演をしなくても新作上演でもいいはずなのに、そうはしない。今回浮狼舎が復活して、新人もたくさん入ったことで、彼らの訓練を兼ねての公演を打つ。
それならなおさら可愛い彼らへの . . . 本文を読む
試写会でこの映画を見た。いや、正確に言うと見るはずだった。だが、映写機のトラブルで、半分しか見れなかった。こんなこともある。最初から嫌な予感がした。ゲスト(主演の榮倉奈々と岡田将生、そして瀬々敬久監督)の到着が遅れるから開演が送れるというアナウンスがあった。そのへんから、なんか不吉な気分。しかも、劇場は満杯で2階席しか空いてなかったし。
それにしても、酷い対応だった。映写ミスで音声が出ないの . . . 本文を読む
ジャ・ジャンクーの『世界』を見たとき、自分が何も知らずのうのうとここで生きていることに、ショックを受けた。今世界はこんなふうになっているのに、僕は日本で、のうのうと安穏な日々を送っていることに気付く。もちろん世の中では知らないところで様々なことが起きている。僕だって新聞も読むし、ニュースだって見る。だが、それはあくまでも情報でしかない。自分の問題ではないからだ。今、直面している現実との対応で精一 . . . 本文を読む
石井克人監督最新作。久々に彼らしいアクション映画の快作。とことんやりたい放題をしている。最初からラストまで1時間54分ノンストップ。近頃ここまでドキドキさせられた映画はない。
25歳、冴えないフリーターの妻夫木聡が、いかさま詐欺に引っかかり300万の借金をする。返済のために引き受けたバイトがやばい仕事で、なんとヤクザの死体の搬送に従事することに。永瀬正敏、我修院達也と3人でトラック一杯の死体 . . . 本文を読む
モーシン・ハミッド『コウモリの見た夢』に続いて、この本を読む。偶然にも、どちらもたったひとりで異邦であるアメリカに行った男を描いた話で、そこでの単調な毎日の生活の中で自分を見失っていく男の話だ。『コウモリ』の終盤、恋人が精神病院に入り、痩せ衰えて、やがて自殺していく、という展開が、ちょっと嘘くさくて、入り込めなかったが、こちらは主人公が唯一心を許したタイ人の娼婦が、娼館を抜け出し、彼を頼ってくる . . . 本文を読む
たった1日の出来事である。14歳の少年コペルくん(もちろん、あだな)が連休初日の朝、雑木林をうろついていて、そこでノボちゃん(彼の叔父さん、染織家)と出会い、ノボちゃんがヨモギが欲しいというので、友人であるユージン(しゃれではない)のところに行き、彼の家の庭(そこはなんと森になっている!)へ行く。そこで久しく疎遠になっていたユージンと、まるで昨日の続きのように接して、ともに1日を過ごす。それだけ . . . 本文を読む
当日パンフの松原さんの文章がとてもいい。自分の正直な気持ちを素直に書いた気持ちのいい文章になっている。芝居というものを舐めてかかっていた自分への反省が正直すぎる言葉で書かれてあり胸を打つ。自分の可能性を信じて頑張ってきたはずの自分。その甘さに対して謙虚になっている自分。そんな裸の自分がそこにいる。
そんな姿勢のもと、作られたはずの今回の芝居なのだが、なかなか思い通りにはいかなかったようだ。彼 . . . 本文を読む
これは9・11によって人生が変わってしまった男の話だ。パキスタンからアメリカにやってきてプリンストン大学を卒業し、エリートコースを突き進む男が、9・11によるイスラム原理主義者へのパッシング、というか、アラブ人への偏見。さらにはアメリカによるアフガン空爆、さまざまな不条理とも言える迫害の中、それでも自分があくまでもアメリカ側に立つ事への嫌悪から精神のバランスを崩していく。プライベート面でも、恋人 . . . 本文を読む