
桜庭一樹が東京創元社だからと、ミステリ仕立ての作品にチャレンジした探偵もの。
90年代、名探偵四天王のひとりと呼ばれた男が20年振りに帰ってきた。鳴宮夕暮は50歳。30年前、大学の同級生である五狐焚風の助手としてふたりで難事件を解決していた。ふたりは再びあの頃の推理を検証するための旅に出る。50になり、しょぼくれた中年なったふたりは旅することであの日の自分たちと向き合うことになる。
20歳の2人が解決した最初の事件の事件現場を再び訪れて当事者と会う。解決した6つの事件。さらには探偵を辞めることになり最後の事件。ひとつひとつを追検証し、あの30年前の日々はなんだったのかを再確認することでこの先に向かう。50歳の先には何が待ち受けるのか。人生の後半戦をどう生きるのか、を描く。
50歳をひとつの区切りとして受け止めているのはいい。これからの時代、人生100年と考えたらまだ半分。ここから先は長い。主人公であるふたりは20代の10年探偵として注目されてキラキラした日々を過ごした。だけどその後、まるでつまらない人生を送った。あの時って何だったのか。
小説は後半がつまらないし、探偵ものとしては彼らの関わる事件もしょぼい。『新幹線大爆破』のパロディみたいな第3の事件なんてくだらない。
だけどお話の着地点は悪くない。ヒロインの夕暮のラストの決断はとてもいい。これまでの自信のない生き方から脱して、自ら助手ではなく探偵として自立した生き方に目覚めるのは爽快。50歳をスタートラインにした彼女の選択には拍手。