久しぶりの森絵都の新作か、と思ったが、調べたら僕が気づいていないだけで結構コンスタントに新刊が出ていた。まぁそれはともかくこの短編集だ。7つの短編が収まっている。最初の『雨の中で踊る』と真ん中の『獣の夜』、そして最後の『あした天気に』が少し長めになっている。その間のふたつずつはショートショートと普通の短編という構成になっている。かなり意図的な並べ方かもしれない。綺麗に左右対称。しかも表題作がセンターに配されている。
もちろん長めの短編3つが核になる。いずれも後悔がお話の核心にある。これまでの妻に対しての対応。(仕事にかまけたフリをして逃げてきたこと)好きだった彼と別れた後(別れる前)親友が彼と付き合って結婚してから8年経ったサプライズ誕生日パーティーの日のこと。8年振りに高校時代に好きだった女の子に再会したこと。
大きな変化ではないが、小さな変化を受け入れて、少し前進していく姿が描かれる。後悔したまま終わるのではなく、前を向いて進む。不思議体験を介して描かれるファンタジーは少し切ない傷みを伴って、心地よい。
さらには傑作長編である『ラン』の番外編の『スワン』という短編も収録されている。