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映画・演劇のレビュー

期間限定Saccharin『そのどこかに男たちはいたという』

2011-02-23 22:31:28 | 演劇
  これは『その鉄塔に女たちはいるという』と同時に上演されたアナザーストーリー。それにしても驚いた。前述のこの芝居に対するブログで、Saccharinの前回公演のタイトルを『質屋』と書いてしまっていたらしい。確認したらその通りだった。あれは『楽屋』ですよ。笑ってしまいました。ゴメンナサイ。こういう失敗ばかりしている。本気で間違っていることも多いけど、無意識に間違っていることもよくある。恥ずかしいです。確認作業をちゃんとしないし、思いついたまま、書いているからこんなことになる。

 さて、本題です。この『その鉄塔に男たちはいるという』にインスパイアされた短編集はとても面白い作品に仕上がっている。こういう作品はありそうでなかなかないはずだ。今回の企画は、先の『その鉄塔に女たちはいるという』とこの作品をセットにすることで成立している。とても贅沢で、上手い企画だ。5人の作家たちがそれぞれ自由気ままにあの戯曲へのオマージュを捧げる。独自の視点で貫かれたそれぞれの作品は好き勝手にまるで別々の方向を向いているようにも見える。5本とも全然違う文体で、切り口も別々で、そこにはまるで統一感というものがない。そんな5本を与えられて、演出の安武剛さんは、たぶん嬉々として、芝居作りに取り組んだはずだ。めちゃくちゃ楽しみながら、再構成して、1本の長編のように仕立て直す。

 原作のスピンオフである『Jくんのコト』(作、樋口ミユ。原作の雰囲気をきちんと継承して、戦場から遠く離れた日本の平和な風景を殺伐としたものとして見せていく)を全体のベースにして、そこに4本を挟み込む。寓話やメルヘンのようなエピソードもある。だが、その示唆するところはちゃんと原作の精神と繋がるから、ただの乱雑さにはならない。それらが絡み合ってオリジナルの背後に見え隠れするものを切り取る。安武演出はトイガーデンの時とは違い、あまりにオーソドックスなのに驚く。彼にだってこんな作り方ができたのだ。まぁ、そんなこと、当然なのだが、でも、そんなところにもなんだかニヤリとさせられた。個人的には棚瀬美幸さんの作品が一番好きだ。コタツを舞台にして、3人が見た悪夢を描く。ここにはオリジナルのエッセンスがきちんと昇華されてある。

 戦場(オリジナル戯曲)では、見えなかったものが、このごちゃまぜの短編集の中から、ちゃんと見えてくるのがいい。自分がかって作った作品から、こういう作品を作ってもらえるだなんて、土田さんはとても幸せな人だ、と思わされる。それくらい気持ちのいい作品だった。


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