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映画・演劇のレビュー

空晴『いつもの朝ごはん』

2011-02-27 08:26:05 | 演劇
 もう第7回公演になるのだ。旗揚げをここウイングフィールドで行い、その後もここをベースにして、この小空間にこだわり、芝居作りを続ける岡部尚子さんが主宰する空晴の新作だ。毎回、変わることのない家族の小さなお話。ワンシチュエーションで、ちょっとした騒動が描かれていく。かなりの動員が可能な劇団だが、わざと狭い空間で芝居を続ける。そこでしか描けない芝居があるからだ。だから、結果的にしかたなくロングラン興業を目指す。というか、彼らは最近の関西の劇団では稀有の長期公演が可能な集団なのだ。困難を承知の上で、自分たちが見せたい芝居をたくさんの人たちに届けるためロングランに挑戦する。

 さて、今回はみんなが(と、いってもクラスが同じだった幼なじみの3人組だが)好きだった女の子の結婚式の日の朝(というか、夜明け前)なんていう微妙な時間が設定される。今ではもう誰も住んでなくて、物置になっている家を舞台にして、タイムマシンを巡るドタバタが描かれていく。といってもこれはSFではない。

 いくつになっても子供のままの男の子たち(もう30歳になるのに)が、まるで子供でしかないようなてんやわんやの騒動を起こしていく。話はこのささやかな出来事を通して、家族の絆を深めていくといういつものワンパターンだ。でも、それが見ていてとても楽しい。

 旗揚げの頃は、そこにわざとらしさを感じることも多々あったのだが、回を追うごとに、このワンパターンが快感になってきた。まるで山田洋次の寅さんシリーズを見ているような感じで、今では、この同じようなシチュエーションに安堵する。80分というコンパクトな上演時間(これもいつも同じだ)も気持ちがいい。そこで、無理なく、きちんと、自分たちの世界を提示してくれるからだ。

 僕たち観客はそこで、まどろむ。変わることがないという安心が、こんなにも心地よい。今回もそのタイトル通り、『いつもの朝ごはん』のような芝居だった。なんだか、ほっこりした気分にさせられる。それもいつも通りのことだ。素直な気持ちで、空晴の芝居をこれからも変わることなく見ていたい、と思う。今回もまたそんな気にさせられる。


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