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映画・演劇のレビュー

『イントロダクション』

2024-09-07 07:20:00 | 映画

ホン・サンスの2020年作品。2022年に日本では劇場公開されている。これは彼のこの映画の前作である傑作『逃げた女』にも出ていた(らしい)シン・ソクホが初主演する小さな作品。3章からなる66分の中編映画。あまりに短くてお話の全貌は描かれていない。ただ彼の中で何かが始まる。そのイントロダクションが描かれる。

状況説明は一切ないからよくわからない。1章は彼が父親に会いに行く話。父に会うのは久しぶりのこと。呼ばれて来たのになかなか父には会えない。ひたすら待たされる。鍼灸医である父の真意はどこにあるのか。父の病院の前で彼女と別れるシーンから始まる。別れるといっても彼が父と話をする間だけで、時間潰して待っていてね、という感じ。2章はドイツ留学した彼女の話。そこに彼がいきなりやってくる。3章は彼が母親に呼ばれて会いに行く話。彼女とは別れているし、俳優の仕事を始めたが、それも辞めたいと思っている。3つの話はいずれもお話の断片でしかない。ここから始まるはずなのに、始まる前に終わる。その間どれくらい時間がたったのかも明確にならない。ラストシーンの海辺で彼女と再会する。

ホン・サンスはこのひとりの青年の揺れる心が描かれる映画を何も語らないままで語る。好き嫌いはあるだろうし、ここには何の意味もないと思う人もいるだろう。もちろんホン・サンスは何も言わない。淡々と簡単に映画を作る。それだけである。


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