
これは9・11によって人生が変わってしまった男の話だ。パキスタンからアメリカにやってきてプリンストン大学を卒業し、エリートコースを突き進む男が、9・11によるイスラム原理主義者へのパッシング、というか、アラブ人への偏見。さらにはアメリカによるアフガン空爆、さまざまな不条理とも言える迫害の中、それでも自分があくまでもアメリカ側に立つ事への嫌悪から精神のバランスを崩していく。プライベート面でも、恋人が、まだ若くして死んでしまった昔の恋人のことを忘れられないで、やがては心身のバランスを崩していくことも影響する。やがて彼は仕事の対する情熱を失う。もっと大事なことがあるのではないか、と思う。というか、気力がなくなるのだ。そして、誰もがうらやむような仕事を自分から辞めて、すべてを捨ててパキスタンに戻る。ここまでに書いたあらすじはすべて、彼がラホールで出会った男への話として語られる。
ラホールの町で、偶然出会ったアメリカ人旅行者とカフェで話し込む。自分がたどってきた軌跡を語る。全編はこの主人公の青年の一人語りとして描かれる。アメリカ人は一切喋らない。いや、喋っているのかも知れないが、この小説の中では描かれない。延々と語られる彼の輝かしい人生とその終わり。アメリカという国の抱える問題がひとりのパキスタン人の青年の物語から描かれていく。読み応えがある佳作だが、なんとも言い難い暗い気分にさせられる。
ラホールの町で、偶然出会ったアメリカ人旅行者とカフェで話し込む。自分がたどってきた軌跡を語る。全編はこの主人公の青年の一人語りとして描かれる。アメリカ人は一切喋らない。いや、喋っているのかも知れないが、この小説の中では描かれない。延々と語られる彼の輝かしい人生とその終わり。アメリカという国の抱える問題がひとりのパキスタン人の青年の物語から描かれていく。読み応えがある佳作だが、なんとも言い難い暗い気分にさせられる。