習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『フローズン・リバー』

2010-03-16 23:12:25 | 映画
 モノクロームの感触のある重くて暗い映画だ。ビデオ撮りの硬質な画像。荒涼とした湖の上をトランクの中に密入国者を入れたままゆっくりと車を走らせていく。真っ暗なトランクの中で不安と恐怖に怯えながら彼らは何を考えて過ごすのか。  カナダとアメリカの国境の町。冬になると湖は凍りつき、その上を通って密入国してくる人たち。彼らの援助をする2人の女。ギャンブル狂の夫がお金を持ち失踪する。15歳と5歳の子供を抱 . . . 本文を読む
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梨屋アリエ『スノウ、ティアーズ』

2010-03-16 23:11:01 | その他
「人は、哀しいときに泣くんじゃない。泣くときは、自分が憐れに感じたときだ。感情の嵐の中で、無力を感じ自分の存在が脅かされたときに、泣かずにはいられなくなるから、泣けるのだ。」  陸の死を知った君枝は、涙の海で溺れそうになる。でも、きちんと浮き輪をもらって、その海をプカプカ浮かんで、漂流していく。このラストシーンはちょっとした衝撃だ。リアルの地平から遠く離れたままで、この小説は幕を閉じる。  誰 . . . 本文を読む
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空の驛舎『エリアンの手記』

2010-03-15 23:08:22 | 演劇
 山崎哲の台本にまっこう勝負で挑む中村賢司さんの渾身の作品。重くて暗い。見ていて息が詰まる。遊びは当然まるでない。そんなことをしている余裕はここにはない。生真面目で頑固。そういう意味ではとても中村さんらしい作品になっている。だから、とても緊張させられる。肩に力が入るし、見終えた時には、ぐったり疲れてしまった。  でも、近年ここまで真剣な芝居を見たことがなかった。それは他の芝居がつまらないとか、不 . . . 本文を読む
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『ビバ! 監督人生』

2010-03-15 22:43:48 | 映画
 ニウ・チェンザー監督、主演による自伝的作品。台湾において1本の映画を撮るためにはこんなにも大変な思いをしなくてはならないのか、ということにまずは驚かされる。どこの国でもそんなことは同じだ、とは思わない。今時こんな接待とかあるのか? よくわからないがなんだか、すごい。  この映画に於いて、映画監督の仕事はお金を集めることだ。出資者を集めて接待のくり返し、おべっかを使って資金を集めること。そんな日 . . . 本文を読む
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『練習曲』

2010-03-15 22:38:17 | 映画
 大学を卒業する前にどうしてもやっておきたいことがある。自転車で台湾を1周することだ。チェン・ホァイエン(陳懐恩)監督のこの作品が描く旅は、ささやかな挑戦かもしてないが、主人公である青年(イーストン・ドン)にとってはとても大きな冒険だ。耳が不自由で、上手く人との会話が出来ない彼が、たったひとりで旅をする。  旅の途上でいろんな人と出会う。たった1週間の旅である。でも、これはこれで過酷なこともたく . . . 本文を読む
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空晴『もう一回の、乾杯。』

2010-03-12 23:15:38 | 演劇
 いつも同じような設定で家族の絆を描く岡部尚子さんの新作。だんだんこのシリーズのリズムに身体も馴染んで来て、まるで寅さん映画を見てるような気分で、安心して見ていられるのが嬉しい。本作はこのシリーズの中でも最高の仕上がりになった。  今回はベランダを舞台にして話が展開する。結婚式を巡るお話である。まぁ、中身はいつもの会話劇だ。  結婚式の朝、新郎の実家に親戚がだんだん集まってくる。実は昨日の晩か . . . 本文を読む
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『ヌーヒン、バンコクに行く』

2010-03-12 22:45:24 | 映画
 タイの標準的娯楽映画とはこんな感じ、って思わせる。そんな出来のかわいいコメディー映画だ。正直言ってたいした映画ではない。でもこういう映画が、本国では国民的大ヒットを飛ばしても驚かない。このくらいのわかりやすい映画がきっと大衆の嗜好にぴったりと合う映画なのだろう。正直言うと『シチズン・ドック』とは比較にも何にもならないくらいにお粗末な映画なのだが、一般的な観客の支持を受けそうなわかりやすさと単純さ . . . 本文を読む
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山崎ナオコーラ『あたしはビー玉』

2010-03-12 22:17:08 | その他
 ナオコーラが書く高校生小説。こういうものが出るなんてなんだか意外。でも、興味津々で読んでみた。カバーイラストが可愛いすぎて、ちょっと恥ずかしかったが、気にしないでいつものように電車で読書。  内容的にはなんだか『リテイクシックスティーン』を思わせる。最近こういう高校生小説ばかり読んでる気がする。(まぁ実際そうなのだが)ビー玉が高校生の男の子に恋する、なんていうあり得ない設定はなんだか先の梨屋ア . . . 本文を読む
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『シチズン・ドッグ』

2010-03-11 22:34:45 | 映画
 久々のタイ映画である。まぁ、『チョコレート・ファイター』とかは見たが、タイ映画にやられた、と思うのは本当に久々のことなのだ。だいたいタイ映画は日本に入って来ない。劇場公開だけでなく、DVD発売もままならないからだ。  僕とタイ映画の出会いはかなり昔のこととなる。今からたぶん15年か、20年前くらいの話だ。今は亡き心斎橋のキリン・プラザで、『タイ映画祭』という企画があって、そこで10本くらいを1 . . . 本文を読む
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梨屋アリエ『シャボン玉同盟』

2010-03-09 22:25:51 | その他
 こういう小説を《YA文学》と呼ぶらしい。なんだか緩くて小説を読んだ気がしない。一応文字が書かれてあるから小説なのだろうが、話も単純なくせに、その上ペラペラで、とても文学作品とは言えないようなしろものだ。単刀直入に「つまらない」とまでは言わないが、わざわざ時間を使って読むほどのものではない。  ケイタイ小説が流行った時も僕には不可能と思い、読まなかった。ジャンル的にこんなものは僕のテリトリーでは . . . 本文を読む
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_ BIRTHDAYCAKE_ 『歯車のアルカ[改訂版]』 

2010-03-08 21:04:44 | 演劇
 とても楽しめる芝居だ。こういう芝居ってなかなかない。本来お芝居とはこういうもののはずなのに、なぜか、こんなふうに初心に戻って、純粋に芝居本来の力を発揮したような舞台がなくなって久しい。みんな芝居が好きで芝居をやってるはずなのに、なぜ芝居本来の力を信じないのだろうか。だんだん大人になり子供っぽい夢を舞台で体現しようとしなくなったのか? でも、それっておかしいことだ。  見ていて楽しいのは、演じて . . . 本文を読む
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魚住直子『園芸少年』

2010-03-08 20:27:32 | その他
 なんてことない小説なのだ。1時間ほどあれば読み切れるくらいの分量だし。でも、この小さな小説は僕をとても幸せにしてくれた。たった1日の電車の往復で読み終えてしまったのが惜しい。出来ることなら、この3人の少年たちともっともっと一緒に時間を過ごしたかった。残念だけど、仕方ないことだ。  高校に入って帰宅部になろうとしていたどこにでもいる普通の少年が、眉毛もなく(そり落としている)、ズボンから半分パン . . . 本文を読む
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『ニューヨーク、アイラブユー』

2010-03-04 21:32:05 | 映画
 『パリ、ジュテーム』に続くシリーズ第2弾。今回はニューヨークが舞台に選ばれた。前作と同じように10人の監督が描く都市を舞台にした短編連作。今回の特徴は、各エピソードが独立せずに1本の話として構成されてあること。この姉妹編は、あんなにもすばらしかった前作以上にチャーミングな作品に仕上がった。  それぞれのエピソードのさりげなさがいい。ほんの数分で終わるものもある。そっけないくらいだ。この街の様々 . . . 本文を読む
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『シャーロックホームズ』

2010-03-04 21:17:06 | 映画
 なんだ、この映画は。唖然とさせられる。だいたい予告編を見た時から、普通じゃない、とは思っていたのだが、ここまで無茶苦茶するとは。バカじゃないか。最初は笑いながら見ていたのだが、だんだん笑えなくなってきた。だってバカ過ぎるもん。  ムキムキマッチョのホームズ探偵です。汚いです。いつもヒゲ剃ってないし。派手すぎます。殴ったり、殴ったり。そして、アクション、アクション、アクション、です。インディージ . . . 本文を読む
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『アンティーク 西洋骨董洋菓子店』

2010-03-04 20:00:52 | 映画
 よしながふみのコミックを映画化した韓国映画。最近韓国では日本のマンガを原作にした映画が多い。これもその1本。日本でもTVドラマ化されている。ホモもので、コメディータッチで軽く流して見れる。  ただし映画の後半で、主人公であるこの店のオーナーが、子供の頃誘拐された話が前面に出てくると映画はなんだか重くなる。まぁ内容が内容なんでそれは当然のことだろうが。ここからが本題でもあるのだが、その重さがこの . . . 本文を読む
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