
夫を亡くした70代の女性の過ごす1年間を描く村田喜代子の長編小説。長編だけど、短い。たった1年間の話である。特別なことはないし241ページしかない。だけど、この静かな時間の中で美土里さんは彼女を支えてくれる3人とともに成長していく。(彼女たちとはたまたま夫に忘れ物を通して知り合った。)70代の女性に成長ってそぐわないかもしれないけど、そんな言葉がぴったり合う。
亡くした人を想いながら、ゆっくりお別れしていく。そしてこの先、ひとりで生きていく日々のスタートを切る。同じように夫を亡くした美子。昨年亡くした夫のために俳句集を作ろうとしている辰子。まだ若い教子も交えて。しっかり死を見つめて、今を生きる「未亡人倶楽部」のメンバーたち。
大切な人の不在を嘆くのではない。しっかり受け止めていくことでこの先の時間を大切にする。まだまだ人生は続くのだから。